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変異ダンジョンへ

「そうらしい。一応冒険者協会にも報告が上がってて、例外的に他の冒険者の侵入が許可されてるみたいだが……」

「それで別パーティも遭難、か」

「ああ。まあ、Dランクだからスタンピードしてからでも対応出来るんだろうけどな」

「あー、だから高ランク冒険者は静観してるのか。中に入るよりこっちで迎え撃つ方が安全だもんな」

「そういうこと」


 ホットドッグを食べ終えて、紙くずをゴミ箱へと放り投げる。

 ポケットからスマホを取り出し、ソラは冒険者協会のHPを閲覧する。


(……ほんとだ。例外認定が出てる)


 HPトップにあるトピックに、緊急マークが付いた項目がある。

 そこに、件のダンジョン情報が掲載されていた。


 内容は、あの冒険者たちが言っていたこととほとんど同じだ。


 攻略権を持った冒険者が未帰還であること。

 ダンジョンが発生してからもうすぐ一週間が経つこと。

 そのためスタンピードしそうであること。

 冒険者協会の指名で、とあるパーティが救援に向かったが、二日経っても帰還しないこと。


 これらの理由により、冒険者協会は例外的に、ダンジョン攻略権を失効させた。

 いまは、誰でもテンポラリーダンジョンを攻略出来る。


 しかし、いまのところ誰も手を挙げていない。

 何故か?


「状況が状況だしな……」


 2パーティが未帰還なのだ。

 自分も帰れなくなる可能性があると思うと、二の足を踏む。


 何があるかわからないダンジョンに入って逃れられなくなるよりも、あえてスタンピードさせて外で迎え撃つ方が、何倍も安全なのだ。


「もうすぐスタンピード、か……」


 ソラはそう呟いて、ベンチから立ち上がった。



          ○



 ソラが訪れたのは、とある建物の一角。

 建物の回りは既に、警察と冒険者協会の職員によって封鎖されている。

 その様子を、多くの一般人や冒険者が遠巻きに眺めていた。


 その中には、ソラよりも強い気配を持つ者が複数存在している。


(いまスタンピードしても大丈夫そうだな)


 もしこのテンポラリーダンジョンが、本当にDランクなのだとしたら、鎮圧するための武力に問題はなさそうだ。

 万が一AランクやBランクのダンジョンだとしたら、かなりの被害が出るだろう。

 ただ、その心配は無用だ。


 ソラの目の前にあるゲートからは、薄らマナが流れ出している。

 その強さは、決してAやBとは思えない。

 良くてCランクといったところだ。

 一般人に被害は出るだろうが、押さえ込めないほどではないはずだ。


【隠密】で姿を隠しながら、ソラはゲートに近づいていく。


 はじめ、ソラはこのダンジョンに興味はなかった。

 自分が入って、もし危険な目に遭っても、逃げられるかどうかがわからないからだ。


 だが、『もうすぐスタンピードする』可能性があるとわかり、考えを変えた。

 もし自分の力でどうにもならなかったら、AGIを上げて逃げればいい。


 中に入ったが最後、ゲートを通れなくなったとしても、問題ない。

 スタンピードすれば、内と外が否応なく繋がるからだ。


(もし変異ダンジョンだったら、さらに良い武具が出るかもしれない)


 これまで、ソラが攻略した変異ダンジョンのボスからは、そのランクに見合わぬ強い武具がドロップした。

 通常のテンポラリーダンジョンのものよりも、一回り強い武具だ。


 今回、2パーティが遭難した場所は、変異ダンジョンである可能性が高い。

 折角権利を持っていなくても攻略出来るのだ。このダンジョンのドロップを、狙わない手はない。


【気配察知】で冒険者たちをそっと窺う。

 特に高ランク冒険者の視線がゲートに向かっていないのを確かめてから、ソラは急ぎダンジョンへと突入した。



          ○


「……なんだここは?」


 ダンジョンに入ったソラが、ぽかんと口を開けた。


 ソラはダンジョンに入った。

 ゲートをくぐって、視界が開けたところ、目の前には平原が広がっていた。


 驚きのあまり、【隠密】が解けそうになったのを、危ういところで食い止めた。


 いままで攻略してきたダンジョンとはまるで見た目が違う。

 一瞬、自分は夢を見ているのかと思った程だった。


 だが、魔物の気配を感じる。

 ここは間違いない。ダンジョンの中だ。


 魔物の気配は全体的に、Dランクの平均よりも上だ。

 下手をすれば、Cランクに相当する可能性がある。


(相当強い個体がいるな)


 中でも一体、変異ダンジョンで出現したリッチーを超える気配があった。

 おそらくそれが、ここのボスだ。


 じと、と冷たい汗が流れ落ちる。


 このままぶつかれば、ただでは済まないだろう


(逃げるべきか……?)


 考えながら、ソラは退路を確認する。

 その時だった。


「え、あれっ!?」


 後ろを振り返ったが、出入り口であるゲートがなかったのだった。

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