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理不尽フットボール~ただボールを蹴っただけなのに  作者: 砂糖水色
7章

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67/71

11話 攻

「鶴田はなんでも出来るから自由を与えてやれ」

監督からそう言われてたけど、ここまでとは思っていなかった。

 

鶴田ヤバい。

多分天才ってやつだ。

陽一も天才だと思うけど陽一はもっとプレーが感情的で直線的だ。

鶴田はかなり俯瞰視点でゲームを見ている気がする。

もしかしたら、ファンタジスタってやつかもしれない。

高校生で雨の中あの技術レベル。

前半キックオフ直後の青い顔してた鶴田と同一人物には思えない。

「鶴の倍返し」なんて聞いたことない言葉が浮かんでくる。

身長180ちょいあるし、筋肉質だからCBって言われて違和感無かったけど、どう見てももっと前の方が適性がありそうだ。


 

鶴田のゴール…じゃなかった。富士夫さんのゴール後、富士夫さんはすぐにゴールからボールを取り出してコートに戻った。

あと1点。

アディショナルタイム入れて10分程度。

だけど、鹿島はなかなかゲームをスタートしない。

なるべく時間を使う。

なんか雰囲気的に行ける感じになってたけど相手は王者鹿島だ。

 油断すれば一瞬でやられる。

この1点を守り切れるから王者なんだ。

「ここ!集中して行きましょう!」

そう皆に声を掛ける。

 

審判に促され、鹿島が試合を再開する。当然のように時間を稼ぐため、後ろでパス回しを始める。

俺は最終ラインを上げ、猛烈なプレスをかける。

ここでトラオンにロングシュートを決められれば、優勝は不可能になる。

俺と戸田さんが、すぐトラオンを抑えられるようにポジションを取る。



鹿島のカウンターは速かった。

ハーフライン付近で高木が一瞬の隙で前を向き、仲川さんが外を追い越す。

――来る。


ボールを受け取った仲川さんに鶴田がパスコースを切りながら対面する。

俺も遅れて挟み込みに行く。

仲川さんのドリブルは鋭い。

だが、今日は雨だ。

タッチが少しだけ長くなった。


鶴田が体をぶつけ、俺が足を伸ばす。

二人がかりで、ギリギリボールを引っかけた。

転がるボール。

仲川さんが倒れ込み、笛を待つ。

――鳴らない。

観客がどよめく。

俺は、もう前を見ていた。

ボールが完全に止まる前に、左足を振り抜く。

縦に、一直線。

雨を切り裂くように、ボールが走る。

富士夫さんがボールを収めた所に、鹿島のディフェンダーが無理やり体をねじ込む。

富士夫さんのパスなのか弾かれたのか曖昧になったボールを、セブンが触る。

ワンタッチで戻す。

富士夫さんが、シャツを引っ張られながら、無理な体勢で足を振る。

早田が左手1本で弾く。

鈍い音。

早田の弾いたボールはポストに当たって跳ね返る。

そのボールを拾ったディフェンダーが苦し紛れのクリアをする。

落下地点は俺の目の前。


こぼれ球。

25m。

体勢も良くない。

でも、関係ない。

ディフェンスが飛び込んでくる。

俺は左足を踏み込む。

ズドン。

右足を振った。

ただ――

ゴールに叩き込むための一撃。

ボールは低く、速く。

雨粒を弾き飛ばしながら、一直線にゴールへ向かう。

ディフェンスが足を伸ばすも届かない。

GK早田が反応する。

間に合わない。

届かない。

ネットが揺れた。

一瞬、音が消える。

次の瞬間。

スタジアムが、爆発した。

後半40分

――4-2。

信じられない。

誰もがそう思っている。

 俺はゴール裏に走って右腕を突き上げる。

富士夫さん達が子供のように抱きついてくる。

「俺達は強い!マジで強い!」

無意識にそう叫んでいた。

もうこのまま終了でいいよ。

 そう思うけどやはりそうもいかない。審判に促され自陣に戻る。

ベンチが慌ただしく、交代を準備している。

残り数分。

守備に徹していた王者鹿島の猛攻が始まる。




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