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No Name's Fake  作者: 大道福丸
本編
45/194

タワー突入

ガシャンガシャンガシャンガシャン……


 ベルミヤの夜に統制の取れた足音が響く。ダエーワシステムを発動させたドレイク達は一糸乱れぬ動きで街を練り歩く。

「あれ?なんだ?」

「パレード……なわけないよな……?」

「何かの訓練……か?」

「ママ!ピースプレイヤー!ピースプレイヤーがいっぱい!!」

「うおぉぉぉぉっ!これがドレイク!新たに配備された新型!こんなところでお目にかかれるとは!!」

「何でもいいから道路の真ん中を歩くなよ!!」

「ふあ~ぁ……お腹空いた~何食べよっかな……」

 街を行く人々は文句を言ったり、写真を撮ったり、特に興味を持たなかったり………様々なリアクションをしながらドレイクの行進を遠目で眺めていた。

 何も知らない彼らにはそうすることしかできない。いや、知っていたとしても力を持たない彼らに抗う術はないのだ。

「おい、あれ見てみろよ」

 ビルから街を見下ろしていたサラリーマンが何か気づき、それを知らせようと同僚の肩をパンパンと叩いた。

「ん?新型のピースプレイヤーだろ?さっき見たよ」

 肩を叩かれた同僚はめんどくさそうに窓の外に視線を移す。やっぱりさっき見た時と相も変わらず紺色の機械鎧が行進している。

「違ぇよ!あっち見ろ!あっち!」

「んん?」

 サラリーマンが指差したのはドレイクではなく、その後ろに迫る高速移動する二つの光だった。

「あれ!何か凄ぇスピードでこっちにやって来てるけど……何?」

「俺が知るかよ……でも……前を走ってるのはバイクっぽいな……」

 どうやら彼が呼ばれたのは視力が良かったからみたいだ。目を細め、集中すると光を発しているのがバイクのヘッドライトだというのがわかった。

「バイク?じゃあ、乗っているのは誰かわかるか?」

「ちょっと待って……えーと、二人乗っている……後ろに乗っているのは……何か紫色の奴……」

「紫?服がか?」

「いや……服というかなんというか……」

「はっきりしないな……まぁ、いいや。運転してるのは?」

「多分、ピースプレイヤーだ……白いボディーに藤の差し色が入っている……女性型のピースプレイヤーだ」



「続々と集まっているわね……」

「あぁ、生気を感じないピースプレイヤーのパレード……不気味だな」

「まさか、ワタシ達が出発するとほぼ同時に発動するなんてね……」

 プロフェッサーお手製の武器や外付けの増加装甲で武装した、言うなれば『アーマード・シェヘラザード』を装着したフジミとザッハークは自分たちの街に広がる異様な光景に顔をしかめた。

