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80話--幻覚--

 モンスターの肉が食えることが分かったとしてもそれだけで食糧問題が解決するわけでは無かった。

 大量に買った米も野菜も無くなりかけており、これから訪れる冬の食料をどうしようか真剣に考える必要がありそうだ。

 

「肉だけ食って生きていける訳ではないしなぁ」

「ビタミンとかも必要だしねー……」


 付近のダンジョンを全て攻略して閉じてしまえば農業は可能になるだろう。

 そうしたとしても最低でも3カ月はかかる……。うん、私が考えるにはスケールが大きすぎる。

 確か回帰前に魔石のエネルギーを利用して植物の成長を促進させる技術があったような気もするが、それが確立したのは私が死ぬ直前とかだった。

 不確定なことを言って変に希望を持たせるのも気が引ける。今必要なことは曖昧な未来ではなく事実に基づいた具体的な案だ。

 

「じゃあ私はダンジョン潰してくるねー」

「ん、私も行く……」

「カレンは残ってて? またさっきの奴らが来るかもしれないからさ」


 ここを見張っていたものは全て破壊してしまったので来る可能性は割とある。

 カレンを置いて行けば戦いになっても何とかなるはず……。

 沙耶たちに変なことを吹き込まないかが心配ではあるが気にしていたら切りがないので目を瞑るとしよう。

 

 

 

 


 1日で周辺のダンジョンを潰してしまおうと思って攻略を始めて30箇所目で何か違和感があった。

 

「……外に、出てるよな?」


 攻略し終えた後に外に出されるはずなのだが何か変な感じがする。

 入った時と景色とかは全く一緒なのだけれど……。

 

 暫く悩んでいると木の陰から人が出て来た。

 

「お姉ちゃん、今日はもう攻略しないで戻って大丈夫だよ~」

「……そうか」


 話しかけて来たソレを――迷いなく斬り伏せる。

 両断すると血などは流れずそのままの形を保ったままくっ付いた。

 斬り心地的にスライムか何かの一種だろうか?

 

「家族の姿をしたものを何も言わずに斬るなんて……」

「形だけでしょ? 実体が伴わなければ私は騙せないよ」


 私を騙したければ匂い、魔力の波長、肌の質感、沙耶の微表情まで再現してから出直すことだね。

 そうだ、この感覚……魔界に居た時にカレンと模擬戦していた際に引っかかった幻を見せる魔法に似ている。その時よりも異様なまで幻の完成度が高い。

 

「私たちにとって貴女は脅威になりそうだからここで足止めさせてもらうよ!」

「あの時は……確か幻を見せている術者を不安定にさせて抜け出したんだっけか」


 得意げにしているカレンに指の腹をちょっと切って口の中に突っ込んで自ら吸血させることで動揺させた。

 同じ方法は使えそうにないな……。


「ねぇ、本体はどこに居るの?」

「……教えると思って聞いてるなら答えるわけないでしょ」

「ありがとう、そこに居るのは本体じゃなくって何かを通して観ているってことだね」


 見ているなら話は単純だ。

 闇竜の魔石から得た力……【闇】を魔力に乗せて剣を出す。刀身も柄も全てが光の反射すら許さない黒色の剣だ。

 斬った相手の恐怖心や不安を駆り立てるような効果……そう、精神的にネガティブになるそうだ。

 カレンで実験したが非常に嫉妬深くなって自分に自信がなくなったかのように卑下し始めて元に戻るまで1週間ぐらいかかった。メンヘラ製造剣である。

 正式名称は【黒剣】だ。

 

「何しても無駄だよ? 私は見てるだけだし~」


 どこにでも居そうな女性の姿に変わったスライムが私にそう言った。

 見ているだけ――。わざわざ魔力的な繋がりがあることを言ってくれるなんて本当に有難い。

 直接斬るよりは効果は薄れるだろうけど……。

 

「本気で、全力で――殺す」


 【竜の威圧】と一緒に魔力に【闇】を乗せて殺意を顕わにする。

 するとスライムは怯えているかのように震えだした。

 

「えっ、あっ……、そのっ……」


 わざと見える速度でゆっくりと頭に黒剣を突き立てる。

 

「次は本体(お前)だ」


 小さく息を吸うような音と共にスライムが崩壊し、私に纏わりついていた違和感が消滅した。

 ちゃんと術者まで届いたのだろう。

 私のところに来たという事は沙耶たちのいる方にも行っていると考えるべきだろう。黒剣を消して拠点の方へと駆け出した――。




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