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理不尽フットボール~ただボールを蹴っただけなのに  作者: 砂糖水色
2章

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3話 面談

シャワーで汗を流したあと、制服に着替え監督室をノックする。

「どうぞ」

そう言われ、部屋に入る。

貧乏クラブのクラブハウスの一室。

監督室と言えど高級感はなく手狭に思えた。

6畳程度の部屋にパソコンデスクとモニターが3個。

ソファがテーブルを挟んで向かい合わせに置いてある。

ドイツの名将マガポ監督と通訳の若い男性が次の対戦相手の試合を見ていた。

通訳の男性がソファに座るよう促してくれる。

俺がソファに座ると監督は動画を止め向かい合わせのソファに座った。


 何も言わずに俺の顔を凝視する。

…何も言わない。

通訳の男性はスマホを弄っている。マガポ監督はずっと俺の顔を見つめている。

怒っているような、そうでも無いような不思議な表情だ。

メガネの奥の黒目とバッチリ目が合ったけど何も喋らない。

鬼軍曹、独裁者などと悪い噂の耐えない監督だけど、結果も残している。

有名な選手を何人も育て、そして幾多の選手やチームと揉めてきた監督だ。

初めてまともに向かい合ったけど、イメージよりは優しそうな小太りの中年男性に見える。

目を逸らしていいものかな?そう思い数分が経過した気がする。

 恋人同士だってこんな長時間めを合わさないだろう。

 …出来たことないからわかんないけど。

「„WasistdeinZiel,Tsuyoshi?“」

 うん。全く分からん。

そう思った瞬間。直ぐに通訳してくれた。

「ツヨシ、君の目標は何だ?」

「とりあえず今の目標はスタメンで戦える実力を付けることです」

「なるほど、では、もっと大きな目標はなんだ?夢ではなく目標だ。」

 通訳の若い男性がマガポ監督との、間を繋いでくれる。

「んーワールドカップに出たいとか日本代表とかって事ですかね?…そういう最終目標みたいなのは…あまり考えた事ないです」

「そうか話題を変えよう。目標にしている選手はいるか?」

「参考にしてる選手は沢山います、1番はGKエデルソンですね。」

動画をみて蹴り方を研究させてもらった選手だ。

「なるほど。好きなチームは?日本でもヨーロッパでも」

なんの面接なんだろう?これ。

全然意図がわからない。

さっきの無言タイムは一体?

「やっぱりシティが好きですね、バルスやドルトントも好きですが」

「君はこのクラブに拘りはあるのかい?」

 会話の意図がよく分からないまま、正直に返答する。

「??僕を拾ってくれたクラブなので感謝は感じています」

 

監督はたっぷりと間を開けて思わせぶりな事を言う。

「私の友人の監督が君と仕事をしたいと言っている。」

 一瞬通訳が訳すのをためらった。

「興味はあるか?」

「…移籍って事ですか?」

「理解し難いことに、君はまだプロの契約では無いのだろう?」

「…はい。ちなみにどこのチームですか?」

「レッド・マドリードだ。」

 驚いた。鼓動が跳ねる。

赤と白のユニフォーム。cl常連のスペインの強豪チームだ――。

異国の地でボールを蹴る自分を上手くイメージ出来ない。

 

「…ジメオネ監督が?」

「そうだ。ジメオネは君を高く評価している。レンタルには出さず手元に置きたいと言っている。」

…俺がスペインで?

 あまり現実味がない。 

「システムとしても、戦術的にもこのチームよりは君のプレースタイルは合うだろう。」

 

そうなのだ。マガポ監督は可変3バックシステムを採用している。

 俺のサイドバックというポジション自体が存在しない。

今はウイングバックかCB両方を練習している現状だ。

得意のポジションが存在しない以上、当然出場機会は減る。


少し間を開けて監督は言った。

  

「私も君の事は高く評価している。だかこのチームは、まだプロ契約にするつもりはないそうだ。」

…なんとなくそんな気はしていた。スタッフは親切だし親身になってくれるが、チームとしてはあまり期待されている気はしていなかった。

俺は今高3だ。

10月末の今進路が決まっていないだけでも焦りを感じている。

 出場時間やポジションにしてはゴールやアシストはしていると思うが、短い時間の出場で失点に関わってしまったこともある。

4月になればプロ契約になるだろうと甘く考えていた。

 だからといって…スペイン。

正直まだJ2で90分戦えるレベルには達していない俺が海外というのは…どうなんだろう?


「君はまだ実力が足りていないのに移籍なんて。そう考えているだろう?」


「…はい。その通りです。」


「アトレチコは育成が上手なクラブでもある。年始にとりあえず練習参加してみてはどうだ?」


「…考えてみます。」


「勘違いしないで欲しい。私としても君はチームに必要な戦力として考えている。今出場機会が少ないのは学生である事、契約形態による所が大きい。」

 

…そうなのか?意外だった。

まあ、俺は普通の高校に通っているので、そもそもアウェーに試合に帯同出来ないことすらあるんだけど。

 

「私は君が100パーセントでトレーニングをしている事も、フィジカルの改善に取り組んでいることも、現時点での実力もわかっている。」


またマガポは俺の目を覗き込んで言った。

「私が思うに」

 

 マガポが少し間を開ける。


「君はもっと高いレベルでのプレーを経験するべきだ。」

 

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