「まったく……こんなものを作る為にワタシ達は……シュヴァンツは命を懸けて来たわけじゃないのに……」

「まぁ、デザインとか色はカッコいいんじゃないか?紺色は落ち着いていていい感じだ」

「そうね……でも、カッコいいからって見とれてヘマしないでよ!」

 フジミが手首を捻るとナーキッドはスピードをさらに上げ、ドレイクの群れの間を駆け抜けていく。

「上手いじゃないか、運転」

「まぁ、厳しい特訓受けさせられましたから、部下にね」

 フジミの脳裏に鬼のような顔して自分を怒鳴りつけるクウヤ、その彼にメンチを切るマル、両者の間でしどろもどろになるリキ、それを見て笑うアンナの姿が思い出された。

 当時はただただ辛かったが、今となってはいい思い出、またあの時を取り戻すためにさらにアクセルを開く。

「ワタシの華麗なドライビングテクニック!見惚れなさい!って……プロフェッサーはついて来れてる!?」

 シェヘラザードがちらりと後ろを見ると、大きな金属の塊が地面から浮きながら、ナーキッドの後をついて来ていた。

「大丈夫よ!この『ビグファント』はトランスタンクの中でも傑作中の傑作!それを天才であるこのプロフェッサー飛田がカスタマイズしたんだからね!!」

 ビグファントのスピーカーから妙に高揚したプロフェッサー飛田の声が流れる。それを聞いたフジミは……。

「何かはしゃいでない?本当に大丈夫?」

 逆に不安になった。

「プロフェッサーの操縦技術はともかく、ビグファントの防御力については間違いないから、最悪壁ぐらいにはなるだろ」

「あんた……」

 冷静、というより冷酷なザッハークにさらに不安感を募らせる。

「はぁ……まっ、今更ごちゃごちゃ言っても仕方ないわよね」

「そういうことだ」

「で、話は変わるけど、ホバー移動するのもトランス“タンク”でいいの?」

「あぁ、ホバータンクっていうジャンルがあるからいいんじゃないか?むしろ世の中にはヘリコプター型やバイク型のトランスタンクもあるからな」

「それはさすがにどうなの……?」

「一番最初に戦車を変形させて人型にしたから“トランスタンク”って名前になっただけだからな。変形する乗り物はこの世界じゃみんなトランスタンクだ。もっと研究開発が続いていれば細かく分類されたかもしれないが、取り回しやコストの関係でピースプレイヤーの方がメインストリームになってしまったからな」

「時代の徒花ってわけね」

「だが、火力と防御力とゴツいカッコ良さは今の時代も十分通じる……とか、話していたら、大分目的地が近づいていたようだな」

 今するべきかは疑問符が浮かぶ雑学を話し合っていたザッハーク達の前にでかでかと『ここから立ち入り禁止』と書かれた看板が何枚も現れる。それらがバリケードを築き、彼らの道を塞いでいた。

「タワーの周辺は封鎖されているみたいね。一般人がいないのは、ワタシ達にとっても好都合」

「でも、いいのか……?」

「ん?何が?」

「貴様は警察官なんだろ?こういうのは守らないと駄目なんじゃないか?」

「確かにそうだけど……今は……緊急事態ですから!!」

 ナーキッドはバリケードを軽々と飛び越した。その後にビグファントも続く。

「ここからはタワーまでノンストップね!」

「いや……そう都合よくはいかないみたいだ」

 道路にはまたバリケードが築かれていた。紺色の竜の身体で構成された強固なバリケードが。

「来るぞ!!」

「ええ!」


バババババババババババッ!!


 ドレイクは一斉にその手に持った拳銃の引き金を引く。人数のせいか、まるでマシンガンのようにけたたましい音を立てて、シェヘラザード達に襲いかかる。

「当たってなんか……やらないわよ!!」

 フジミは特訓の成果を存分に発揮、器用にナーキッドを操り、弾丸を避ける。

「はははははっ!ビグファントにはそんな豆鉄砲が効かないわよ!!」

 飛田はビグファントの強固な装甲にものを言わせ、正面から弾き返した。

「ザッハーク!」

「わかっている……これだな」

 ザッハークはフジミに促され、ナーキッドの後ろに積んであった道具の一つを渡す。それはでっかい筒状の武器……バズーカだ。

「プロフェッサー!いくわよ!」

「はいな!」


ドォン!ドォン!ドォン!!


 シェヘラザードはバズーカを、ビグファントは装備されている長大なキャノンから砲弾を発射した……夜空に向かって。

「弾けて!」


ボォン!!


 砲弾はドレイク達の頭上で爆発!中から網が出現する。

「捕らえて!」

 網はドレイク達を覆い、絡め取り、そして……。

「痺れて!!」


ビリビリビリビリビリビリビリビリ!!


