15 妻の病気
7月初旬。妻の良子が職場の人間ドックで引っかかった。左胸にしこりがあるという。大学病院での精密検査の結果、初期の乳がんであることがわかった。
私は実母をがんで亡くしている。良子も青天の霹靂で不安いっぱいの様子を浮かべていたが、私もそれに負けないくらいの不安感に苛まれた。
下手すれば共倒れ・・・生活の糧を失うかもしれない・・・
コロナ禍が世界を襲う前だったので、人間ドック~大学病院での確定診断とかなりスムーズに進み、お盆前に大学病院に入院して手術。画像診断では初期の「ステージ1」との見立てであったが、腫瘍を摘出してみると予想外に大きく、また、腫瘍を詳しく検査したところ増殖能が高いタイプであることが判明。確定診断は「ステージ2a・ルミナールBタイプ」となった。
私は妻に内緒で乳がんの資料を読み漁った。私の病気が不安感を増長させるのだ。でも良子に不安感を悟られてはいけない。苦しい日々が続いた。
良子は年明けにかけ、手術後4クールの抗がん剤治療と放射線治療を受けた。抗がん剤治療は本当に苦しそうで、できることなら変わってやりたいと思った。
良子とは再婚である。私が前妻との離婚で大いに凹んでいる時に力になってくれたのが彼女だった。万が一いなくなってしまうことなど考えられない。結婚して4年足らずでのがん宣告・・・弱り目に祟り目とはまさにこのことかと思った。
しかしながら一方で、私が休職して家にいる時期に病気がわかり、病院の付き添い等ができたのは不幸中の幸いだったのかもしれない。
もし私が中央児童相談所緊急対応課のスーパーバイザーの仕事をこなしていたとしたら・・・おそらくは山口所長のトップダウンの下で無茶苦茶な使い方をされ、良子のことを構っている余裕など皆無だっただろう。
公務員はスーパーホワイトな世界・・・それは世間様の描いた勝手な幻想である。実際は「公僕」という名の下で、労働基準法なんぞどこ吹く風・・・何でもありのブラック企業顔負けの世界である。




