34 バリスタデビュー
3月初め。自転車屋台の有子さんが突然我が家にやってきた。
「高槻さんにお願いがあります。3月末から、私が勤めている障がいサービス事業所がカフェをやることになりました。店長は私です。で・・・高槻さんのお力を貸してほしいんです。」
詳しく話を聞くと、市内で障がいサービス事業を営んでいる「NPO法人ふくまる」が、就労継続支援B型事業として障がいのある人たちをスタッフにしたカフェを開設するとのことである。
有子さんの希望は2点。障がい福祉サービス事業に、長年福祉業界にいた私の援助技術を提供してほしい。そして私が長年趣味でやっているコーヒーを淹れる技術を提供してほしいということであった。
面白そうではあるのだが、私はまだ大阪府に在職しているので兼業はできない。そこで、法人の増本理事長も含めて協議。法人がやっている就労移行支援事業を利用者になるか、ボランティアスタッフになるか・・・?とりあえず後者ということで話がまとまった。
私にとっても仕事復帰に向けたリハビリにもなる。一石二鳥だ。田村次長に報告して了解を取り、週に3日程度、カフェの店頭で「バリスタ」として活動し始めた。豆を自家焙煎し、コーヒーメーカーではなくハンドドリップで提供する。その「行程」がサービスを利用する障がいのあるスタッフの就労訓練になると考えたからである。
自らコーヒーを淹れる傍らで、障がいのあるスタッフにも根気よく技術を教え込んだ。そして3名のバリスタが誕生した。
公園での偶発的な出会いが私の人生の新たな展開を生んだ。人生って本当にわからないものである。




