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理不尽フットボール~ただボールを蹴っただけなのに  作者: 砂糖水色
7章

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64/71

8話 鶴田

垣谷陽一。


イライラする。

納得がいかない。

認めたくない。

俺はベルギーでもCLでもそれなりに結果を出した。

隣で観戦している打田だってそうだ。

打田のチームなんてCLでベスト4まで行った。

それでも、ここまでの影響力はない。

あの王者鹿島が引いて守っている。

ラインが低い。

サイドの選手もほとんど攻撃に参加しない。

3点差を守りきる。

鹿島のレジェンドもベテランも強い意志をもって戦っている。

 アイツがいなければ、優勝までのリードが3点あるなら引く事なんて絶対に無い。

安全圏を保ちつつ、時間を使うだろう。

鹿島はおそらく日本で一番逃げ切るのが上手いチームだ。

「あれで…あってると思う?」

昨年まで鹿島に在籍していた打田が俺に問いかける。

「まあ、中途半端な事をするよりは思い切って引く方が選手の、意志を統一出来るしな」

「でも確か川崎はやられたよね」

打田がニヤニヤと煽ってくる。

本当にイライラする試合だ。

妹の紀香は町田のゴール裏で観戦してるし、打田は女連れ。

腕を組んで観戦していると、トラオンにプレスを受けていた町田の23番鶴田がボールを跨ぎ後ろ足でボールを蹴った。

ラボーナと言われる技だ。

 ボールは低弾道で最終ラインから左サイドのセブンの前に出る。

チャンスになる。

そう誰もが思ったが、ボールはそのままラインを割った。

 まさかのラボーナロングパスに韓国代表セブンの反応が一瞬遅れたように見えた。

モニターに映し出されるリプレイに観客がザワつく。

「ハハッ!面白っ」

打田が喜んでいる。

優勝のかかった試合で、リスキーなプレイ。

正気か?と23番鶴田にもイラついてくる。


町田はどうやらCBとボランチを入れ替えながらプレーしているようだ。

さっきのラボーナ鶴田が今は中盤で攻撃に参加している。体躯に似合わない技術力。


3人に囲まれた鶴田が上半身のフェイントと細かいタッチで股抜きして抜け出すと、アタッキングサード中央にいる富士夫に縦パスを当てる。

富士夫が落とした所にベテランの亀田。

大きく足を振り上げると、鹿島のディフェンス2枚が突っ込んでくる。

足を止め真横に転がす。

どフリーで走り込んできたのは鶴田。

ペナルティエリア内右斜め。

 キーパーと一対一。

佐古顔負けの弾丸シュートを打ちそうな勢いだ。

鹿島のキーパー早田が1歩前に出て構える。

鶴田が蹴ったボールは緩やかな曲線を描いて早田の頭上を越え、ゴールに吸い込まれた。

爆発する観客。

20歳の俺から見ても年下にしか見えない鶴田の圧巻のプレー。


後半10分

2-2

美しいゴールだ。

ゲームは振り出しにもどった。

 それでも町田には更に2点が必要だった。



 

 



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