●千枝美琴、親友の謎を探る
そんなつもりはなかったのだ。
ちょっと圧をかければ、悩みを洗いざらい話してくれて共有できる、と思ったのだ。
だけど、親友は頑なだった。明確に線を引き、私にもやすこにも話さないことを心に決めていた。
どうして心を開いてくれないのか、私は不満だった。
更に圧をかける私を彼女は拒絶し、その場を去った。
私は彼女の背負うものについて共有することなく、取り残された。
私とやすこは、本日の事件のもう一人の当事者に向き合った。
「見城君、何があったのか話してもらうわよ」
「はい・・・」
「三人があまりにも険悪なムードで話していたから、僕も口を挟めなかったんだ」
「・・・出来るだけ詳しく話して、見城君」
「僕達四人で高校に戻ろうと歩き始めた時に、路地にいた九条さんを見かけたんだ。いや、その時は後姿を見ただけなんだが、何となくそれが九条さんだと思ったので、声をかけたんだ」
「ふうん、それで?」
「振り返ったら、やっぱり九条さんだったんだけど、『ちょっと込み入った状況なのよ』って言ったんだ。九条さんは困ったような表情だったんだけど、奥にこの店の制服を着た男が迫っていたんだ。僕は、九条さんが暴力沙汰に巻き込まれていると判断して、その男に近づいたんだ。そうしたら、その男があっさり逃げたもんで、暗い路地で九条さんと二人きりになったんだ。その場面を千枝さんと安河内さんに見られてしまった、という訳なんだ」
「何、それじゃあ、あやは全然悪くないじゃない!どうして私達に話してくれないの・・・」
「それは彼女自身にしかわからない。例えば、その制服を着た男をかばっているとか、その路地へ行かなければならなかった理由を僕達、いや君達二人に言えなかったのかもしれない。・・・で、どうするの?
これ以上調べることは、九条さんが二人に知られたくなかったことー例えそれがみんなの仲を引き裂くことになったとしてもーを明るみにするかもしれない。それでも調べると言うのなら、僕も見城も協力するよ。僕達の前で、このまま三人の仲が壊れるのは精神上よくないからね」
私はやすこと顔を見合わせた後、頷いた。
「例えあやとの仲が悪くなっても、今のあやが抱えているものを理解したい」
「それじゃあ、店長の所に行こうか。まず九条さんを襲おうとした男を突き止めたい」
そこからの齋藤君の対応は鮮やかだった。
店内スタッフに事情を説明し、店長と話がしたい、ということを伝えた。
私達はすぐに店舗内にある応接室に通され、先程迄飲んでいたものとは大違いの高級なコーヒーを飲んで待っていた。数分後に店長が何人かのスタッフを連れて入室した。
そこで齋藤君が簡潔に説明した。
連れの女子生徒が、この店の制服を着た男に襲われそうになった。その場面に偶然出くわした見城が助けに向かうと制服の男は逃げて行った。女子生徒はショックを受けて、家に帰った。
「お願いしたいのは2点あります。一つは、現在シフトで働いているメンバーで行方不明の男がいないか、もう一つは現在制服を貸与しているメンバーの顔写真を見せて欲しい。襲った男の顔については見城が覚えているので」
齋藤君の要求はあっさりと通り、現在のシフトにおいて『富永悠一』が行方不明で、彼の顔写真を見城君が確認し、容疑者の特定が終了した。
店長が富永のケータイに連絡し、何十分か説得し、すぐに店舗に戻ることを約束させた。
「被害に遭われたお嬢様に至急謝罪に伺いたいのですが。許されるなら、私と富永の二人で・・・」
「店長さんはともかく、富永に関してはダメです。彼女が富永の顔を見て事件のことがフラッシュバックする可能性もありますし、富永がストーカー化する心配もあります」
「・・・確かにあなたのおっしゃられる通りです。配慮が足らず、申し訳ありません」
そうこうする内に、富永悠一が現れた。殴りかかろうとした見城君を齋藤君が静止した。
「富永さん、今更起きたことはどうこうは言いません。正直に答えて下さい。あなたは、相手が九条さんだと知って路地裏に呼び出したのですか?」
「・・・はい」
「それはどうした理由で?」
