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16話--妹とダンジョン--

 気軽にダンジョンを攻略してこようと思っていたら沙耶が行きたいと言っている。

 回帰前は自分が生き延びる事で精一杯で余裕ができた頃には沙耶と母さんは行方不明になっていた。なので今回は沙耶が望む事は何だってしてあげたい気持ちではあるが……ダンジョンに連れて行くべきなのだろうか。


「ほら、私もお姉ちゃんみたいにブワーッってすごい魔法使いたい!」


 目をキラキラとさせた沙耶が身振り手振りで私に伝えようとしている。沙耶の年頃で興味を持つなと言うのが無理な話なのだろう。

 私も覚醒してモンスターと戦えると聞いた時は胸を躍らせたものだ。


「私、魔法は使えないよ?」

「えっ? でもこの前離れた場所から岩を真っ二つにしてたじゃん!」


 誰も居ないと思ってやっていた実家での訓練を見られていたようだ。素人目では熟達した技術と魔法の区別は難しいが……沙耶の言ったのは魔法ではない。

 【神速】を使用した状況で近づいて切って戻っただけだ。

 誰かに切った岩を見つけられたら困るので砂になるまで切り刻んだのだが……まさかそれも見られていた……?


「どこから見てたの?」

「家から望遠鏡でね……へへっ……」


 手品の種明かしをするかのように胸を張って言った。実家からは充分に離れたと思ってたのだが……。

 敵意のある視線であれば気がつけたかもしれないが私に対して害をなさないものには気付けない。


「ダメ、かな……?」


 潤んだ瞳で私を見てくる。頭を掻いてため息を吐く。


「わかったよ……危なかったらすぐに引き返すからね?」

「わぁい! ありがとうお姉ちゃん!」


 いつもの数倍、感覚を研ぎ澄まして警戒しよう。

 仕方なく連れていくけれど正直な話、沙耶のスキルにも興味がある。ダンジョンに入ったら教えてもらおう。

 準備をして車に乗り込む。沙耶には無理やり買った運動着に着替えてもらった。


 霊園に着くと魔力が溢れてきているのが分かった。ゲートの方角から魔力があふれているのだろう。その方向へ数分歩くとゲートが見えた。

 辺りには誰もおらず、こっそりと攻略するにはもってこいの場所だ。

 

「これがダンジョンに入るためのゲートだよ」

「ほぇー……本当にあるんだ……」


 初々しい反応を見せる沙耶。私がゲートの中に入ろうとすると沙耶は私の袖を引っ張った。


「一緒に……」

「うん、一緒に入ろうか」


 手を繋いで一緒にゲートに入る。目を瞑って開くと眼前には緑豊かな草原が広がっていた。

 沙耶は両目を見開いて固まっている。序盤の草原のダンジョンはコボルトかスライムが出るダンジョンだった気がする。周囲の警戒をしつつ、沙耶の意識が帰ってくるまで待とう。

 剣を取り出して神経を研ぎ澄ませる。ダンジョンは魔力の濃度が外より高いため、魔力増加にも役立ってくれる。

 

「はっ!? すごいね! ここがダンジョンなんだぁ!」

「やっと帰ってきた。頭の中で能力値を確認してみて?」

「能力値……」


 口に出さなくても確認はできる。ただ、最初は呟いたり大声で唱える人が多かったなぁ。と回帰前の出来事を思い出した。

 私は口に出さない派なのでそう教えるまで……。

 

「スキルの欄に【魔法】と【祝福】って書いてあるよ!」

「【魔法】!? おめでとう、当たりだよ! 後、【祝福】……?」

「そうなの? 【祝福】は愛の神? からの祝福を受けた者。って書いてある」


 ……愛の神? どこかで聞いたことのあるような……。

 ――思い出した。私が沙耶と風呂に入って全身くまなく洗われたときに出てきた青い画面の神だ。

 よく見ていなかったが、スキル欄を見ると私にも【祝福】があった。

 

『愛の神が貴女たちに向けて親指を立てていますb』


 思わず青い画面に向かって抜剣した……が、切れることはなくそのまま剣は素通りする。

 これ以上構っても時間の無駄なので沙耶の装備を渡そう。

 

「沙耶。これと、コレ。使ってみて」

「杖と……本?」


 アイテム袋に入っている古代竜骨の杖と前回のダンジョンで手に入れた【炎球】の本を渡す。

 沙耶が本に触れると本が光り、中から光り輝く文字が浮き出てくる。沙耶の周りを取り巻くように文字は動いて一際大きく光った後、沙耶の胸の中心に入った。

 

「えっ!? えっ……?」

「習得完了だよ。杖を持ってあっちの方へ【炎球】って唱えてごらん」

「うん……【炎球】」


 唱えると私と同じぐらいの大きさの炎の球が生成されて勢いよく飛んでいった。

 杖の効果もあるだろうけど、初めての技能にしては強すぎない……?

 【炎球】はプロ野球選手顔負けの速さで着弾した後、火柱が30mぐらいまで上がった。

 

「お姉ちゃん……私、魔法使いになったの!?」

「そう、だね。この技は狭いところでは使っちゃダメだからね……?」


 はしゃぐ沙耶に一応言っておく。この威力の【炎球】を洞窟内で使われたら一瞬で炭になってしまう。

 沙耶のために他の技能書も見つけないとなぁ。当面はこっそりとダンジョンを攻略して、国が覚醒する方法を世間に公表したら大々的に動くとしよう。

 それまでに洞窟や屋内のダンジョンに当たったら沙耶には悪いけど杖で直接殴ってモンスターを倒してもらおう……。

愛の神が二人を祝福をしたのは6話です。

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