11 上司との面談
ゴールデンウィーク明け。最寄り駅に山口所長と田村次長が連れ添ってやってきた。様子伺いである。一人では不安だったため妻の良子にも同席してもらい、近くの喫茶店で1時間ばかし話をした。
山口所長、妙に愛想が良い。あれやこれやで私の気持ちをほぐそうとするが・・・騙されてたまるか!過去の経験上、この人物は平気で「タヌキ」をかます。私は極めて冷静である。
田村次長からは病気休暇についての事務的な説明、そして、病気休暇が3ヶ月を超えると「休職」扱いとなり、給与や賞与が満額支給ではなくなるとの説明があった。
「高槻君。申し訳ないけれど、君を今すぐ別の所属に異動させることはどうしてもできない。ただし、体調が良くなって仕事ができる状態になったら、緊急対応課ではなく、別の場所にある他課に内部異動させることはできる。京阪電車に乗れないと聞いているけれど、そこなら少し遠いものの別の電車で通える。それでどうやろうか?」
「所長ありがとうございます。主治医の先生とも相談して前向きに考えたいと思います。」
私はそう返答した。ほどなく話は終わり、所長と次長は帰っていった。
他課で仕事という選択肢は現実的にありかもしれない。その方向での復帰を目指してみるか・・・私はそう思った。ただし地下鉄には乗らなければならない。何とか克服せねば・・・。
精神疾患で休んでいる職員に上司が会いに来るというシチュエーション・・・よくあることである。そして会うのは最寄り駅の喫茶店・・・これもよくあるパターンである。表向きは職員の負担を考えて・・・とのことであるが、私はそこに偏見が潜んでいると感じている。
偏見・・・精神疾患患者は行動範囲が制限されるという思い込みである。その後も所長次長ペアとは面談を重ねていったわけだが、「病院以外」で少し距離のある外出をしたという話をすると、決まって怪訝な顔をされた。
「病院以外」と記したのは理由がある。療養中であっても喫茶店や買い物やちょっとしたレジャーに出かけることは往々にあるし、特段制限されているわけでもない。しかし、そういう話をすると途端に表情が曇る。
療養中の過ごし方がわからないという精神疾患患者は非常に多い。休んでいることへの罪悪感と、先に記したような上司の「偏見」、そして世間の目が気になることが複雑に合わさって、どうしたら良いのかわからなくなってしまうのだ。
この点を安藤先生に問うてみたことがある。確かに反社会的行動やギャンブルには抵抗はあるけれど、自分が楽しいと思えることをどんどんやるのが良い。そうすることで回復の速度が高まるのは臨床的にも間違いないという答えをもらった。
次の章では、私の療養中の毎日の過ごし方を記してみようと思う。