「…………ッ」

 電気を流す。網は激しく明滅し、ドレイクの機能を、中にいる人間を一時的に麻痺させる。

「あんた達に罪はないから、手荒な真似はしたくないんだけど、のんびりしてる時間もないし、許してちょうだい」

「時間さえあれば、わたくしがプロフェッサー飛田からいただいたプログラムでダエーワシステムを一つ一つ無効にしていくんですけどね」

「まっ、命さえ無事ならいいでしょ……っと!!」

 網に捕獲されたドレイクの群れをまたナーキッドとビグファントは飛び越える。

「さてさて……これで今度こそ目的地まで直行……」

「残念だが……」

「また?」

「あぁ、追手だ」

 シェヘラザードがちらりと後ろを振り向くと、新たなドレイクの集団が追いかけて来ていた……足元に装備されたタイヤをフルに回転させながら。

「あれはクウヤのターボドレイクに付いていた……」

「どうやら制式仕様では標準装備になっているようですね」

「あぁ……便利そうだもんね、あれ」

「感心してる場合か。あいつらもどうにか……なんだ?」

 フジミは肩越しに、後ろでべちゃくちゃしゃべっているザッハークをジーッと睨み付けた。

「いや、あんたも働きなさいよ。トランスタンクについての知識をひけらかしたぐらいじゃない、ここまであんたがやったこと」

「ふむ……別にサボっているつもりはなかったんだが……客観的に見れば、怠け者の謗りを受けるのは免れないか……それはとても心外だ……!」

 フジミからの非難を受け、ザッハークは後方に肩から生えた蛇の頭を向けた。

「最新の装備を使ってやることが、女のケツを追い回すなど……反吐が出る!」

「「シャアァァァァァッ!!」」


べちゃっ!べちゃっ!!


 蛇は道路に粘着性の唾液を吐き捨てた。それに猛スピードでドレイクの軍団が突っ込む。


ドガシャアァァァァァァン!!


 紺色の竜は次々と唾液に足を、タイヤをとられ、転倒し、その転倒したドレイクにさらに後ろから来たドレイクが躓き、あっという間に山を築いた。

「これで追手はしばらく大丈夫……とはいかないみたいね」

 それでもなんとか倒れる同胞をかき分け、ドレイク軍団はフジミ達を追いかけ続ける。さらに……。

「マスター、前方にも新たなドレイクが……」

「ちっ!?」

 ナーキッドの進行方向に懲りずにドレイクの群れが壁を作っていた。

「ワタシは前方の敵をまた電磁ネットで無効化する!ザッハークは引き続き、追手を!」

「了解した」

「神代ちゃん、私は?」

「プロフェッサーは両方だ!そのマシンならできるでしょ!」

「当然!ビグファント!前方に電磁ネット弾!後方にトリモチ弾!発射!」

 ビグファントは長大なキャノン砲と全身に取り付けられた小さな砲頭から網を、トリモチをばらまいた。

 シェヘラザードとザッハークもそれに続き、ドレイクを片っ端から機能停止させていく。

 そして、遂に数え切れないほどのドレイクを振り切り、目的地にたどり着いた。

「ベルミヤタワー!到着!!」

「はっ!!」

 ザッハークはナーキッドから跳躍し、タワーの入口前に着地。

 シェヘラザードは残弾の無くなったバズーカを投げ捨て、ハンドルを切り、横滑りしながら、ザッハークの隣に停車した。

「それじゃあ、私も……ビグファント!変!形!!」

 プロフェッサー飛田がレバーを引くと、ビグファントは反転しつつ、腕が、足が、頭が生え、歪ながら人の形へと姿を変えた。着地すると、その重さから舗装された地面にひびが入り、陥没する。

