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優しい人たち

「おいおい。噂に聞いてたけど、まさか本当にこんな使えないやつがいるとはな」

「それな。マジでウケるんだけど」

「ガキにしても、見た目がマシなら、風俗で働けたかもしれねぇのによ。こいつ、この見た目だもんな」

「力もない、頭も悪い、見た目も悪い、こりゃ確実にいつかの垂れ死ぬぜ」

「あ、あの、いつまでこの荷物もってればいいですか?」

「あ?俺がいいって言うまでに決まってんだろ」

「見ろよこいつ!もう足がブルブル震えてやがるぜ!」

「ダァーハッハッハ」


冒険者ギルドの一角。そこで、僕は雇われて、芸のようなことをやらされていた。芸と言っても、僕をおちょくるだけおちょくって、散々おもちゃにして笑うだけなんだけど。

彼らが言う通り、僕は、力も、知能も、見た目の良さすら弟に吸収されてしまった。体も、3年前の追放され、何もかも吸収された8歳の時の枯れ木のような体から、身長も体重も見た目すらも変化していない。付いたあだ名は、腐った枯れ枝。棒切れ。そして、最弱。

何をしても全くもって成長性が見られないことから、僕は、興味本位で連れ回されることが多く、この町一帯では、もはや名物のようになっていた。

道行く、自分より年下の子供たちからは石を投げられることもしばしば。大人たちからは鼻を摘まれ、また、物乞いからは有名になった僕へのあてつけのように、嫌がらせを受ける。唯一の僕の居場所となっている冒険者ギルドでは、毎日過酷な暴力(ショー)が開催され、それに何とか耐える、時には耐えきれず大怪我をして、無理やりポーションで直されて何も無かったことにされ、金を握らされて黙らせられる。そんな、尊厳が一切無いような日々を送っていた。

僕の噂を聞きつけ、この前大陸でも名のある高名な鑑定士が、僕を見に来てくれたこともあった。何か呪いがかけられてるのではないかと。

結果、僕が返って無能であることが周知されるだけに終わり、扱いはますます酷くなるだけであった。

この前も、有名な冒険者一行が、僕を見て、

「見ろ。あれが選ばれなかった人間と言うやつだ」

「私だったらとっくのとうに自殺してるわ」

「生き恥を晒してまで、よく生きてられるな。一思いに殺してやった方がいいんじゃないか?」

なんて会話をされ、僕はあまりの恐怖に尿を漏らしたこともあった。あの時の周りのバカにするような喧騒は、今でも忘れられない。その出来事は、最強と最弱の会合として、お笑いとして吟遊詩人に語り継がれる程になっている。

もはや、僕は生きるだけの価値がないのかもしれない。そんなことを思い始めた矢先のことだった。

「君、一緒に奈落のダンジョンに行かないか?」

いつも僕に対して静観を決め込んでいる、最近そこそこ有名になり始めているパーティ、銀狼の血が、話しかけてきた。

「な、奈落って、世界屈指の巨大で最難関レベルのダンジョンじゃないですか!!」

「ああ。僕達も最近行けるようになったんだが、もしかしたら、君を強くするアイテムが見つかるかもしれない」

「で、でも……」

「一生そのまま過ごすつもりなのか?」

「うっ……」

思い返してみると、酷い思い出しかない。それも全て、僕に力が無かったことが原因だ。生きる価値が無いと最近思い始めた矢先の事だったので、僕は、意を決してついていくことに決める。

「あ、あの。僕は何も出来ないし、守ってもらうだけですけど

、よろしくお願いします」

「ああ。よろしく」

「よろしくね。フォードくん」

バカにしてこないのは彼らくらいのものだったので、口々に挨拶して握手をしてくる彼らを、僕は完全に信用しきっていた。ひとまずその場では別れ、何故か明日の夜、人気のない裏路地で待ち合わせすることになった。そして翌日の夜、集合し、奈落のダンジョンへ向かうことになった。




この時は、あんなことになるなんて、僕は想像ずらしていなかった。








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