2話 復活
良い感じだ。
ゴールまで60m。
最高のインパクト。
我ながらベストに近い弾道だ。
コレ止めんのは無理だろ。
そう思うと、まだ入っていないのにガッツポーズが出てしまう。
前がかりになっていた湘南のキーパーは、飛ぶ事すら出来なかった。
予想通りボールはゴールに吸い込まれる。
俺は両手を天に向け歓喜そのものを全身で浴びる。
全身の血が沸騰する。
すぐにベンリーや颯馬さん、十田さんが抱きついてくる。
ベンリーと十田さんに関しては試合中なのに涙をボロボロ流している。
3-0。
残りアディショナルタイムの3分。完全に相手の戦意が無くなったのを肌で感じる。
さらに追撃。
アタッキングサードの左サイド際でボールを収めると十田さんが中央からボールを受けに来た。
軽く渡して、コートを横切るように走ると目の前にワンツーが帰ってくる。
ゴールまで30mちょっと。
コースが見える。
ディフェンダーが飛び込んでくるのが視界に入るが、俺は迷わず右足を振る。
俺の蹴ったボールは低い弾道でサイドネットに突き刺さった。
完璧。イメージ通りの弾道。
サポーターの歓喜でスタジアムが揺れる。
感極まった俺はサポーターの前まで走っていき、拳を突き上げる。
本当に、本当にみんなが喜んでくれていた。
「フットボールクラッシャー佐古剛」
そう大きく書かれた横断幕の後ろに斉藤、村田先生、それに紀香がいる。
3人とも顔をぐしゃぐしゃにしていた。
本当に、多くの人たちの尽力とお膳立てによって俺の復帰戦は最高の結果になった。
俺は絶対にこの日を忘れないだろう。
その試合俺はMOMに選ばれ、ヒーローインタビューまでしてもらった。
何故かインタビュアーの女性がボロボロ泣いていて、俺は逆に冷静になって話をする事が出来た。
ロッカールームに戻ると、スタッフ、選手みんなで盛り上がった。
「復帰戦10分で2得点はやりすぎだろぉ!」
富士夫さんが背中をバン!と叩く。
颯馬さんに頭をくしゃくしゃにされていると
パン!パン!
監督が手を叩いた。
みんな一瞬で静かになる。
「剛。良くやったな。痛みはないか?」
「はい。問題ないっす。」
白田監督は深く頷き選手を見渡し続ける。
「よし。これでうちのチームのほぼ全員が揃ったことになる。」
次の試合ベンリーさんは累積で出場できないけどね。と思ったけど口には出さないでおく。
「あ、ベンリーがいたか。」
と監督がおどける。
「やっぱりベンリーだな」
「さすがベンリー。代表入っちゃうと空気とか読まなくなっちゃうんだな」
「それゆけベンリー」
みんなで弄り倒す。
ベンリーさんは顔を真っ赤にしてタオルを富士夫さんに投げつけた。
監督が続ける。
「と、まあ、冗談は置いといて。残り9節。今日勝ったから俺たちは6位だ。」
みんな黙って聞く。
「勝ち点差は10。上位は団子状態た。充分に逆転できる。残り全勝するつもりで戦うぞ。」
おうッ!
士気が上がる。
「今年優勝するのは俺たちだ!」
富士夫さんが宣言する。
ッシャア!
町田の選手もスタッフも最高のテンションで優勝へ向かって爆進する。