「彼女がバイオレットバタフライの知り合いであることはネットで知りました。私には妹が一人おりまして、現在入院しております。妹はバイオレットバタフライの大ファンでして、妹が生きている内に一目会わせてやりたい、と思ったのです。彼女と交渉したのですが、バイオレットバタフライの話には聞く耳を持ってもらえず、かっとなって・・・申し訳ありません」
「わかりました。・・・富永さん、後はお店の方と話し合ってください。じゃあ、皆行こうか」
齋藤君の呼びかけの元、私達は応接室を後にした。
「齋藤君、これからどうするの?」
「とりあえず、学校で話をしよう。・・・どうしても事情を聴かないといけない人があと二人いる。一人は進藤先生」
「もう一人は?」
「バイオレットバタフライの星野翔真」
「・・・それはそうだけど、バイバタの連絡先なんて、あや以外知らないんじゃないの?」
「そうでもないさ。月曜日にシークレットライブを開催出来たんだ。学校側で窓口になった先生がいて、先方の事務所の代表者の電話番号を知っている筈だろ?」
確かにそうだ。私ややすこと違い、流石は齋藤君、頭いい。見城君が空気なのが、若干悲しい。
「・・・でも、あやもちょっと冷たいわね。病気の妹さんの力になってあげてもいいのに。実際、星野翔真とやり取りしているんだから」
「千枝さん、それは富永悠一の話が真実であった場合のことだ。九条さんは富永と話している間に、彼の嘘に気付いたのかもしれない。彼の言葉を鵜吞みにするのは、真実から遠ざかることかもしれない」
「あやは私達には言わないけど、こういう事が他にもあったのかな?」
「それはわからないけど、一回対応したら、次から次に対応しなければならなくなる。そうなれば、彼女は本心は別にしてバイバタの要求に応えなければならなくなるんじゃないかな」
「あや・・・。で、見城君はどうしてあやに告白したの?」
私は思わず尋ねた。
「う~ん、それは彼女が強かったからかな。男性アイドルに告白されながらも自分を見失わずに、学校じゅうの女子生徒から酷い言われようでも飄々としている。その強さに尊敬したって感じかな。今にして思えば尊敬と好意を混同していたかもしれない。それでも彼女は真剣に対応してくれた。僕が彼女を助けられることがあるなら喜んで協力するよ。実は下種な考えだけど、もうワンチャン狙ってるしね」
「やっぱり、あやは私のライバルだね」
「ん、何か言った?千枝さん」
「何でもないの、何でも」
学校に着き教室に戻ると、私達は進藤先生に連絡を取った。
生徒指導を担当しているので、生徒全員にスマホのナンバーを教えていた。
それに私達の班の会社見学の担当教師である。
電話をすれば、私達の相談に乗る義務がある筈だ。
齋藤君が電話をしたら、すぐに行く、との返事があったそうだ。流石は学級委員。先生の信頼が篤い。
ほどなくして先生が現れた。
「悪いな、ちょっと遅れたか。何だ相談ってのは?おい、一人足りないぞ。おい、九条はどうした?」
「その九条さんのことで、先生に教えていただきたいことがあります」
「何だ。九条の個人情報に関わることは教えられないぞ」
「・・・金曜日、『あすなろ』の社長室で何があったのです?」
「ああ、その件か。それは九条の名誉に関わることだから話せないな。今更隠しても仕様がないが、俺は常に九条にとってプラスになる方を選ぶ。九条が御前等に言ってない事を俺が話す事は出来ない」
「九条さんはさっき男に襲われそうになりました。幸いにも未遂に終わりましたが、彼女はその件について僕達にも全く言いません。・・・先生、金曜日に同様のことがあったのではないですか?少なくとも先生はその危険性を察知していたのでしょ?」
「全く、御前等と来たら。九条に何も言わない、と約束できるか?」
私を含む四人全員が頷いた。
「御前等、最近のネット掲示板読んでいるか?その中で九条がどんな風に書かれているか見ているか?九条が一つのアイドルグループの二人から求愛され、その二人が芸能界を引退するのは事実だ。だが、それは九条のせいなのか?違うだろ?九条は男どもの欲望の被害者じゃないか。それなのに九条は沈黙したまま、世間の罵詈讒謗を受け止めているんだ。そこをまずわかってやれ。そして、世間の噂というものを盲目的に信じる馬鹿も多くいるんだ。『あすなろ』の社長の仁平茂樹もそういう男だったんだ」
