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理不尽フットボール~ただボールを蹴っただけなのに  作者: 砂糖水色
1章

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11話 別れ

「おい佐古テメェやってくれたな!」

遠藤キャプテンからの電話で開口一番叱られた。

しかも何も身に覚えがない。

「お疲れ様です。…俺、何かしました?」

「僕はただ蹴っただけです。だと。テメェ」

先日のトレーニングマッチで記者にそんな事を言った気がする。

「ま…まずかったですか?」

「あたりめぇだろ!テメェ!

…なんてな。冗談だよ。佐古。お前の「ただ蹴っただけ」がサッカーマガジンに乗ってるぜ」

「え?ホントですか。読んでみます!めっちゃ嬉しいッス」

 

 遠藤さんは少し間を開けてから言った。

「…俺の移籍発表より佐古の方が取り上げられるとはなぁ」

「いやぁそんなぁ…って、え?遠藤さん移籍するんですか?」

「お前聞いてないのか?ドイツのフランクフルトだ。」

「すごい!強豪じゃないですか?いつ行くんですか?」

「明日。悪いな開幕直前になっちまって。」

 

気づけばもう1月が終わる。

俺はオフシーズンに契約形態が変わることはなく2種登録選手のままだ。

トレーニングマッチやカップ戦にもほとんど出場機会を得られず厳しい新シーズンを迎えることになりそうだ。

プロンタールのトレーニングマッチで交代を告げられたあと、チームスタッフが俺の足の状態をチェックすると、両膝に炎症が起きていた。

俺としては、いつも通りなのだが、良い状態では無いらしい。

「蹴るなって言っただろ。お前の体はまだ未完成だ。」

1月のクソ寒い日に両膝まで氷水を張ったバケツに足を突っ込んだ俺のところに来て監督が目を細めた。

「…それになるべく情報を出したくないしな」

「すいません」

「とりあえずフィジカルスタッフとよく話し合って良い状態の体を作れ。技術なんかはその後でいい。」

監督の後ろでムッキムキのフィジカルコーチが頷いている。

どうやら俺の体はプロで戦える状態ではないらしい。

膝の状態も筋肉的にもまだまだ良くないそうだ。

中学生の時から結構筋トレ頑張ったんだけどなぁ、と思うけど仕方ない。

結局オフシーズンのカップ戦やトレーニングマッチには出場しなかった。

チームのトレーニングには参加して、ほかの時間は走り方の改善等個人でのトレーニングだ。

さすがにプロチームのスタッフの知識量、言語化能力は半端じゃなくて、自分的には大きな成長を感じている。

ようやく手応えを感じ始めた矢先だった。

そこへ遠藤キャプテンの移籍。

正直な話、チームメイトは全員が俺に好意的な訳じゃない。

 自宅が近いこともあり、いつも気遣ってくれ、チームの輪に溶け込むよう尽力してくれた人が居なくなってしまう。

デビュー戦でアシストをしてくれた仲川さんなんて、敵意を持っているように感じる事がある。

デビュー戦の前は遠藤さんと一緒に俺のキックを面白がって練習に付き合ってくれたのだが…

遠藤さんに言わせれば、そもそもプロとはそういうものらしい。

一人一人が1匹狼じゃないと上は目指せない。

プレースタイルもサッカーに対する考え方も人それぞれ。特に俺のプレースタイルは賛否あるだろう。

 

翌日俺は遠藤さんを見送りにスタッフと一緒に空港まで行った。

遠藤さんは綺麗な奥様と幼稚園位の娘と一緒に、俺を待っていてくれた。

感謝を伝えると

「佐古。俺は向こうで活躍して代表に入る。今度は代表でアシストしてやるよ。」

そう言いながら力強く握手してくれた。

まるで俺が代表に入れると信じて疑わない言い方だった。

 

いつかは俺もー

遠藤さんが旅立つのを見て、俺は決意を固くする。

 

帰宅後垣谷さんから電話が鳴った。人生で初めての家族以外の女の子からの電話だ。

「佐古君!Yahooニュースみた?」

「いや…何のニュース?」

「お兄ちゃんが海外移籍断った話」

「え?全然知らない。断ったの?」

「お兄ちゃんまだ日本でやり残した事があるって」

そりゃまだあるだろう。

そもそもまだ高校生だし。

とはいえ高校生なのにJ1で8ゴール5アシスト。とんでもない結果だ。

シーズン終盤の怪我が無ければ得点も2桁いけただろう。

本当に凄い選手だ。

「そうなんだ。お兄さんは凄いな。…俺も頑張らないと」

「佐古君なんだって」

「?何が?」

「やり残し。日本での。さっきお兄ちゃんに聞いたら佐古君の事だってなんか不機嫌に言ってた。」

電話を切った後、ベットにゴロンと転がって天井を眺める。

天才垣谷陽一が俺を…?

認められているのだろうか?

 

…俺はただボールを蹴っただけなのに。

 









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