開幕!!
五人のメンバーが揃ってから、あっという間に時が流れ、ついに……。
『ランビリズマ超スペシャルイベント!アルティーリョファミリー新ボス決定戦!開幕だあぁぁぁぁぁッ!!!』
「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」
バーの地下に広がる地下空間は観客の熱気に包まれ、歓声に地響きを起こした!
それをVIPルームから静かに眺める男が二人……。
「いよいよだな」
「あぁ……」
アンラ・マンユに声をかけられ、プリニオは絞り出すように返事をした。然しもの彼も緊張を抑えるのに必死なようだ。
「もっと肩の力を抜いたらどうだ?君が戦うわけではあるまいし」
「だからこそどうしたらいいのかわかんないだよ。こんなことなら、オレが戦えるように幹部ども説得しておくんだった」
「その幹部やその配下も気が気じゃない様子だな。ついでに佐利羽の連中も」
熱狂する観客席の中に異質な集団が二つ。
アルティーリョと佐利羽の組員達はプリニオ同様固唾を飲んで、まだ誰もいないバトルフィールドを注視している。
「結果次第で自分達の今後が大きく変わるからね……あっ!ちなみに佐利羽の連中には、芝ちゃんは今日この日まであんたと組んで戦うことなんて知らなかったって言ってあるから」
「その方が芝には都合がいいか」
「先代の仇だからね、あんた。そいつと内々で通じていたってなると、反感を持つ奴もいる、っていうか大半だろう」
「だが、それだと黙っていたことになる君にヘイトが向かないか?」
「そうなるだろうね。だけど戦わない分、それくらいの面倒は引き受けないと」
「覚悟はできてるか」
「そんな大層なもんじゃないけどね。あんた達相手……今日の対戦相手も言っても、うちのもんだから、そいつらの強さを目の当たりにして、今の佐利羽では事を構えるのはキツいって思ってくれればいい。そう思ってくれると、楽観視してるだけさ」
「臆病さと大胆さを兼ね備えてこそのボスだ。君の考えはバランスが取れていると思うよ」
「そりゃどうも」
「少なくとも……奴にはできないだろうさ」
視線を上げて、向かいのVIPルームを見る。ガラスの奥に高級そうな椅子にふんぞり返っているアレッシオ・クローチェの姿があった。
「防弾ガラス越しでもわかる……奴はトップの器じゃない」
「能力自体は高いから、もっと身の丈にあった振る舞いを覚えてくれれば、オレもこんな苦労をせず、仲良くアルティーリョを盛り立てていけたのに」
プリニオは思わず大きなため息を溢し、肩を落とした。
「今日を境にその身の丈という奴を理解するさ。そろそろ始まるぞ」
再び視線を落とすと、地下空間の真ん中に設置されたバトルフィールドの真ん中に白黒のピースプレイヤーが立っていた。
『この一大イベントの審判を務めるのはこの人以外いないでしょう!!ご存知レフェリー古沢ぁぁぁッ!!』
実況のエミリアにテンション高めに紹介されると白黒のマシンは観客に向かって手を振り、一礼した。
『キュリオッサー・ブラベウスを装着して準備は万端のようですね』
『はい!もちろんわたし実況担当のエミリアも、解説担当のダルトン氏も体調、覚悟ともバッチリです!!』
『ランビリズマ史上に残るバトル、盛り上げていきましょう』
『では、まずは初めての方もいると思われるので、ルールを説明させていただきます!このランビリズマでの戦いは一対一の時間無制限一本勝負!相手をノックアウトするまで終わりません!!』
『ノックアウトと判断されるのは、気を失った時、ダウンしてレフェリーが10カウント告げるまでに立ち上がれなかった時、そして戦闘形態が解かれた時です』
『エヴォリストやブラッドビーストは人間に戻ってしまった場合、ピースプレイヤーは機体が待機状態に移行してしまった場合ということですね?』
『はい。このルール上、ピースプレイヤーは原則一体、戦闘中に別のマシンに装着し直すことは反則となり、それを行った瞬間に敗北となります』
『他に反則となるのは、観客の安全のためにバトルフィールドに張られるバリアを故意に破壊することになりますが……ぶっちゃけ基準が曖昧ですよね?』
『ええ、ここら辺はレフェリー各々の判断といいますか……まぁ、ベテランの古沢さんなら、見ている人が首を傾げるようなジャッジはしないと思いますが』
(当然だ)
古沢は心の中で頷いた。
『あとはレフェリーが決着を宣言した後に戦闘を停止しない場合も反則となります。基本KO決着のここでは勝者が敗者に鞭打つことを禁止しているってことなんでしょうけど……』
『まぁ、普通はせっかく手にした勝利を手放す真似なんてしませんよね』
『最後に!試合中のいかなる怪我も、最悪命を落とすことになっても、事故として処理されます!命を懸ける覚悟もない奴はおととい来やがれ!ってことです!!』
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
「そうだ!そうだ!」
「死ぬまでやれ!!」
『観客はそうなることを望んでいるようですね』
『わたしとしては優れた戦士が不必要に失われることは避けて欲しいんですが……どうなるかは神のみぞ知る!!以上でルールの説明は終わり!早速先鋒戦に参りましょう!!』
「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」
今日一番の歓声が響き、アンラ・マンユ達の前のガラスがびりびりと揺れた。
「いよいよだな」
「あぁ、アルティーリョの、いやエルザの運命を決める戦いの始まりだ……!」
『選手入場!!』