31 奇妙な自転車屋台
シルバーウイークのある日、妻の良子と近くの公園に出かけたら、小さな手製の屋台を積んだ自転車がホットドッグの販売をしていた。ホットドッグよりもその自転車の構造に興味があって、ちょっと冷やかしてみることにした。
ホットドックを頬張りながら女性店主と話をする。元々いろんなお店で料理人として仕事をし、結婚を機に大阪にやってきたこと。そして休日に地場産野菜を使ったホットドックの販売をしていることが語られた。名前は有子さんという。
私はホットドッグよりも、自転車の車輪が左右反対にくっついていたり、ブレーキシューが明後日の方向を向いていたり・・・全くの未整備であることが気になって仕方がなかった。
「・・・この自転車・・・どうやって公園まで乗ってきたんですか?」
私が問うと、有子さんは頭をかきながら
「まともに走らないので押してきました!」
明るくそう答えた。
そりゃそうだろう・・・というか・・・押して来るのも大変だったに違いない。
私には自転車整備の心得があること。ウチまで持ってきてくれたら整備する旨伝え、連絡先のメモを渡した。
数日後、有子さんが屋台つき自転車を押して我が家にやってきた。車輪を付け替え、ブレーキを調整し…小一時間で整備完了。自転車としても機能するようになった。
それから有子さんは、時々屋台付き自転車に乗って我が家にやってくるようになった。そして自転車整備をし、我が家のリビングで世間話をして、私が自家焙煎したコーヒーをおいしそうに飲んで・・・我が家がすっかり気に入った様子であった。
その時は・・・この1人の女性が私の行く末に深く関与してくる人物だとは夢にも思わなかった。




