天才と凡才、兄と弟
小さい頃から人より勉強も、魔法も出来たような気がする。
最初は親の欲目だったかもしれない。
幼い頃にありがちな、勘違いだったのかもしれない。
しかし、両親に褒められた少年は、それがとても嬉しくて。もっと、もっと褒められたくて、両親がすごいという事を、出来るようになるまでやり続けた。
少年にとっては努力という程でもなかったそれ。だが、元々の魔力量の多さも相まって、次々に出来る事が増えていった。増えていってしまった。
それによってさらに褒められる少年は、嬉しくてさらに、さらにと貪欲に知識を吸収した。
もっと、もっと。
さらに、さらに。
貪欲に知識を、魔力の使い方を求めた少年は。
そうしていつしか、稀代の天才と呼ばれるようになった。
だが、そうして呼ばれるようになってある日、少年は気付いた。
それは弟に関する事だった。
少年には、三つ下の弟が居た。
少年とその弟は仲も良く、良好な関係だった。その日も、少年は弟に本を読んでやっていた。その時、少年は母親に言われたのだ。
「先生がお見えになったわ。貴方はそんな子の相手なんてしなくていいのよ。早く行きなさい」
はじめはごく小さな違和感だった。気のせいかとも思った。
だが、一度気付いてしまってからは、その違和感が段々、段々気のせいではないと強く思うようになる。
少年は優遇される。そして、弟は、少年のせいで冷遇される。
天才と凡才。
弟が特別勉強が出来ないわけではなかった。それどころか、優秀といっても過言ではない位だった。
だが、どうしても比べられてしまう。
例えば、普通六歳頃に出来るようになる魔法を三歳で出来るようになったとする。すると、弟は三歳の時にそれが出来ないと、兄は出来たのにと言われてしまう。たとえ、四歳の時に出来るようになっても駄目なのだ。兄は出来た。弟は出来なかった。そう、言われてしまうのだ。
それは少年がどれだけ大人達にやめて欲しいと頼んでも無くなる事はなかった。
少年を讃頌する一方で、弟を酷く罵倒した。
年々笑顔が減っていく弟を見て少年は――。