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No Name's Fake  作者: 大道福丸
後始末編
75/194

チェイス

「……発信器の信号通りなら、そろそろ見えて来るはずだが……いた!」

 クウヤは類い稀なる操縦テクと、ナーキッドの飛行能力を利用して、ヘリに追い付き、視界に捕捉した。

 海沿いを走る景色のいい緩やかな道でドライブには最適な場所だった。しかし、今のクウヤにとって重要なのは風景の美しさではない。

「マロン、俺の目とターボのレーダーには住居の類いは確認できないが」

「はい。データでは基本的にこの辺りに人は住んでいないと出ています」

「なら、対向車にだけ気をつけていればいいか……マロン!運転を頼む!」

「承知しました」

 マロンとナーキッドがリンクするのを確認すると、ターボドレイクはハンドルから手を離し、代わりに召喚したライフルを上空に向けて構えた。

「ただ墜落させるだけなら楽でいいんだが、俺の任務はあのくそほくろ社長を捕まえて、奴のしてきた悪事を白日の下に晒すこと……」

「つまり撃ち落とすのではなく、最小限のダメージで飛行続行不可能な状態に追い込み、不時着させるように仕向けるのですね」

「察しがよくて助かるよ。では、俺がお前にこれから言うこともわかるな?」

「はい。その最小限のダメージで飛行不可能にできる場所を教えろ……ですね?」

「……正解だ」

「では、早速……狙うべきは……ヘリから新たな反応!何かが出て来ます!!」

「なんだと!?」

 マロンの言葉通り、ヘリから何かが大量に出て来た。それはヘリと同様、ローターを回転させ、飛び回る小さなメカ……。

「戦闘用のドローンか!?」

「……!!」


ババババババババババババババッ!!


 ドローンの大群は出てくると、すぐに挨拶代わりの弾丸の雨を青の竜に浴びせかけた!

「ちっ!?マロン!!」

「回避運動取ります。振り落とされないようにご注意を」

 ナーキッドは急加速、そしてスピードを維持しながら蛇行運転することで弾丸の雨を全て振り切った。

「往生際の悪い……!」

「そういうところがあったから、トップにまで上り詰めることができたのかもしれませんね」

「表の社会での話だけで終わっていたら、美談だが、裏社会での出世など恥以外のなにものでもない!!」


バァン!ドゴオォォォォン!!


 怒りを込めて発射された弾丸がドローンを一機、爆散させた。それを皮切りに……。


バン!ドゴオォン!バン!ドゴオォン!


 地上で小さな発射音と小さな火花が咲くと、その一瞬の後に空で轟音と共に大輪の爆炎の花が咲き誇った!ターボはまるで呼吸をするかのように次々とライフルでドローンを撃破していく!

「ただ破壊すればいいだけだから、メタルオリジンズやヘリ相手よりも気は楽だが……」

「数が思っていたより多いですね」

「スナイパーを自称する俺としては、こんな台詞を吐きたくないが、チマチマ一つずつ狙撃していたんでは、日が暮れてしまう」

「でしたら……」

「あぁ……行って来る!!」

 ターボドレイクはナーキッドを離れ、背中の突起から炎を噴き出して、空を飛んだ!そのスピードにドローンの群れは対応できずに一瞬で懐に入られる。

「羽虫はお呼びじゃないんだよ!!ターボDカッター!!」


ドゴオォン!ドゴオォン!ドゴオォン!


