違和感
レベリングを終えたソラは、自室のベッドに倒れ込んだ。
時々ボス戦を交えながら、ソラは着実にレベルを上げていった。
一日レベル1アップを目標にして一週間。
ソラはやっと、レベル50に到達したのだった。
名前:天水 ソラ
Lv:44→50 ランク:C
SP:0→30 職業:上級アサシン
STR:100 VIT:100
AGI:120 MAG:0 SEN:94
アビリティ:【成長加速】【上級二刀流術】【弱点看破】【危機察知】+
スキル:【完全ドロップ】【限界突破】【インベントリ】【隠密】【気配察知】
装備(効果):ベガルタ、ライフブレイカー、獣皇の胸当て(火炎耐性)、亡者のローブ、蟻甲の小手、オークキングの戦闘靴(加速補正)、疾風の腕輪(AGI+30)、湖水のネックレス(VIT+30)、鬼蜘蛛の憤怒(STR+30)、骸骨兵のイヤーカフ(SEN+30)
名称:蟻甲の小手 ランク:R
防御力:+43 精錬度:6
装備条件:VIT70
説明:エリートアントマザーの腕を切り落とし、乾燥させた小手。硬いながらも、衝撃を受け流す柔軟性もある。
名称:オークキングの戦闘靴 ランク:R
防御力:+32 精錬度:6
装備条件:AGI70
説明:オークキングが用いた戦闘靴。しなやかな材質ながらも、地面を捉えるグリップ力が強い。加速時に、一定の補正が加わる。
ボスのドロップにも恵まれて、ずっとEランクのままだった防具も世代交代することが出来た。
これで、弱点がなくなった。
あとはひたすら、Bランクを目指すだけで良い。
ソラはがばっと上体を起こし、インベントリを操作する。
「さて、と。レベル50になったし、転職するか!」
待ちに待った時間がやってきた。
このために、一週間頑張ったといえる。
ソラはインベントリから、上級覚醒の宝玉を取り出した。
現在のステータスは、AGI先行型だ。
なのでソラは、アサシンの上位職に就くのではないかと予想している。
「アサシンの上級職って、なんだろう?」
それらしい職業が思い浮かばない。
まさか『特級アサシン』ということはない、と信じたい。
「……まあ、いっか。使えば分かることだ」
ソラは宝玉を握りしめ、念じる。
すると、宝玉が派手に砕け散る。
その破片が、ぐるぐると周囲を回り、ソラの中へと吸収されていく。
全ての欠片が消えたのを確認し、ソラはわくわくしながら、素早くステータスボードを開いた。
○
冒険者協会から出た後、碓氷は極度の疲労感によりその場に座り込みそうになった。
理事からのプレッシャーは、想像していた以上のものだった。
あれは、一介の冒険者なんかが太刀打ち出来る相手ではない。
「リーダー、どうすんのよ……。約束破っちゃったけど」
「あ、ああ、どうしようか」
メンバーに言われて、碓氷は頭を抱えた。
プレッシャーに負けた碓氷は、春日理事に真実を打ち明けてしまった。
なんて馬鹿なことをと、今更ながらに後悔している。
だがあのときは、理事という巨大な力の前に、抵抗さえ出来なかった。
まるで、全てを見透かした上で踏み絵を迫られている気分だった。
天水に付くか、春日に付くか選べ、と。
碓氷はプレッシャーに負け、真実を洗いざらい話してしまった。
幸い、それについて春日は一切咎めなかった。
また、天水が秘匿してくれと申し出たことにも、一定の理解を示してくれた。
それもそのはず。
天水は日本の法律や冒険者協会の規律を破ったわけではない。
彼はなにも悪いことはしていない。
だから春日も、それ以上なにも言わなかったのだろう。
「一応、全力で謝ってみるか」
「天水さん、許してくれればいいんだけど」
「あの理事に自白させられたんだ。少しは理解してくれるさ」
肩を落としながら、とぼとぼと歩く。
なにもしていないのに、皆、ヘトヘトだった。
これからダンジョンに向かって、狩りをする気にはとてもなれそうにない。
自然とパーティの足は、馴染みの居酒屋へと向かっていたのだった。
協会を出た『炎陽の剣』の姿を見送って、春日渉は協会のデータベースを開いた。
そこには、これまで登録した冒険者の個人情報が収められている。
その中から、ある男の情報を引き出した。
「天水ソラ……ね」
それは、『炎陽の剣』を救いにダンジョンへ入り、一人でBランクのボスを討伐してしまった冒険者だった。
情報を見ると、彼はこれまで二年ほどFランクで停滞していた。だがつい最近、能力がDランクに更新されていた。
それを見て、春日は眉根を寄せた。
「D……? 妙だな」




