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拝啓 知らないあなたへ

私は一人東京のある部屋にいた。

過去、私は東北の田舎を出て、東京の大学を出て、東京の会社に入った。

当時の私には東京の街は輝いて見えた。煌めくネオン、数多の娯楽、最新の流行。

私もこの東京の一部になりたいと強く願った。

だが、今眼下に広がる街には輝きは見えない。むしろ色あせているように見えた。

代り映えのない景色に囲まれ自分が生きている季節を見失うこともある。

それと同時に私は大切な何かを失っていたのだろう。今となっては思い出せない何かを。

私は刹那に感じる孤独と悲しみをウイスキーとともに流し込む。

自分の奥底に。

明日も、この東京という――


箱庭で生きていくために。

――――――――――――――――――――――――

そんな日々を過ごすある日、久々に休みが取れた私は何をするわけでもなく、惰眠に耽っていた。

昼下がりの午後2時、だんだんと意識が目覚め、私はおもむろに起き上がった。

「未確認巨大物体は品川に上陸!東京23区内の住民の皆さんは自分の命を守ることを第一に優先して行動してください!」

起き抜けの私は違和感を持つことなくその文言を聞き流した。

昨日深夜アニメを見たまま寝落ちをしてしまったのだろう。私はそう考え、リモコンを探すため目をこすった。

そして、目に飛び込んできた情報に私は自身の目を疑った。

数々のビルが崩れ、炎上し、人々は逃げ惑う。

そして何よりこの箱庭を蹂躙する者を。

圧倒的無力を感じた。

強大な力の前では人は無力というのをひしひしと感じた。

いや、この状況になるまでも心の奥底では分かっていたのだろう。

私と同じだ。

様々な抑圧に対し無力で愚かな自分が見えたような気がした。

一つだけ違うことはこの世の理の範疇かどうかということだけだろう。

大きな抑圧が個人ではなく人類に向けられる。

これがこの世の理の範疇かと言われたら、私は否定するだろう。

私はただ箱庭が潰えていくのを見守るしかなかった。

最後にこれを読んでいるであろう人々に問いたい。

この世の理とは何かを。

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