「社長はあやに何をしようとしたの?」
「無理矢理愛人にしようとした。拳銃で脅してな。俺が社長室に入るタイミングが遅かったら、九条は死んでいたかもしれない」
「どうして、あやがそんな目に・・・。先生、そんな男、どうして警察に突き出さないの?」
「それを九条が望んでいないからだ。九条はただただ平穏な生活を望んでいる。もし、仁平茂樹を警察に突き出してみろ。被害者はあの九条あやめという事で、マスコミにないことないこと報道される。今やマスコミにとって九条あやめは『自由に叩いてもいい玩具』であり、『バイバタの2人を追いやった敵』だからな。だから表沙汰にすることは九条の為にもならない、と考えたんだ」
「先生は九条さんにどうあって欲しい、と思っているのですか?」
「これでも俺は教師なんでな。九条が在学中については、これ以上はアタックしないつもりだ。無論、悪い虫がつかない様に、変なのが来たら払いのけるがな。・・・で、御前等がこんな事を尋ねるというのは、九条の身に何かあったのか」
「今日、ファストフード店で襲われかけました」
「・・・そうか。頼む、御前等で九条を守ってくれ。あいつは自分の事よりも周囲の事を気にするいい奴なんだ。自己評価が低すぎて、周囲とギャップが起きているんだ。しょうもない芸能人のいたずらに巻き込まれた一番の被害者なのに、皆に迷惑をかけたからとシークレットライブを企画する。その為にもう一人余計に求愛されて、更に自分が傷付いている。ネットの評判がそのまま世間の評判とは思わないが、散々の言葉が投げかけられている。その為に仁平茂樹の様なよからぬ事を考える人間も出て来る。彼女は九条あやめは何の落ち度も無いんだ」
「じゃあ、あのライブは・・・」
「あれは九条の発案だ。学校を騒動に巻き込んだ罪滅ぼしだそうだ。そのせいで、あいつは更なる厄介事とを抱える事になったがな」
「先生はあやのこと、どう思っていたんですか?」
「教師と生徒の間柄と言うには情が入り過ぎている事は自覚している。少なくとも、俺が後ろ盾となれば、平穏な高校生活を提供できる、と思っていたんだがな。彼女が心を開くには、俺は大人過ぎるようだ。だから、君達が九条を守ってやってくれ。それが俺の願いだ」
進藤先生の言葉に感動した私は、やすこと共に宣言していた。
「先生、任せて下さい。あやは私達二人で守ります!」
「頼む。千枝、安河内」
「先生、僕達も九条さんを守ります」
見城君が言っていた。見城君、あなたのその決意が騎士道精神ならいいけど、それが恋愛感情を高めないか、私は心配している。既に1回告白しているし、彼女は否定するけど、あやは私よりずっと可愛いし・・・。
「先生、バイバタの関係者の連絡先を教えて下さい」
「そうだな。発端の星野翔真にも、事態の深刻さを理解させるのも悪くないな」
進藤先生は齋藤君の依頼に対し、マネージャーの連絡先を教えてくれた。
齋藤君に事務所並びに星野翔真との交渉をしている間、私はやすこと見城君と話をしていた。
「・・・すごいな、九条さんは。あの日、そんな目に遭っていたとは、全然気付かなかったよ」
「それは私も同じ。私、あの子の何見てたんだろ」
「星野翔真の件以来、あの子はトラブル続きで、それも自分に全く落ち度のないことでマスコミに玩具にされ、世間やネットで非難されている立場なのに、私達に接する態度は変わらなかった。私には到底出来ないわ」
そんな話をしていると、齋藤君が会話の中に入って来た。
「星野翔真さんと連絡が取れた。1時間後にここに来るそうだ」
私達四人は車寄せで、星野翔真の登場を待っていた。
星野翔真は一人で自動車を運転して、三崎東高校までやって来た。
下車するなり、彼は私達に言った。
「君達か、俺に会いたいというのは。あやに何かあったのか?」
私には彼は心底あやの心配をしている様に思われた。
「話は教室でしましょう」
齋藤君がそう言って、星野翔真を校舎内に迎え入れた。
私達は星野翔真と共に廊下を歩く。私は横目で星野翔真を見た。間違いなくイケメンで、背も高く痩せている。クラスの男子とは比べ物にならないー見城君、ゴメンー位に格好いい。こんな人に告白されたら、
私は普通でいられるかな?
