表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
理不尽フットボール~ただボールを蹴っただけなのに  作者: 砂糖水色
1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/71

8話 次の展開

コート内外が何だかざわざわしている。

それはそうだ。

距離80m以上あったはずだ。

 

サッカーボールってあんな距離飛ぶのか。

しかもGKのゴールキックのように助走を取って蹴った訳ではない。

トラップしてワンステップ。それだけだ。

そこまでの距離を正確に飛ばせるサッカー選手は世界中に沢山いるのだろうか。

コートから少し離れたベンチから見ていた私は興奮にも似た感情を覚えた。

一緒に来てくれた友人藤井ちゃんが不思議そうに聞いてきた。

「アリなの?今の」

「アリだよ。何も問題はない…」

藤井ちゃんはあまりサッカーに詳しくはない。

「でも見た事ないよ。あんな遠くからゴール」

「…そうだね。ハーフラインからとかでも相当に珍しいと思う」

サッカー経験者の私も一度も見た事がない。

小学生の時は稀にあった。

GKのパントキックがそのまま入ってしまったと聞いた事がある。

「もしかして、と、とんでもない?」

私は何も言わずに首を縦に振った。

さっきまで14番にやられっぱなしだった、佐古君を全ての人が怪訝だったり、不思議な顔で見ている。

 

 …宇宙人を見るような顔。

 

とんでもない物を見てしまった気がする。

 

今のキックを佐古君がいつでも出来るとしたら、キーパーは常にゴールに張り付いている必要がある。

サッカーのロングボールをキャッチするのは見た目よりかなり難しい。

 私は本当に苦手だった。

ボールの小さな野球と違ってサッカーボールは風の影響を大きく受ける。

 落下地点が大きく変わることも珍しくない。

それにパスを受ける為に前に出るのが難しくなってしまう。

そうなると次に起こるのは…。


ゲームが再開されると、さっきまで軽快に繋がっていたプロンタールのパスワークがぎこちない気がする。

J1の強豪プロンタールが…佐古君のワンプレーに動揺している。

あっさりと藤沢がボールを奪い攻守が入れ替わる。

藤沢の左サイドの32番がドリブルでペナルティエリア付近までボールを進めた。

 左サイドバックの佐古君がオーバーラップをする。

 32番が佐古君をチラッと見るとディフェンダーが釣られて少しスペースを作った。

その隙間を通すようにFWの選手とのワンツー。

リターンからのダイレクトでのシュートは大柄なディフェンダーに寄せられ力無くキーパーの正面に飛んでしまった。

さっきまでプロンタールがやっていたようなサッカーを藤沢がやっている。

プロンタールのゴールキーパーがオーバースローで佐古君の上がってポッカリと空いたサイドへボールを送る。

佐古君が全力で戻るが、さすがプロンタール。

藤沢よりも明らかに攻守の切り替えが早い。

あっという間にシュートまで持っていった。

地を這うようなシュートに藤沢のGKジジマールが横っ飛びで弾くとセンターバックの選手がコートサイドに蹴り出した。

そのボールは戻ってきた佐古君の足元へ収まる。

 大きく息を切らしたまま佐古君がボールを蹴ろうとする。

プロンタールの14番、伊藤が叫びながらプレスに来る。

「やらせるかボケぇ!」

佐古君は振り上げた足を途中で止め、切り返す。


そして左足を振りぬいた。

「どーせお前の左足は飾りやろぉ」

 伊藤が叫ぶのが聞こえた。

プロンタールのキーパーはゴールの近くにいる。

佐古君が左足で蹴ったボールはペナルティエリア手前で落ちる。

そこへ右サイドハーフ新人のブラジル人ロニーニョがゴールに向かって斜めに走り込み、キーパーと1体1になる。

ロニーニョが右足を振り上げるとプロンタールのキーパーはXのような形に体をめいっぱい広げる。

 ロニーニョはそれを見て軽やかに足を止めボールをズラす。キーパーをかわしたところで左足でゴールにパスをした。

 

ネットが揺れた瞬間ピッチが鎮まり返った。

私も藤井ちゃんも松井ちゃんも気が付いたらベンチから立ち上がっていた。

プロンタールのベンチでは私の兄陽一が佐古君を親の仇のような顔で睨んでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