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No Name's Fake  作者: 大道福丸
悪の百花繚乱
168/194

大将戦①

「本当にギリギリのギリギリで……二勝目!!しゃあっ!!」

 プリニオは渾身のガッツポーズを披露し、喜びを爆発させた。

「ひとえにエシェックの度胸と丈夫さのおかげだな。まさか本当に自分を餌にして、敵を一網打尽にするとは思わなかった……」

 木原の方はと言うと感心半分、そしてもう半分は恐怖で背筋を凍らせた。エシェックが見せてくれた光景は彼の頭の中で描いた絵図を遥かに超えていた。

「いやぁ~、本当に奇跡だよ。この副将戦は今までで一番勝ち目が見えなかった」

「結局、奴のイカれたような素振りはただのパフォーマンスだったが、実力は紛れもない本物。あそこまで追い込まれた時点でエシェックでなければ逆転は本来不可能だった」

「エシェックも言ってたけど、最後に高圧水流による遠距離攻撃を選んでいたら、あっちの勝ちだったはずだからね」

「観客のことなど気にするから……と、侮蔑したいところだが、私はその気遣いができるあいつを評価するぞ。ハッタリも立派な戦術だし、一時的とはいえ私達を騙せるなら十分だ」

「相手をビビらせて、矛を収めさせることができたらそれが一番だもんね」

「武斉を狙っていたというのもどこまで真実かわからんが、奴の実力と当時の武斉サルワの力を考えれば、戦わないのが正解だ」

「エシェックサルワにやられたことをもっと大胆かつ繊細にやられて、自慢の生首粉砕……一蹴されてただろうからな」

「若干の小物臭さとメンタルの弱さは懸念点だが、総合するとそれなりに頭が回る実力者という評価に落ち着く。アレッシオよりも戦いに関しては頭が回り、いざとなったら力ずくで抑え込める君向きの兵隊だ」

「んじゃ、特注の義手でもプレゼントしてお迎えしましょうかね」

「ボスになったらそうするといい」

「そのボスになれるかどうかは君次第なんだけど、自信はあるの?」


………………


「あれ?」

 振り返ると今の今まで楽しくおしゃべりしていた紫の悪魔の姿が見る影もなくなっていた。

「とりあえず気合はばっちりってわけね」



『さぁ!バトルフィールドが整い、大将戦……つまり勝負決する運命の一戦を行う準備が終わりました!!』

「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」

『会場のボルテージは最高潮ですね』

『あれだけ素晴らしい戦いを立て続けに見せられては、そうなるのも当然です!!』

『ええ、どれも各々の持ち味を生かした見応えのある試合ばかりでした。勝負も最後までどちらに転がるかわからない極上のものね』

『そんな刺激的な夜を締め括れるのはこの二人しかいない!!大将戦!選手入場!!』

 実況の言葉に呼応し、噴き出すスモーク。その中から紫色の禍々しい悪魔のようなマシンが姿を現した。

『エルザに混乱をもたらすヴィランか?それとも新たな秩序に導くダークヒーローか!とにかく街はこいつの話題で持ちきりだ!!プリニオ軍大将!アーーーリマンッ!!』

「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」

「おれはお前を見に来たんだ!!」

「ボスを殺したお前なんか本当は応援なんてしたくないんだが……今まで必死に戦った奴らの頑張りを無下にするような、ショボい戦いだけはしてくれるなよ!!」

「組長の仇が!!絶対に許さないぞ!!だけど今日だけは……芝さんのためにも勝ってくれ!!」

『声援半分、ブーイング半分になると思いましたが……愛憎入り交じっていますが応援する声が多いですね』

『思うところはありますが、今は皆、このボス決定戦という祭りを最高の形で終わらせたいのでしょう』

『個人的に多少ブーイングされるぐらいの方がプレッシャーを感じなくていい気もしますが……』

『あの人には関係無いでしょう。この程度で狼狽えるくらいなら、たった一人でマフィアに喧嘩なんて売りませんよ』

(本当にこの実況はわかっているな。応援されようが、ブーイングされようがどうでもいい。私がこの戦いに参戦したのは……)

 アンラ・マンユはレフェリーの横まで到着し、堂々とした態度で立ち止まった。

『続いてアレッシオ軍の大将!入場だぁぁぁっ!!』

 反対側のスモークを突き破り、鍛え抜かれた身体を見せつけるように男が登場した。

『荒々しくも品格を失わない偉丈夫!その姿、まさに王者の貫禄!!そいつこそがランビリズマのキング!チャンピオン、ヤクザーンが降臨ッ!!』

「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」

「「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」」」

「おれはお前を見に来たんだ!!」

「ヤクザーン!!」

「今日も勝ってくれよ!!」

『アーリマンも凄かったですが、ヤクザーン選手もさすがですね……この地下格闘技場が揺れてますよ』

『名実共に人気実力ともにナンバー1ですからね。それに今日こそはという期待もあります』

『期待?』

『私も結構ここで長いことやらせてもらってますが、彼が本気を出したところを見たことはありません。ですけど、今回の相手はあのアーリマン……もしかしたら彼なら無敵のチャンピオンの全力を引き出してくれるのではないかと、ファンは興奮を抑えられないのですよ!!』

(そうなることを一番望んでいるのはワタシ自身だ)

 笑みをこらえながら、ヤクザーンもまた指定のポジションに到達、この戦いのフィナーレを飾る両者が睨み合った。

「お目にかかれて光栄です、チャンピオン殿」

「ワタシもだ、噂のヒーロー君。相手陣営に君の名前を見た時は腰を抜かすかと思ったよ」

「そのまま抜かしっぱなしでいてくれたら、私の不戦勝になったのに……残念だ」

「こんな楽しそうなことを欠席するはずがない。這ってでも来るさ」

「そうか……やはりこの手で叩き潰さなければならないか……!!」

「それでいい……!せっかくの祭りだ。テンション高めにいこうぜ……!!」

『両者の間に火花が散っています!!見ているだけで息苦しくなるほどの威圧感です!!』

『大将と呼ばれるに相応しい人物だと、その迫力だけで理解させて来ますね』

「バリア……展開!!」

 レフェリーの古沢が声をあげると、それにスタッフが応え、機械を作動、三人を外界から遮断する光の膜が覆った。

「お二方とも準備を」

「私はもうできている」

「フッ、では待たせては失礼だな……魅せるぞ、アエーシュマ」

 ネックレスが光となり、機械鎧となり、チャンピオンヤクザーンの全身を包み込んだ。

『赤と青で彩られた派手さを持ちながら、余計なものを削ぎ落としたシンプルな造形!これぞ我らが王者の鎧!』

『改めてヤクザーン選手のエンターテイナーとしての矜持と、戦士としての実直さを具現化したようなマシンですよね』

『さぁ、両者完全武装で準備万端!!あとはゴングが鳴るのを待つだけです!!』

「実況を始め、皆さんもう辛抱たまらんようだ」

「ワタシもだよ、古沢さん」

「ふん……私はさっさと終わらせたい……だから早くしろ」

「それでは試合……」

 レフェリーが高々と手を振り上げた。そして……。

「始めぇぇぇぇぇッ!!」


カーン!!


「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」

 勢いよく始まりを告げながら振り下ろし、合わせてゴングが会場に鳴り響いた!

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