教室に入ると、星野翔真は適当な席に座った。私達は彼を取り囲む様に座った。
「星野翔真さん、遠くまでわざわざ足を運んでいただき、ありがとうございます」
「他ならぬあやの事だからな。例えあやに嫌われても、あやの身を守る事は、俺の責任だからな」
星野翔真にそこまで言わせるなんて、あやって凄いんだな。
「まさか一人で来られるとは思いませんでした」
「それ、どういう意味?マネージャー帯同で来なかった理由なら、答えは簡単。これはプライベートな案件だからな。マネージャーはタッチさせない。・・・もし、吉水健吾を連れて来なかった事を非難しているのなら、それは悪かった。奴はもう高校受験に向けての勉強を開始しているしな。邪魔しちゃ悪いと思ってね。ここの偏差値は結構高くて、ケンゴの今の学力では厳しくてな。それに、君達は俺に話を聞きたかったんだろ。・・・この学校に一人で辿り着けるかという意味だったら、心配いらない。以前に来た事があるからな」
「ああ、シークレットライブで」
「それもあるが、その前に一回ここへ来ているんでね」
「そ、それはいつですか?バイバタが来る様な話は聞いてないけど・・・」
私は勇気を出して尋ねた。
「俺のせいで、この学校が大騒ぎになった時、俺は実在の『九条あやめ』に会いに来たんだ。タクシー運転手に変装してな。彼女を乗せて駅まで送らせていただいたよ。尤も俺の変装は一瞬で見破られたけどな。・・・それで、あやの身に何があったんだ?」
「今日の昼、襲われそうになりました。・・・金曜日にはお爺ちゃんみたいな年齢の人に愛人になれ、って銃で脅されたみたいです」
「そうか。それで事の発端であるこの俺に色々と尋ねてみたい訳か。・・・わかったよ。俺に答えられる事は答えるよ。だけど、あやの覚悟を君達は受け止められるのかい?」
私達は頷いた。
「OK。だが、君達は気を使われている事を自覚するべきだ。君達はまだ高校生だから、知らなくてもいい事がある、と思われているんだ。金曜日の件だが、君達に情報を与えた者が、君達に配慮している。考えてもみろ。芸能人二人に言い寄られても受け付けないあやが、銃で脅したくらいで爺さんの愛人になると思うか?もっと厳しい状況に陥っていたのではないか」
「じゃあ、今日の件は?」
私は思わず尋ねていた。
「襲われそうになった、というのは状況だから目撃者がいるんだな。だったら容疑者の話を聞けばいい。もっとも容疑者の話を鵜吞みにしてはいけない。彼等は自分に都合のいい様に話を改変するからな」
「犯人の富永は、不治の病の妹さんにバイバタと会わせる為に、九条さんに伝手を頼むつもりだったと言っております」
「君は本当にあやの事を理解しているのか?もし、そいつの話が本当なら、あやは間違いなく俺にコンタクトを取る筈だ。本人的には俺に借りは作りたくないだろうから、屈辱感でいっぱいになるだろうがな。
だから、そいつの話は嘘だ」
齋藤君に指摘する星野翔真の言葉は正しい。私は悔しかった。たかだか二週間電話でしかやり取りしていない男の方が、私ややすこよりあやを深く理解しているなんて、あってはならないことだ。
「さあ、質問をどうぞ、探偵さん」
「最初は質の悪いいたずらだったかもしれないけど、今のあなたはあやのことをどう思ってるの?」
「初めて会った時は、芯の強い女の子だなあ、と思った。それに話している時の表情も可愛いし、俺も話していて楽しい。俺はあやの事は好きだし、もう少し頻繁に会いたいとは思うが、少なくとも電話で会話出来る関係は維持したいと思う。少なくとも俺は大人で、あやは子供なんだから、俺は全力であやを守るし、あやに恋人が出来た時は祝福するつもりだ」
私は星野翔真の答えに感心していた。見城君、この人相手に勝てっこないよ。あやはそれでも山崎君のことが好きなのかなあ。
「九条さんは誰か好きな人がいる、とか言っていましたか?」
ちょっと見城君、何てこと聞くのよ。
