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理不尽フットボール~ただボールを蹴っただけなのに  作者: 砂糖水色
1章

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10/71

10話 理不尽

後半、なんと佐古はグローブをはめGKになっていた。

開始直後から8人全員でペナルティエリアに篭もり、1点を守り切ろうとする。

俺がシュートを外してゴールキックになってもロングキックを蹴るでもなく、ずっと俺たちのターンが続いた。

開始5分でこぼれ球を俺が押し込んで同点、そのあとコーナーキックでニアに飛び込んで逆転に成功。

佐古はキーパーとしては状況判断が悪く、大したレベルじゃない。

他の選手も、たいしたことない。

楽勝だと思った。

 そのままウチのチームの攻勢が続いたけど追加点は取れなかった。

 

残り数分での佐古のゴールキックのシーンだ。

佐古チームの一際小さな選手9番がふらふらと歩いてウチのペナルティエリア付近まで歩いてきた。

ウチのチーズはGK紀香までハーフライン付近まで前に来ている。

例えゴールキックが届いたとしてもオフサイドだ。

ウチのチームの監督からもなんの指示もなかった。

ズドン!

佐古がとんでもないロングキックを蹴る。


ボールはなんとウチのペナルティエリアまで飛び、9番がなんとかトラップして無人のゴールに流し込む。

当然線審が旗を上げる。

 そりゃそうだ。

オフサイドに決まってる。

観客や仲間から失笑が漏れる。

だが、主審が線審の所へ行って何か話すとゴールが宣告された。

 俺達は審判に

「どうみてもオフサイドだろ!」

と言いよった。

佐古よりも小さい中年男性の主審は首を横に振った。

「ゴールキックはオフサイドにならない。ちゃんとゴールだよ」

ウチの監督も驚いている。

 知らなかったらしい。

よく審判もやってる癖に。

これだから弱小なんだよ!

監督への怒りを感じつつ、残りの時間での追加点を目指した。

この大会は延長戦はなくPK3本勝負。

紀香もPKは得意だけど俺は嫌な予感を感じていた。


 俺の予感は当たった。

PK戦は紀香が1本止めた。

だけど佐古は2本止めた。

最後のキッカーの俺のシュートはゴールポストに当たりウチのチームは敗退した。

理不尽な納得の行かない負け方だった。

だけど、俺は佐古の事を初めて見るスペシャルな個の力を持った選手だと思った。

少し憧れにも似た感情を抱いた。

 

俺はその試合後アイツに追いつこうと必死に練習した。

そのかいもあって6年生の最初フロンターレのセレクション参加人数300人の中で唯一の合格者になる事が出来た。


佐古は県内ではそこそこ有名な街クラブに移籍し、完全にGKに転向したと聞いた。 


俺は小6の大会で全国ベスト4まで行き、中学ではフロンターレのジュニアユースにすすんだ。

佐古はそのまま街クラブのジュニアユースに入ったらしい。


中2になって佐古のいるチームとの練習試合があった。

久々の対決に心躍らせ会場へ向かうとそこに佐古は居なかった。

佐古のチームメイトに聞くと、

「あぁ、佐古?怪我ばっかりで1年の冬には辞めちまったよ。監督のお気に入りだったのにな。サッカーもうやってないらしいよ」

あんなにフィジカルに恵まれた選手があっさりと辞めてしまったと聞き、俺は落胆した。


それを聞いて俺は佐古の事を強く意識していた事を実感した。

小5のあの試合は俺たちにとって大きな転機になっていたのだ。

双子の妹紀香はあの試合を機にサッカーへの情熱を失ったように見えた。

逆に俺はサッカーへの情熱が高まった。

いつか佐古と対戦して今度は圧倒的な実力で倒す。

それを大きな目標にしていたらしい。

だけど、あいつはあっさりとサッカーを辞めてしまった。

そう思っていた。



紀香とたまたま見に行った磐田の試合で、突然佐古が出てきた時自分の鼓動が不穏に激しくなるのを感じた。

しかもアイツはとんでもない武器を引っさげて現れた。

 






 

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