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No Name's Fake  作者: 大道福丸
後始末編
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新商品お披露目

 翼を持った獣はその翼に鋭い刃のようなものが取り付けられ、さらに背部と腹部に二丁ずつ銃が装備されていた。

 四足歩行の獣も銀色の機械のようなものを背負い、四つの足には噴射口のような装置が取り付けられている。

 そして両者の頭部は、半分だけ銀色の仮面に覆われていた。

「……リキ」

 フジミは獣の群れから目を離さずに、後ろにいるこの手のことに一番詳しいと思われる部下の名前を呼んだ。

「……空を飛んでいるのが『ビトント』、四足歩行の方が『ヤーマネ』ですね。どちらも戦闘能力は高いとされてますが、むやみやたらに人間を襲うような性質は持っていません。だけど……」

「あの様子じゃ、襲う気満々みたいね……!」

「きっとあの機械で無理矢理……ふざけた真似を……!!」

 リキの声が震えた……恐怖ではなく、怒りで。目の前に突如として現れたそれは黄色の竜の逆鱗に触れてしまったのだ。

「あんたの気持ちはわかるわ……こんな非道許せない……!」

「生きたオリジンズを兵器に改造するなど国際的にも禁止されている大罪だ」

「こりゃあ、いよいよホクロ引き千切るだけじゃ済まねぇな……!」

 リキの怒りが仲間に伝播する。四人の全身から発せられる熱気によって、エントランスの温度が上がったと錯覚するほどに、シュヴァンツは完全にぶちキレていた。

「みんな、あの子達は被害者よ。出来る限り穏便に済ませましょう」

「言われなくても……」

「そのつもりです!!」

「それが終わったら、あのくそホクロ男に引導を渡してやろう……徹底的にな!!」

「「「おう!!」」」

 四人は一斉に散開した!一刻も早く哀しき獣を悪しき者の魔の手から救い出すために!

「ニャアァァ……!」

「まずはお前から助けてやるよ!ワイルドオリジンズ!」

 アサルトドレイクが相対したのは、『メタルヤーマネ』。本来の目と銀色の仮面に取り付けられた高性能センサーで赤い竜を視認すると……。

「ニャアァァァッ!!」

 躊躇うことなく飛びかかって来た!

「アサルトDクロー!!」


ガギィィィン!!


 振り下ろさせる獣の鋭い爪を、赤い竜は召喚した三本爪で受け止めると、金属同士がぶつかり合う甲高い音が鳴り響いた。

「そんじょそこらの爪なら、これだけで砕け散るはずなんだが……」

「ニャアァァァッ!!」


ギンギンギンギン!!


 マルの希望を裏切るように、メタルヤーマネの爪は何度も何度もアサルトDクローと切り結んでも砕けるどころか、刃こぼれすら起こさなかった。

「元からそれだけ丈夫なのか、それともそれも人為的強化の産物なのかは知らんが……わざわざてめえの土俵で戦ってやるつもりはない!!」


ガァン!!


「――ニャッ!?」

 アサルトは獣の爪のラッシュの隙間を見計らって、装甲で強化された顎を下から蹴り上げた!メタルヤーマネは空中をくるくると回転する。

「心が痛むが……遠距離戦でその自慢の脚を撃ち抜かせてもらう!アサルト……」

「ニャッ!!」


ブシュ!!


「――でぃ!?」

 赤の竜が銃を呼び出そうとしたその時、メタルヤーマネは脚についた噴射口から炎を吹き出し、それを器用に利用して空中で体勢を立て直した。

 そして視線を下に、自分をここまで吹き飛ばしたアサルトドレイクに向けると……。

「ニャアァァァッ!!」


ビシュウゥゥゥゥッ!!


「うおっ!!?」

 顔半分を覆う仮面からビームを発射した!咄嗟にアサルトドレイクが回避すると、ビームは床を焦がし、穴を開け、煙を立ち昇らせた。

「ニャアァ……」

 メタルヤーマネはそれを見て、喜ぶことも悔しがることもせず、アサルトドレイクから決して目線を外さないまま着地、再び両者は一定の距離を取って対峙した。

「……なるほど……一筋縄じゃいかないってことね……!」



「ニャアァァァッ!!」

「くっ!」

 リキの耳元で風切り音が聞こえた。メタルヤーマネの襲撃を文字通り紙一重で躱したからだ。

「ニャアァッ!!」

 鋼の獣は通り過ぎ様、針というにはあまりに太く鋭利な塊を尻尾から出し、それを黄色の竜の顔面に突き……。

「注射は苦手です!」


ガシッ!!


