13話 確信
蹴られたボールは滞空時間の長い少し遅めのボールだった。
ゴール真正面の落下地点にいるのは鹿島GKの早田。
富士夫さんの肩の上に肘を乗せ飛び上がる。
ボールに群がるように他の選手達が飛び上がる。
早田の頭がボールに触れる。
ヘディングしたボールはゴール左側に叩きつけられる。
GK田仁が飛びつく。
ゴールの中でニアを守っていた十田も反応する。
田仁がギリギリ指先で触れたボールを十田がはじき返す。
中途半端なクリア。
そこにいるのは鹿島のエース高木。
一瞬、全ての舞台が整ったように思えた。
高木が右足を振り上げる直前、高木の目の前に富士夫さんが立ちはだかる。
両手を後ろに回してシュートを体で防ごうとする。
高木が足を振る。
富士夫さんの膝に当たったボールが大きく跳ね上がる。
そのボールを回収したのは鶴田だった。
「佐古さん!」
鶴田が怒鳴る。
俺はエリアの外へ向かって走る。
鶴田が早田のプレスをダブルタッチでかわし十田さんにパスを出す。
十田さんは後ろ向きのまま俺にフワッとしたボールを上げた。
復帰後十田さんと練習してきた俺をフリーにする為の動き。
高さは1m。
ドンピシャだ。
俺はそのボールをダイレクトで振り抜く。
無人のゴールまで約80m。
復帰後の俺にしか出来ない唯一無二の一撃。
サイドパントキックで蹴ったボールは綺麗な回転をしながらゴールに向かっていく。
俺はゴールを確信して、ベンチに向かって走り出す。
ゴールライン付近でバウンドしたボールはゴールに吸い込まれた。
後半50分。
5-2
「うおぉぉぉ!」
叫びながらベンチまで走って、思い切り白田監督に飛びついた。
そのまま倒れ込んだ所に
選手達とスタッフ達が覆い被さる。
熱い。
とにかく熱い。
体も脳も溶けておかしくなりそうだ。
絶対今脳から出ちゃいけない何かが出てる。
歓喜に湧くスタジアム。
大喜びのサポーター。
うなだれる鹿島の選手達。
審判に促され俺達は自陣に戻る。
試合が再開されると同時に終了の長い笛が鳴り響いた。
スタジアムが歓喜に包まれる。
町田ゼインツJ1初優勝。