 青の竜は空は自分の縄張りだと言わんばかりに、ドローンの間を軽やかに移動しながら、すれ違い様に腕や足から生やした鰭のような刃で切り裂いていった。

 結果、文字通りあっという間にドローン軍団は全滅してしまった。

「雑魚退治……終了だ」

「お疲れ様です」

 ナーキッドに再び跨がると、ターボは刃を引っ込め、再びハンドルを握り、周囲を見渡した。視界にはヘリの姿は影一つ見当たらない。

「悪あがきだと思ったが、一定の効果があったな。見失った」

「ですが、問題ありません」

「まだ発信器は健在だからな」

「それもありますが、ここまで来たら松田輝喜与の行き先に見当がつきます」

「……何?」

 耳元に手を当て、仮面の裏のディスプレイにレーダーを移そうとしたクウヤの動きが止まった。

「それは本当か?」

「はい。この先に松田輝喜与名義の別荘があります。そこに向かっている確率がかなり高いかと。もちろん100%とは言えませんが」

「この世に絶対はない。だが、お前の今の情報は俺がギアを上げるには十分な確率だ。そしてその別荘とやらに無事に到着してもらった方が俺には都合がいい」

「ヘリを無事に着陸云々、考えなくていいですからね」

「あぁ、だからマロン」

「はい、ターボにマップを送ります。わたくしはさらに近くに潜伏できる場所がないか調べてみます」

「お前は創造主よりもご主人様よりも遥かに優秀だよ」



 ナーキッドはドローン撃破後、若干スピードを緩め、ヘリから僅か三分ほど遅れて松田の別荘へと到着した。別荘の前には何台もの車が止められるスペースがあり、そのど真ん中にヘリコプターが乗り捨てられていた。

「もうすでに別荘の中に入っているみたいだな」

「周辺に生命反応はありません。別荘の中にいると見せかけて……ではないと思われます」

「では、俺達もお邪魔しようか」

 別荘はこれまた大きく、まさに成功者の象徴のような優美で、それでいてどこか落ち着きを感じさせる佇まいをしていた。

「ちっ!武器をバカどもに売った金でこんな立派な別荘なんて建てやがって」

「この任務が終わったら、ここを政府で接収、そしてシュヴァンツの保養所にしてもらえるように上に提案すべきだと考えます」

「……お前のその感じは創造主とご主人様、どちらの影響だ?」

「どっちもじゃないでしょうか。いけませんか?」

「……もう慣れたから何とも思わないよ」

 ターボは扉の前に立つと、それをペタペタと触った。

「……何の変哲もない扉だな。普通の家のものより高そうだが」

「罠を仕掛けられている様子もありません」

「そうか……では憂さ晴らし……に!!」


バゴォン!!


 ターボはおもいっきり高級そうな扉を蹴り破った。

「もったいない」

「いかにも成金って感じで、悪趣味なだけだ。もったいなくない」

 ターボは遠慮なく、ずかずかと別荘に侵入していく。

「今回はおもてなしはなしか」

「今のところですけどね」

「だろうな。次はオリジンズかピースプレイヤーか……あそこに地下への階段がある」

 別荘の奥に進むと、違和感のある場所にぽっかりと穴が開いていて、そこから下に階段が延びていた。

「隠し部屋ですね」

「ここが次のパーティー会場への入口ってわけか」

「何が出るか楽しみですね」

「何が出ようが、俺とターボドレイクの敵ではない」

 強がりではなく、本気でそう思っている我那覇空也は恐れることなく、階段を降りて行った。

 大体二階分ほど降りると、目の前に先ほどとは打って変わって無骨で重厚な扉が目の前に現れた。

「これは蹴破るのはしんどそうだな」

「電子ロックのようですけど……鍵はかかっていないようです」

「入って来いというのか……いいだろう、乗ってやる」

 ターボはドアノブに手をかけ、扉を開く。その先にあったのは……。

「……武器庫か……いや、闇の武器商人ヴァレンボロス・カンパニーの関係者の住居にあるなら商品の倉庫と評するのが適切か」

「違うよ」

「!!?」

 スピーカー越しのノイズ混じりの松田の声が地下室に響く!そしてその出所である奥のホバータンクが歪な人型へと変形していた!

「あれは、トランスタンク!?」

「ビグファントです」

「ここはお前の墓場だ!!」

 巨大な異形の鉄人は全身に装備された銃口を全てターボドレイクに向けた!


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