「予定通り、ここは私が食い止めるわ!二人は早くタワーの中へ!!」

 両手の指のように配置された銃をいまだに追って来るドレイク達に向け、仁王立ちになるビグファント。ザッハークが言っていたように壁になるつもりだ。

「わかった……って言いたいところだけど、本当に大丈夫?予想よりも遥かに敵の数が多い……」

 ナーキッドに積まれた盾やマシンガンを装備しながら、心配そうにフジミは問いかけた。

「大丈夫かどうかって言われたら……わからないわね。まぁ、ここまで来たらなるようになるし、なるようにしかならないでしょ!」

「プロフェッサー……」

 スピーカーから流れる声は明るかったが、フジミには無理をしているように聞こえた。

「やっぱりワタシもここに残って、もう少しドレイクの数を……」

「神代藤美!!」

「!?」

「クラウスのメッセージを聞いただろ!オレと貴様!二人じゃないと、奴は止められん……!!」

「ザッハーク……」

 動揺するフジミをザッハークが一喝した。ただ彼にとってもそれは苦渋の決断だ 。プロフェッサー飛田との付き合いはフジミよりも長いのだから……。それでも必死に歯を食いしばり、自分の為すべきことをしようとしている。

「……そうね……ワタシが今、やるべきなのはあなたと二人で、このタワーのどこかにいる偽物野郎をぶっ飛ばして、一刻も早くこの下らない茶番劇を終わらせることよね!!」

「あぁ!そうだ!」

「盛り上がっているところに水を差すようで悪いんですが、わたくしマロンがいることもお忘れなく」

「あっ……そうね……三人ね」

 フジミはそっと自身の纏っているシェヘラザードを撫でた。

「あとプロフェッサーも一人ではないかもしれません」

「……えっ?それってどういうこと……?」

「上方から、多分援軍が来ます」

「何!?」

 シェヘラザードとザッハークが一斉に上を向いた。空には漆黒の夜空といつもよりきれいに見える無数の星が輝いていた。

 そのうちのとびきり大きな星が徐々にさらに大きくなっていく。

「あれは……」

「ここに落ちて来るぞ!」


「よっこら……しょっと!!!」


 二人の目の前にド派手な金色をしたピースプレイヤーが降り立った。ザッハークは初見だが、フジミはそれに見覚えがある。

「この下品な金ぴかのルシャットⅢ……ジジくさいかけ声……もしかして……いや!もしかしなくても、ヤマさんだ!!」

 かつての上司の登場にフジミの先ほどまでの不安がどこかへ吹き飛んでしまう。仮面の下で子供のように目を今見たばかりの星のようにキラキラと輝かせる。

「おうよ!つーか、助けに来たのにひどい言われ様だな、おれ」

「それはすいません……けど、なんで……?」

「なんでって、おれの方が聞きたいんだけどな。刑事の勘と長年慣れ親しんだルシャットへの愛着で新型を拒否してたんだが、受け取った奴らはみんなこの様だし、なんか急にお前さんを助けろって知らない奴からメールが来るし……」

