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剪定

作者: 武田道子

剪定




10月に青々と硬い艶やかな葉の美しい椿の枝をはらって

11月に梅の木の枝をばちばち剪定して

新年早々紫陽花の曲がりくねった細い枝をぱちぱち切った



庭の木々や鬱蒼とした茂みは

放っておけばいつの間にか

庭はとても狭くなり

空は湖から池の広さに変わってしまう



おかっぱ頭をくりくり短くしたときのような

さっぱりしたけれど少し

惜しい気持ちが掠める



すかすかになった枝の隙間から

広くなった空が

親しげに大地を見下ろす



剪定された枝の山

すでにたくさんの芽をはらんだ枝えだ・・・

ごめんなさいと呟く



切ってしまっていい枝なのかそうでないのか

素人の私にはわからない

私の人生でもなん度も繰り返された剪定が

同じように庭の木々に毎年繰り返される



正しいのか間違っているのか

良かったのか悪かったのか

花がたくさん咲けば成功

そうじゃなければ失敗・・・



剪定された私は

どれだけの花を咲かせたのか

それとも咲かせることができなかったのか

分からないままに

今の私がいる



人の手で絶たれた命

痛手を受けてもしっかりと

強く生き続ける生命力



時が来れば全身全霊で

枝を張り、葉を実らせ、花を咲かせる

毎年何か悪いことでもしたかのように

すっぱりと切り落とされた枝も

何もなかったかのように

時期がくれば

成長期の子供のように元気に育つ



私のおぼつかない剪定に耐えた木々が

どのぐらい成長し花を咲かせてくれるか

狩あがった坊主頭のように寒々とした木々

近寄ってみれば胡麻ほどの小さな芽が

つまらない人間の行いを笑ってでもいるかのように

元気いっぱい枯れ枝から吹き出ていた



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