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理不尽フットボール~ただボールを蹴っただけなのに  作者: 砂糖水色
7章

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62/71

6話 絶望と希望

試合は完全に鹿島のペースで進んでいた。

時間を使う。

無理に前へ出ない。

だが前線には強力なトラオンが残っている。

それだけでも脅威だ。

正直1対1で止められる気はしない。

だってオリバビスケットにしか見えないもん。無理無理。

町田が前に来れば、空いたスペースを使うつもりだろう。

現在スコアは0―2。

しかも2点差を付けて勝たなければ優勝できないので、

実質0-4。

スコアだけ見れば、完全に鹿島の思惑通りだ。

それでも、俺たちは止まらなかった。

止まる訳にはいかない。

前半20分。

ショートパスが上手く繋がり、アタッキングサードでボールを受ける。

一瞬、視界が開いた。

「……今だ」

迷いはなかった。

右足を振り抜く。

爆音。

弾丸のようなミドルシュートが、ゴール右隅へ一直線に飛ぶ。

入った。

そう思った。

だが。

鹿島のGK、早田。

ゼロステッブで飛んだ。

信じられない初動。

伸ばした手が、わずかにボールを弾く。

「……マジかよ」

スタジアムがどよめく。

悲鳴のような反応。

俺自身が一番驚いていた。

普通なら届かない。

あの距離、あのスピード。

それでも、早田は止めた。


 

こぼれ球はコーナーへ。

俺は息を整えながら、コーナーへ向かう。

次だ。

まだ終わってない。

コーナーキック。

今日は颯馬さんがいないから俺がコーナーのキッカーだ。

手で合図を送る。

ファーサイド、キーパーのギリギリ届かない所に蹴る。

セブンが走り込んでくる。

完璧なタイミング。

ドン。

強烈なヘディング。

今度こそ——

だが。

また、早田。

信じられない反射神経で、地面すれすれのボールをダイビングキャッチ。

キャッチ!?

スタジアムが、ざわざわでは済まなくなる。

「嘘だろ……」

誰かが呟いた。

鹿島ベンチは騒がない。

当たり前のような顔で、淡々としている。

絶望、という言葉が

ゆっくりと胸に染み込んでくる。

今日は、何をやってもダメなのか。

そんな空気が、確実に漂い始めていた。



前半38分。

また、コーナー。

今度は左から。

また俺がキッカー。

速いボールをニアへ蹴り込む。

数人がニアで競る。

弾かれる。

そこに富士夫さん。

身体を投げ出すように前に出る。

その瞬間、後ろから鹿島のDFがボールをクリアしようと足を振る。

富士夫さんは迷わなかった。

倒れながら、頭を出した。

ダイビングヘッド。

体勢なんて、関係ない。

ゴン。

鈍い音。

ボールは低い弾道で、ゴール左隅へ転がっていく。

早田が反応する。

だが、今度は届かない。

ゴール。

1―2。

スタジアムが、爆発した。

「っしゃあああああ!!」

富士夫さんは、そのままピッチに倒れ込みながら拳を突き上げる。

肩を押さえながらも、笑っていた。

俺は駆け寄って、手を伸ばす。

「まだ終わってねぇぞ!」

富士夫さんが、荒い息のまま叫ぶ。

「勝つぞ!絶対にだ!」

その目は、死んでいなかった。

むしろ、燃えていた。


前半終了の笛。

数字だけ見れば、まだ絶望的だ。

それでも。

――生き返った。

俺はキャプテンマークを握りしめた。

まだ、時間はある。

まだ、諦める理由は一つもない。

後半。

必ず、ひっくり返す。

そう、心に誓いながら。

ピッチわー歩いて横切る時

「な?言ったろ。俺達は強いって。あれ?言ってなかった?」

亀田さんは相変わらず軽い雰囲気のままだ。

俺たちは希望を持ってロッカールームへ戻った。

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