着実な成長
ドサッ
「痛って」
「ふむ、まだまだだな」
「強度17、弾性13の現状最高のゴムを使って、持ち手にも工夫した新作パチンコだったんですけど」
俺は尻もちをつきながら愚痴を言う
「確かに、威力は上がったようだが、まだ、バッティングスマッシュとやらのほうがマシだな」
「……精度が足りないんです」
最初の模擬戦から一ヶ月が経っていた
あれから何度も模擬戦をしたが、まともな攻撃を与えられていない
性質設定の上限は少しずつ上がってきたし、
剣術や体力はまだまだだが、魔力操作に関してはかなり良くなってきた
それにより魔力のロスが減り、スキルの効果範囲も広がった。
少しづつ、確実に成長はしてる
それでも、全く届く気がしない
怪我で引退したと言っていたが、
さすがは元騎士だ
「さぁ、立て、もう一回だ」
「はい」
今日は模擬戦の日だ
また木剣を構え、立ち向かう
「ぐっ……」
「よし、終わりだ」
良かった……
今日は3回で終わりなようだ
《スキルレベルが上がりました》
「来た!」
「…上がったか?」
「はい!」
一ヶ月もかかったが、ようやくだ
「ユニークスキルは後だ、昼メシ食うぞ」
「お疲れ様、リクトくん」
「はい、今日はよろしくお願いします」
今日の勉強はエルモス神父が担当してくれるようだ
常識はある程度身についてきたので
最近は専門の講師が来てくれることもあるが、
エルモス神父は並の講師よりも博識らしく
今でも教えを受けている
「……なにか、良いことがあったのかい?」
「…わかりますか?スキルレベルが上がったんです」
「そうか、順調なようだね」
温和な笑顔でそう言ってくれた
エルモス神父は雑談もしてくれるから嬉しい
だが、今日に限っては……
「早速授業を始めたいところだが、少し話がある。だから、今日はカリムくんにも来てもらったんじゃ」
「あぁ」
「……なるほど……」
カリムさんが来ている。
別に嫌ではないのだが、どうしても緊張してしまう。
「話すことは、学校についてじゃ」
「はい」
「まず、入学する学校は、ここ、ノルディス王国の王立工匠学院、入学は2ヶ月後じゃ」
「……そこって名門でしたよね」
「うむ、じゃが、学力はそこまでいらん。お主は試験もある程度免除されるしの、問題ないじゃろう」
「なるほど」
「また、在学中の武術訓練じゃが、引き続きカリムくんが担当する」
「……マジですか」
「あぁ、連合の指名でもあるし、途中で師を変えるのはあまり良くないからな」
「……なるほど」
「では、そのつもりでな。カリムくんもありがとう」
「ありがとうございます」
「いや、気にしなくていい。自分で請け負ったことでもある」
その後、カリムさんは戻っていった
「では、授業を始めるぞ。昨日の続きじゃ……太聖連合の世界武術機関が定めるーー」
夜になり、自室に戻ってくる
ユニークスキルを試す時間だ
今回追加されたのは、
特性 「粘着」「磁力」
そして、新たな能力 「操作」 というもの
まずは特性から
(物質設定)
【性質】
色 白
硬度 0
強度 0
弾性 0
密度 0
耐久値 0
電気伝導率 0
熱伝導率 0
魔力伝導率 0
【特性】
「粘着」「磁力」
特性「粘着」を設定し、生成してみる
ただの粘土が出てきた。だが、自分のスキルだからだろうか、感覚でわかる
その感覚に従い、俺は、粘土に魔力を注ぎ、
引き金を引くように、発動させた
粘土が右手にへばりついた
引っ張っても剥がれそうにないほど強固だ。
だが、意思を向けると、あっさりと元に戻る
どうやら、この特性というのは、
自分の意思で発動・解除できる、その物質固有の能力のようなものらしい
発動中は魔力を消費し続け、
魔力の供給を断てば効果は消える
それはつまり、任意のタイミングにだけ発動させられるということ
……これは、かなり使えそうだ
次に、「操作」を試す
どうやら、生み出した物質をテレキネシスのように自在に操れるようだ。
だが、現状だとゆっくり動かすのが精一杯だ
これは鍛えていってからだな……
「……よし、今日の訓練だが……」
「待ってください、カリムさん」
「ん?」
「その前に、一度模擬戦をしませんか?」
「……レベル4を試したいのか?」
「はい」
「……まぁいいが」
そういってカリムさんは木剣を取りに行く
「待ってくださいカリムさん、そんな木剣じゃなくて、これでしましょう」
俺は2本の剣を取り出し、鞘から抜いた
キンッ
鉄の音が響く
「真剣勝負です」
「刃を潰した模造刀だな……」
俺は剣を一本手渡し、構えを取った
この一ヶ月の集大成で、一撃加えて見せる!
カリムさんが構えたと同時に
パチンコを打つ!
レベルアップで弾性20だ!
小さな白石がまとめて飛んで行く
カリムさんが躱す
が、2射目をもう撃ってる
一個当たった。「粘着」発動!
まだまだ!
カリムさんが距離を詰めてくる
剣で弾いているが、剣にも引っ付く
関節に当たった!
バリバリ
普通に剥がされた!
だが、そこの地面には、粘着トラップだ!
ガガガガガガ
地面ごと剥がされた!
攻撃が、くる
速い…!
だが、「磁力」発動
自分の剣につけていた物質「磁力」が、カリムさんの鉄剣を引き寄せ……いや、ビクともしない!
だが!俺の剣はカリムさんの剣に引き寄せられ、
防御が間に合う!
そのまま鍔迫り合いに…
「ぐはぁ!」
ふっ飛ばされた
だが、直撃は食らってない!
そのままパチンコを打つ!
特性は一つの物質に一つだけ
だが、「粘着」物質に、「磁力」物質を引っ付けてある。
すでにカリムさんに命中していたその物質に、
打ち出した玉が引き寄せられる……!
その中には、針の玉が……!
「磁力ホーミング!」
いくつもの針玉が、吸い寄せられるように命中し……
「はっ!」
その瞬間、カリムさんの身体から波動のような物が出る
ほとんどの物質が、耐久値がなくなったのか消滅し、それ以外の物質も吹き飛んでいった
「なん……だと……」
俺は崩れ落ちるように膝をつく
「何ですか今の」
「ただ魔力を放出しただけだ。魔法適性は要らんから、いつかはお前でもできるぞ」
「おぉ、マジですか……でも、まだまだ傷一つつけられないですね……」
「ふむ、まぁ、悪くはなかったぞ。まだ一ヶ月と考えると、かなりの成長だな」
「…そうですかね」
「だが、もっと剣術を使え剣術を。苦手とはいえ、だからこそ、使っていかなければならんのだ」
「はい……」
俺自身も少し思っていたことだ。反省しなければ……
「……この調子なら、入学までに実戦行けそうだな」
「え?」
「後2カ月、ギア上げてくぞ」
もう実戦? 実戦って何?
俺の疑問を置き去りに、カリムさんは早速次の訓練の準備を始めていた
次の話で入学まで