「おい少年、そんな事聞いていいのか。隣の子が睨んでいるぞ。・・・まあいい。最初に会った時から、それは匂わせていたぞ。だが、まだ秘めた想いの様だから、まだチャンスはあるぞ、少年。ということは、俺のライバルということかな」
「ええ、そうですね」
見城君、そこで返事するんじゃない。
「吉水健吾の件はどういうことですか?」
「この学校でライブをする際に、メンバーにあやを説明する際に写真を見せたんだ。その写真を見て、奴が勝手に惚れたんだ。俺があやを壇上に上げた時、感情が高まってしまい、ああいう行動を取ってしまった訳だ。その辺について、奴は正直に話しているよ」
「これから先、どうするの?」
「幸いにも幾分かの蓄えはあるんで、表向きはのんびりする事になるかな」
「これから先、あやはどうなるの?」
「先の事はわからない。今あやを取り巻く世界はひどく険悪なものになっている。ネットでは『バイバタの二人を引退に追いやった女』と呼ばれ、顔写真も晒されている状況だ。男女問わず彼女を物理的に攻撃する者が出ても不思議じゃあない。それに口の悪いサイトでは、『バイバタ二人を骨抜きにしたビッチ』とか書かれている。それを真に受けたバカが近付いて来る可能性は捨てきれない。だけど、あやは自身の考えを決して曲げたりしないだろう。どんな目に遭っても、自分の信念を貫く覚悟をしている。・・・だけど、そんなあやにも弱点はある」
「弱点?」
きょとんとしている私とやすこの目を見ながら、星野翔真さんは言った。
「あやの友達の君達だよ。『君達に危害を加える』と言われたら、あやはどんな無茶な要求でも受け入れるだろう。例え自分の命だろうと貞操だろうと捨て去る覚悟をしている。・・・すまない。俺の考え無しの行動でここまで彼女の立場を追い込んでしまった。だから、俺は裏に回って彼女を助ける道を選んだんだ」
「私達は何をすればいいの?」
「強く生きて欲しい。世の中の理不尽に立ち向かう勇気を持って生きて欲しい」
「わかりました。・・・星野さん、僕達と協定を結びませんか?」
「ほう。どういう事だ」
「九条さんを助けたい、という思いは一致していると思います。だったら、情報を共有しあうのも悪い事ではないでしょう」
「わかった、情報を共有しよう」
こうして私達5人の同盟が成立した。勿論、あやには内緒である。
同盟成立後、星野さんはすぐに帰って行った。
『1.星野翔真
2.進藤君也
3.見城利幸
4.吉水健吾
5.仁平茂樹
6.富永悠一』
「齋藤君、何このリスト」
「ここのところで、九条さんに迫った男のリスト・・・吉水健吾までは単なる恋愛感情かもしれないけど、この週末の2件は明らかに九条さんに害を為そうとしている。気をつけないと・・・」
私はリストの中の一人の名前を眺めていた。見城君、あやははっきり断った筈よ。未練があるのはわかるけど、新しい恋に目を向けてもいいんじゃない。こうしてあなたを見ているオンナのコもいるのよ・・・。やすこはこの件に前のめりになっている齋藤君をどんな目で見ているのだろう。
「ねえ、千枝さん」
見城君が話しかけてきた。
「な、何?」
「九条さんの好きな人、誰なのかな?千枝さん、聞いてたりなんかしないの?」
「・・・教えない。知っているけど、教えない」
「えー、何でだよ。教えてくれたって、いいじゃないか」
不平を言う見城君に、私は笑顔で言った。
「見城君、友達よりも親友の方が大事なのよ」
翌朝、教室でやすこと共にあやを待っていると、定刻通りに九条あやめは登校して来た。
何かあった時こそ、普段通りに。九条あやめはそんな子だ。
「あや、その・・・」
中々言葉の出ない私達に、あやは声をひそめて言った。
「昨日の晩、久しぶりにショーマから電話があったんだ。二人に手を出したかったけど、彼氏が横で守っていたから諦めたって」
「・・・な、何言ってるのよ、あや」
「・・・そんなんじゃないわよ」
私はいつもよりちょっぴり強い力であやの頭を叩いた。




