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第22話 姉妹の願いとクリスマス 2

いつも読んでくださり、ありがとうございます。

お楽しみ頂けていたら嬉しいです。



「アレックスさんの誕生日か……」

「うーん、予想外の相談だったね」


 買い込んだ食料を仕分けしつつ、ジュリとエレナが話し合うのは今日出会った二人の少女、アンバーとメイジーの相談事だ。

 壁に貼られたポスターを読んだ二人はジュリとエレナに悩みを相談しようと考えたらしい。

 叔父であるアレックスになにかしたい、なにか贈りたいのだと主張する姿に断ることも出来ず、依頼を引き受けるとエレナが言ってしまったのだ。


「でも、誕生日ってお貴族さまだけじゃないの?」

「え、誕生日も行わないのか!? 子どもにとって誕生日とクリスマスは特別な日だろう?」


 エレナの問いかけにジュリは立ち上がり、目を丸くする。

 その勢いにエレナの方が戸惑ってしまうほどだ。

 余程、ジュリにとって誕生日もクリスマスも大事なものなのだろう。

 

「うーん、普通のおうちじゃお祝いはしないかな。教会で節目の年にお祝いしたりはするけど……」

「そ、そういうものなのか……」

「あの子達も誕生日の過ごし方を知らないから相談してきたんだよ」


 ジュリにとっては毎年の楽しみであったクリスマスも誕生日も、リディルの街では一般的ではないらしい。

 どこかで知った誕生日という概念、アンバーとメイジーはいつも側にいてくれるアレックスになにかしたいと考えたのだろう。

 一般的ではない誕生日を毎年魔女は祝ってくれていた。魔女は多くの楽しい時間をジュリに与えてくれていたのだ。

 しみじみとしたありがたさと同時に魔女がいないことにふと寂しさを感じるジュリ、そんな彼女に興味津々の様子でエレナが問うてくる。


「でね、ジュリ。誕生日ってなにをするの?」

「え、あ、そうか。一般的ではないのだから当然か。そうだな、クリスマスに似ているな」


 世話になっているアレックス、そして可愛い姉妹のためにと協力を申し出たエレナだが、実は彼女も誕生日というものをよくわかっていないのだ。

 ジュリは魔女と過ごした誕生日を思い起こす。

 

「美味しいものを食べて、ケーキのろうそくを吹き消して、あとは贈り物を貰うんだ! 『お誕生日おめでとう!』そう言って、喜びを分かち合うのが誕生日というものなんだ」

「ええっ!! 美味しいものを食べるだけじゃなくってケーキもあるの!? そのうえ、贈り物まで貰えちゃうなんて、クリスマスも誕生日も凄い日なのね……」


 誇らしげに誕生日を説明するジュリに、エレナは目を輝かせ、頬を染める。

 一つだけでも嬉しいことなのに、食事にケーキに贈り物と三つも良いことがあるとは、なんて素晴らしい日なのだとエレナは驚く。

 同時に魔女という存在がどれだけジュリを想っていたのかも、話す彼女の表情からエレナにも伝わってくる。

 貴族が誕生日を祝うのはその影響力を高める目的もあるだろう。

 しかし、魔女とジュリの二人の生活で誕生日を祝うのはジュリに喜んでほしかったからに違いない。


「……そっか。誕生日って楽しい時間なんだね」

「まぁ、そうだな」

「よぉっし!! アンバーとメイジーのためにもアレックスさんの欲しいものを探るぞー!!」

「……私達は探偵ではないのだが」


 張り切るエレナの勢いに今度はジュリが押される番だ。

 小さく呟いたジュリだが、アンバーとメイジ―のために意気込むエレナの様子にそれ以上は何も言わない。

 食料庫にしまうため、再び机の上の食材の整理を始めるジュリであった。


*****


 

「え、アレックスの欲しい物? さぁ、わからないわね。一体どうしたの?」


 まずは身近な者に聞くのが一番と、ジュリとエレナは再びロルマリタへと足を運んだ。まだ、午前中であったため、ガウン姿で眠そうなマリーだが、二人の質問に関心を持ったようだ。

 

「あぁ、実はだな……」

「相談の内容は話しちゃいけないことになってるでしょ! 守秘義務だもの!」


 そう、ジュリとエレナのお悩み相談所に訪れる人々の悩みは軽々しく口にするべきではない。守秘義務というものをジョーからジュリもエレナも習ったのだ。

 しかし、アレックス、そしてアンバーとメイジーと共に過ごす時間の長いマリーであれば、協力してもらえる可能性は高い。

 

「だが、この場合は彼女にも協力して貰った方が話が早いだろう」

「でも、アンバーとメイジーが良いって言わなきゃダメでしょ?」


 真剣な表情で諭すエレナだが、言われたジュリの眉間には深い皺が寄る。


「……エレナ、依頼者の名を出すのも守秘義務に反するぞ?」 

「…………あ。マ、マリーさん、今のは忘れて! ね?」

「ふ、ふふふ。おちびちゃんはこれだから面白いのよね」


 焦って必死に自身に頼むエレナの様子に、マリーはつい吹き出してしまう。

 何事にも一生懸命になるエレナなのだが、少々おっちょこちょいなのだ。

 落ち込んだエレナの肩をぽんぽんとジュリが叩く。

 

「知られてしまったのだから仕方ない。むしろ、力強い協力者が出来たんだからいいじゃないか」

「そうよ、おちびちゃん。それにアンバーとメイジーの依頼なんでしょ? 私だって力になりたいわ」

「マリーも協力してくれるの!? 嬉しい!」


 こっそりと覗いていたのだろう。アンバーとメイジーがジュリたちの元に駆け寄ってくる。

 ブラウンの瞳を輝かせて二人はジュリ達を見つめる。


「今ね、アレックスおじさんは買い物に行ってるの! もうすぐ帰ってくるよ! そしたら、エレナ達は探りを入れてみて! 私達じゃ疑われるもの!」

「おじさんがなにを欲しいか皆で探ってみよう!」

「そうだね! 皆で頑張ろう!」


 アンバーとメイジーが張り切るのを見て、落ち込んでいたエレナも力強く頷く。

 依頼を受けたのだから、きちんと彼女達の悩みを解決に向けて頑張らねばとエレナは自分を奮い立たせる。


「だから、私達は探偵ではないのだぞ……」

「あらあら、いいじゃない。楽しそうだわ」


 こうしてアレックスが帰ってくる前に、女性陣の作戦会議が始まったのだ。



 

 





 


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