横から失礼
本部に入って、ソラは一度オーガに襲われた。
それを難なく退けるも、短剣だと生命力を削りきるのに少々時間がかかってしまった。
「攻撃力が高い長剣あたりをメイン武器にしておくべきだったかな……」
ソラは軽くため息を吐いた。
ないものねだりをしても仕方がない。
今は一分一秒を争う事態だ。
戦闘は時間がかかるのでなるべく控えたい。
とはいえ、放置すれば人的被害を抑えられないのが頭痛の種だ。
「出来るだけ火力を上げるか」
ステータスポイントがない今、火力を上げるにはアビリティを付け替える他ない。
ソラはステータスボードを取り出した。
名前:天水 ソラ
Lv:55 ランク:C→B
SP:0 職業:シャドウルーラー
STR:120→142 VIT:120
AGI:124→146 MAG:0 SEN:105
アビリティ:【上級二刀流術】【弱点看破】【危機察知】【弱体攻撃】【一撃必殺】【STR強化】【AGI強化】+
スキル:【完全ドロップ】【限界突破】【インベントリ】【隠密】【気配察知】【生命吸収】
装備(効果):ベガルタ、ライフブレイカー、獣皇の胸当て(火炎耐性)、亡者のローブ、蟻甲の小手、オークキングの戦闘靴(加速補正)、疾風の腕輪(AGI+30)、湖水のネックレス(VIT+30)、鬼蜘蛛の憤怒(STR+30)、骸骨兵のイヤーカフ(SEN+30)
「おっ、ランクが上がった」
ソラのランクが、先ほどの戦闘で上がったようだ。
このままレベルを上げれば、SPも増えて基礎ステータスを上げられる。
【成長加速】を入れたい。
だがレベリングしている時間がない。
ソラは【成長加速】を諦めて、別のアビリティを装着した。
「強化系アビリティの効果がすごいな」
ステータスが100を超えたため、強化系アビリティで増加するステータスが大幅に上昇した。
最初に想像した通り、20%アップはかなりのものだ。
一通りチェックを終えて、ソラは【気配察知】を最大にする。
魔物の位置、人間の位置が手に取るように把握出来る。
ほとんどの者が様々な場所に身を隠している。
中にはオーガに立ち向かっている者が数名いるが、それは討伐というより足止めに近い戦い方だった。
その他には約一名、恐るべき速度でオーガを討伐している者がいた。
それは以前、ここを訪れた時にも感じた、強い気配の一人だ。
彼(あるいは彼女)ならば、一人でも問題なくオーガを倒せるだろう。恐ろしく力強いマナの奔流を感じた。
「あっちは、放っておいても大丈夫だな。隠れてる人も、すぐには見付からなさそうだ。となると、まずは戦ってる方をアシストするか」
ソラは急ぎ、戦闘中の気配の下へと向かった。
○
「なんで冒険者協会で、オーガになんて出くわすんだよッ!!」
「ここは安全じゃないのか!?」
「知らないわよ!」
「頼む、バフくれ!!」
冒険者協会の中で、突如〝漆黒の牙〟はオーガに襲われた。
即座に反応したが、相手はBランク上位の魔物だ。簡単に倒せる相手ではない。
また、準備が万全ではないことが祟り、防戦一方に追い込まれてしまった。
「くそっ、こんな奴、ダンジョンの中ならなんてことねぇのによ!」
「文句言ってないでちゃんと抑え込んでよ。魔法当たらないじゃない!」
「わかってるっての! こいつ、力が強すぎて簡単に抑えこめねぇんだっての!」
普段なら硬い鎧を使って抑え込むのだが、いまはその鎧がない。
防具を着けていないことで、盾士の戦い方がかなり制限されてしまっている。
漆黒の牙は、ほとんどのメンバーがBランクということもあり、戦闘にはかなりの自信があった。
それを、オーガに打ち砕かれつつあった。
「う、後ろから何か来る!」
「嘘だろ!?」
「対応してくれ!」
「無理だっての。オーガで手一杯だっての!」
盾士が悲鳴を上げた。
これは非常にまずい。
リーダーは全体を把握しながら、どう優先順位を付けるか逡巡した。
目の前のオーガに全力を注がないと、アッという間に崩れてしまう。
かといって後ろからの気配を放置出来ない。
(どうする!?)
リーダーが、判断を迷った。
その時、
「あっ、やべ――」
盾士が力任せに殴り飛ばされた。
陣形が崩れ、パーティの急所が露わになる。
――全滅。
リーダーの脳裡に、その二文字が浮かんだ。
(これは、死んだな……)
諦めかけた、その刹那。
「横から失礼。助力します」
突如黒い塊が戦場に飛び込んだ。
その黒い塊が、短めの赤い剣を一振りした。
「外れか」
黒い外套を身に纏った男が、そう小さく呟いた。
外れ?
言葉の意味が分からず、首を傾げた。次の瞬間だった。
コトリ。
オーガの首が落下した。
オーガの首から血が噴き上がる。
むっとする程の臭気が一瞬にして廊下に充満した。
「「「――ッ!?」」」
その光景に、メンバー一同が息を飲んだ。
(いったいいつの間に?)




