30 自分の「箱」を持ちたい
精神障害者保健福祉手帳を取得したことで、復職は絶望的になったと感じた。山口所長が求めるような「完璧」に職務を遂行することは到底できないからだ。
そこで私は、これから自分が生きる術を考えた。私には仕事以外にもさまざまな趣味や特技がある。それらを生かせるような個人事業主になることはできないか・・・?
そしていろんな人に相談し、空き家を活用したコミュニティスペースを作ることを考えた。資金集めはクラウドファンディングで募ることにし、そして実際の物件も見に行ったりもした。
プロジェクトがかなり具体的になった頃、コロナウィルス感染症による不況が日本を襲った。このご時世で進めていくことはあまりにリスクが高いと判断し、ストップせざるを得なくなった。
うーん・・・とことんついていない。でも慌てることはない。きっとまたチャンスはあるだろう。
そしてこの頃、山口所長が年度末で定年退職することを知る。
「所長が変われば風向きは変わるかも・・・もう少し粘るか・・・」
そして官公庁の場合、障害者差別解消法や障害者雇用促進法に定められている、障がいのある職員に対する「合理的配慮」が「努力義務」ではなくて「義務」であることを知る。
つまるところ「完璧」でなくともよく、私の病状や障がい特性に合わせた配慮を、職場が「義務」として負うことになるのだ。
「これは・・・手帳が武器になるかもしれない。」
私は荒波にもまれ、この頃には開き直りというか、ある種の図太さを身につけていた。




