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理不尽フットボール~ただボールを蹴っただけなのに  作者: 砂糖水色
7章

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68/71

12話 穴

ライン際でボールを転がすトラオンと対峙する。

今日俺は一度もこの選手を止められていない。

改めて見てみると恐ろしい体格だ。

異様に発達した胸板。

ユニフォームの袖がはち切れんばかりだ。

なのに恐ろしく速い。

 

逆転してからCBの選手が入ってきたのでウイングバックにポジションチェンジをした。

後ろにはまだCBもキーパーもいる。

 だけどそう何度も好き勝手させるわけにはいかない。


 トラオンが、ほんのわずかに重心を落とした。

ボールを縦に出す。

 そう思った瞬間、俺は一歩前に踏み出した。 スピードに乗る前に、体を当てる。

それしかない。

肩から、背中ごとぶつかる。  鈍い衝撃。

効いたはずだった。

だが、トラオンは止まらない。

いや、減速すらしない。

俺が体を入れてくるのを予想して少し大回りしたトラオン。

俺はボールを抑えに行くも、一瞬でトラオンにぶち抜かれる。

全力で追う。

 怪我前も復帰後もずっと走力と向き合ってきた。

フォームを直して、ランをスプリントに変えて。

プロとして恥ずかしくないレベルには、なったはずだ。

それでも、一瞬で置いていかれる。

トラオンがミスしない限り俺が止めるのは不可能にすら思えてくる。

トラオンはそのままペナルティエリアに侵入する。

戸田さんが後ろから体を当てたせいか、雨の影響か少しドリブルが大きくなる。

トラオンが無理な体勢で放ったシュートはゴールの外側のネットに突き刺さった。


町田の攻撃はあっさりと奪われ、今度は仲川さんが俺の目の前でドリブルを始める。

トラオンとは逆の左利き。

内側に入れてしまえばそのままシュートされてしまう。

絶対にやらせない。

お前なら抜ける。

仲川さんの表情がそう言ってる。

悔しいが、キャプテンマークを付けた俺が狙われている。

 トラオンとは違い仲川さんは細かくボールを動かす。

縦方向に小さくフェイントを入れる。

これはフェイント。そう分かっていても体が反応してしまう。

俺の重心が少し動いた瞬間

仲川さんが中に切り込んでくる。

俺もついていくが、速い。

スタートは同時だったはずなのに、肩一枚分、差が開く。

仲川さんが左足を振り上げる。

俺は体を投げ出し仲川さんのシュートを止めようとする。

仲川さんは足を止め、切り返す。今度は縦に進んでいく。

そこへ鶴田が飛び込み、なんとか2人がかりでコーナーキックに逃げる事に成功した。

 

後半アディショナルタイム。

これでラストプレーでもおかしくない時間だ。

鹿島はキーパーの早田までもがゴール前に上がってきた。

町田も全員がペナルティエリア内にいる。

 ここを守り切れれば優勝になる可能性が高い。

呼吸は荒い、足も重い。

それでも頭はクリアに感じられる。

 

鹿島のキッカーが合図をする。

ゴール前に一斉に選手がなだれ込んでくる。

 

 

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