「メール……まさか?」

 フジミは再びシェヘラザードに触れた。

「はい。マスターのご想像の通り、わたくしがマスターの顔見知りで助けてくれそうな人達にメールをしました」

「あんたってAIは……」

「ご迷惑だったでしょうか?」

「ううん、かなり助かったよ」

「それは良かったです」

「でも、人“達”ってことは、他にも送ったの?」

「はい。もう一人だけ。その人も到着したようです」

 フジミは周囲を見渡した。すると、彼女達が来た方向とは違う方からドタドタとこの場にそぐわないシルエットが近づいて来た。

「あれは……交通安全のマスコット……確か“シュもりくん”だっけか……?」

「違う!“シュアリーを守る”で、『シュもるくん』よ!」

「大して変わらないじゃないか」

「全然、違うわよ!」

 元々、子供たちに暴力団を相手にするよりも交通ルールの指導をする仕事がしたかったフジミがザッハークの間違いを必死に訂正する。

 そんな場違いな会話をしていると、彼女達の前に噂のシュもるくんがやって来た。

「はぁ……はぁ……間に合った……ってことでいいんですかね?」

「ワタシに会いに来たっていうなら、そうじゃない?」

「あっ!やっぱりフジミさんでしたか!形は変わっているけど、ピースプレイヤーのカラーリングはあの時のまんまですもんね!」

「あの時……?失礼ですけど、あなたは……?」

「あっ!一度会っただけじゃ覚えてませんよね!僕は川口です!あのトラック事故の時の!」

「川口……あぁ!!」

 フジミの頭に記憶が鮮明に甦り、シュもるくんと思い出の中の川口の顔が重なって見えた。

「あなたもメールをもらって!?」

「はい!僕なんかじゃ役に立たないかもって思ったんでけど、ここで行かないと一生後悔するような気がして……」

「それでシュもるくんを引っ張り出して?」

「ええ、これでも下級ピースプレイヤーなんで、シュもるくん。交通安全のマスコットだから車に轢かれるぐらいはなんともない程度に丈夫にできているので、壁ぐらいにはなれるかと……やっぱ、役に立ちませんか?」

 心配そうに首を傾げるシュもるくんに、そんなことないとフジミは首を横に振った。

「ううん、むしろちょうど良かった。あなたにぴったりの役目があるわ」

「えっ!?なんでしょうか!?なんでもやりますよ!自分!」

 自分が必要とされていることに喜びを覚える川口の視線を一身に受けながら、フジミは三つの小さな銀色の瓶を取り出した。

「出ておいで!妖艶なるイヴォー!剛烈なるアクラヴァズ!俊敏なるイミクラム!」

「キィッ!」「ウホォッ!」「ナアッ!」

 瓶の中から翼を持ったもの、大きな身体のもの、四足歩行のもの、計三体のオリジンズが飛び出して来た。

「こ、これは……!?」

「怖がらないで、この子達は味方よ。はい」

 一転して、身体を震わせる川口にフジミはそっと三つの瓶を差し出した。

「三十……いえ、二十分経ったら、この瓶をこの子達に翳して、戻れって命令して。そうすれば大人しく戻るから」

「そ、それだけですか……?」

「そう、それだけ」

「だったら、僕じゃなくて他の人でも……」

 川口は一瞬だけビグファントや金ぴかのルシャットに目を向ける。そして、視線を再びシェヘラザードに戻すとまた彼女は首を横に動かした。

「駄目よ、あなたじゃなきゃ。だってジジババは時間の感覚が狂っているから」

「「おい」」

 プロフェッサーやヤマさんの突っ込みを無視して、フジミはシュもるくんに獣封瓶を握らせた。

「お願いね、川口」

「わ、わかりました!」

 川口の決意を確認すると、フジミはペット達の方を向く。

「あなた達も頼むわよ!でも、間違っても殺しちゃ駄目だからね!!」

「キィッ!」「ウホォッ!」「ナアッ!」

 三匹のオリジンズは完全に神代藤美に手懐けられていた。彼女の意志を汲み、彼女のために戦うために各々タワーの入口を囲むように移動する。

「じゃあ、ヤマさん、あとは……」

「おう!」

「これ、トリモチ弾のマシンガン、使ってちょうだい」

 ナーキッドの後ろに搭載されていたもう一丁の機関銃を金ぴかルシャットに手渡す。

「ありがてぇ!これでおもいっきりやれる!」

「無理しないで、いざとなったら逃げていいからね」

「安心しな、最初からそのつもりだ!」

 ヤマさんは左手をピンと親指を立てて、突き出した。

「だから、お前もヤバくなったら、尻尾巻いて逃げろよ……」

「うん……必ず生きてヤマさんに会いに来るよ!」

 フジミもヤマさんの想いに応えるように、盾のついた左手を親指を立てて突き出す。

「神代藤美、敵が迫って来ている。そろそろ……」

 遠目に紺色の竜の集団がこちらに行進して来るのを、みんなの視界が捉える。

「ほら!早く行きなさい!」

「ここはおれ達に任せて!!」

「フジミさんはフジミの仕事を!」

「キィッ!」「ウホォッ!」「ナアッ!」

「みんな……」

 後ろ髪を引かれながらも、フジミは仲間達に背を向けた。

「それじゃあ……行って来る!」

 シェヘラザードとザッハーク、シュアリーの唯一の希望が遂にベルミヤタワーに突入した。


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