「――ニャ!?」

 針を突き刺す前にパワードレイクはその根元を掴み取り……。

「どっせい!!」

 おもいっきりぶん投げた!しかし……。

「ニャアァッ!!」

 同僚のアサルトと対戦しているもう一匹と同様に脚のスラスターを使って、体勢を立て直し……。

「ニャッ!!」


ビシュウゥゥゥゥッ!!


 仮面からビームを放つ!けれど……。

「その程度なら!パワーDナックル!!」


バシュン!!


 パワードレイクは一回り大きくなった拳でビームを力任せにかき消す!

「射撃戦も格闘戦もきみじゃ、パワーには勝てない!ヤーマネの本能が残っているなら、素直に降参してください!!」

 きっと届かないとわかっていても、リキはそう言わずにはいられなかった。

 肉体的には今の攻防でダメージは一切負っていないが、こうして半分機械に侵食された獣とにらみ合っている時間が、彼の心に確かな痛みを与え続けている。

「ニャアァァァッ!!」

 そんな優しい彼の心など知ったことかと、メタルヤーマネは再び飛びかかって来た!

「くそ!!」

「ニャアァァァッ!!」

「しつこい!!」

 振り下ろされた爪をギリギリで回避したと思ったら、すぐにもう一方の爪を下から斬り上げてくる。それもまた回避すると、またまた上から……。それを延々繰り返す。

(どうする飯山力!?このままだと埒が明かないけど、利用されているだけのヤーマネは傷つけたくない……だったらこのままエネルギー切れを狙うか?それなら……)

「ニャアァァァッ!!」

「!!?」

 このままだと駄目だと思ったのは、メタルヤーマネの方も同じだった。背中の機械を展開させ、本来野生のヤーマネにはない機関、“腕”を出現させた。

「機械のアームだって!?」

「ニャアァァァッ!!」


ガンガンガンガンガンガンガンガン!!


「――ッ!?」

 元々あった爪と、ハンマーのようなメタルアームが巧みな連携をしながら、パワードレイクに襲いかかる!変幻自在の攻撃に黄色の竜は防戦一方だ!

(シュヴァンツに対オリジンズ部隊……今まで様々な相手と戦って来たけど……こんな構造の生き物と戦ったことはない!?本当にどうするんだ飯山力!!)



 ターボドレイクはライフルのスコープを覗き込み、自分の頭上を悠々と飛ぶ『メタルビトント』の翼に狙いを定めた。

「お前に罪はない。だからとても心苦しいが……落ちろ!!」


バァン!!


 引き金を引くと、当然弾丸が飛び出し、真っ直ぐとメタルビトントの翼へと向かった。普通の相手だったら、そのまま貫き、墜落させておしまい……になるはずだったのだが。

「キィィィィィッ!!」


ブシュ!!


「……何?」

 メタルビトントもまた全身に配置されたスラスターから炎を吹き出し、野生の状態ではできない軌道で飛行し、弾丸を回避した。

「あのタイプの飛行型オリジンズと同じ感覚で狙撃しても駄目というわけか。だが、その程度の動きならピースプレイヤーでもできる奴はいる」

 頭の中で情報を修正し、青の竜は改めてライフルを……。

「キィィィィィッ!!」


ガシャン!ガシャン!!


「!!?」

 突然、メタルビトントが声を張り上げたかと思ったら、背部と腹部に付いていた銃が外れ、そのまま自律飛行をし始めた!

「あれも単独で飛ぶのか!?」

「キィィィィィッ!!」


ババババババババッ!!ビシュゥッ!!


 分離した銃から無数の弾丸、そして本体のメタルビトントの仮面からビーム、それらが一斉にターボドレイクに降り注いだ!

「ちっ!?」

 青の竜は足のタイヤを回転させ、高速で回避運動を始めた!だが、そんなことお構い無しにメタルビトントとその眷属はさらに攻撃を強めていった。

「ゆっくりと狙いをつける暇など与えてくれんか……生意気な!」


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