5話 影響
颯馬
佐古の怪我は多方面で問題を引き起こした。
開放骨折。
文字だけ見るとただの骨折だが、復帰までに一年以上を必要とする大怪我だ。
1つは厳密に言うと佐古は、しっかりと着用していたため関係なかったが、すね当ての問題。
最近ホントにすねあて付けてる?って位ソックスを下げてる選手がいる。
子供用の小さいものを付けてはいるが、全然守れてない。今後このような大怪我の原因になる可能性がある。
2つ目は今回のレフェリングについてだ。
主審の不自然な判断が多く、カードの出し方に主審の感情が見えてしまっていた。
本人はかなり批判されてしまっている。
もう少し試合をコントロール出来ていれば違ったのではないか?そう思ってしまうのは仕方ないかもしれない。
そして3つ目。
これが死活問題。
町田が勝てなくなってしまったのである。
主力メンバーに怪我人や累積からの出場停止が出た事も関係はあると思うけど、佐古の存在の大きさが結果として現れてしまった。
後半残り10分間での失点が増えてしまったのだ。
先制点は取れるが追いつかれる事が増えてしまった。
サッカーというのは不思議なもので、1度チームのバランスが崩れると立て直すのは、白田監督の手腕をもってしても中々に難しかった。
結果として7月の時点で3位に転落してしまった。
代表には佐古の代わりにベンリーが招集された。
合宿では高い身体能力といじられキャラが際立っていた。
当然俺は主力。
そのままアジアカップ予選に俺、富士夫、ベンリーが招集される事になった。
8月に入り勝ちきれない試合が続いてる中、俺に待ちに待ったオファーが届いた。
プレミアリーグの中堅チーム。
条件も良い。
ただ、タイミングだけが悪かった。
そのオファーは、今回は断ることにした。
付き合っているアナウンサーが妊娠した。
それで、結婚することになった。
彼女は日本で子どもを産みたいと言った。
それを聞いたとき、不思議と迷いはなかった。
家族より大切なことなんて、きっと無い。
サッカーは俺の人生そのものだけど、
人生の全部じゃない。
今回は見送った。
また縁があれば、そのときに考えればいい。
結婚式は十二月にやる予定だ。
佐古も、もちろん呼ぶつもりでいる。
あいつはきっと、気まずそうにしながらも来るだろう。
……そうそう。
大事なことを一つ、言い忘れていた。
佐古のあのフリーキックは、
Jリーグの月間最優秀ゴールに選ばれた。
正直、驚きはなかった。
あれを見た人間なら、誰もがそう思うはずだ。
おそらく、年間ベストにも選ばれるだろう。
怪我をして、ピッチから消えたあとも、あいつの足はまだ語り続けている。
俺はそう信じている。




