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理不尽フットボール~ただボールを蹴っただけなのに  作者: 砂糖水色
2章

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6話 斉藤

クソ真面目な七三英語教師、村田が早めに授業を切り上げ、こんなことを言い出した。

「来週末にこのクラスの佐古のチームの試合がこの藤沢で行われる。」

佐古がJ2の試合に時々出ていることはみんな知っているが、あまり興味は無いようだ。

「天竜杯準決勝。今J1で2位のプロンタールが相手だ。」

 男子がさして興味無さそうに聞く

「佐古って凄いの?」

村田はもったいぶるように数秒間を開けてから答える。

「大袈裟に言えば、今世界中から注目されている選手だ。過去に例のないプレーヤーなのは間違いない」

 クラスがザワザワする。

いっつも俺とダラダラスマホゲームやってるやつがそんな事になってるとは皆思わなかったようだ。

実は俺、佐古の前の席の斎藤は、佐古のハットトリックからかなりアイツのニュースや試合をチェックしている。

 佐古には言ってないが実は兄貴と一緒にホームゲームも見に行った。

残念ながら佐古は出場しなかったけど。

俺は中学まではサッカーをやっていた。

今でも自宅でよく海外サッカーを観戦している。それなりにサッカーを見る目はあると自負している。

アイツは凄い。間違いなく。

 

 後半30分を過ぎたところで、佐古がベンチコートを脱ぎ、コートサイドに立っただけでスタジアムがザワついた。

大型モニターに佐古が映し出される。

普段のモサっとした、よく机に突っ伏して寝ている佐古と同一人物には思えない

「やってやるぜ!」

表情だけで、そう言っているように思える。

 

 

全然ユニフォームが似合ってない英語教師村田とその奥様、それに遅れてきた垣谷紀香(こっちスタンドでいいのか?)4人のテンションはMaxだ。

このバチバチの試合展開の中アイツはどんな気分で出場するのだろう?


コートに、入ると早速佐古の足元にパスが出る、プロンタールの10番と14番がプレスに行く。

佐古は無難にパスを回す。

14番はボールが何処にあろうとずっと一定の距離で佐古を追いかける。

ハーフラインより手前、左サイドラインギリギリでボールを受けると、佐古は左足を踏み込んだ。

するとスタジアムは静まり返る。

14番が対角へのロングパスのコースを切る。

佐古はサイドライン際を真っ直ぐ前に蹴り出した。

ディフェンスラインから抜け出したロニーニョが落下地点に走り込む。

GKはゴールに戻っていたので間に合わない。

ロニーニョがボールを収め、キーパーと1体1になる瞬間

「ピー!」

主審が笛を吹いた。

線審も旗を上げている。

…オフサイドだ。

観客の歓声が地鳴りのように響く。


 

その後、誰の目にも明らかにゲームの内容は変わった。

プロンタールが自陣に引きこもったのだ。

佐古の直接ゴールを警戒してプロンタールのGKはゴール前から少ししか離れられない。ディフェンスの最終ラインとの間に広大なスペースが出来てしまうため、ディフェンスラインが低く設定される。

すると選手間の距離が広くなってプレスが機能しなくなってしまうからだ。

 

「佐古がコートに入っただけで別の試合のような展開だな」

 村田が呟く。


俺は佐古の影響力に、誇らしいような、悔しいようなごちゃ混ぜな気持ちでゲームを観戦していた。








 

 

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