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思いのままに書き連ねた短編集  作者: けゆの民
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救いようのある廃棄物

 

 うるさい。

わかってる。

知ってるって言ってるだろうが。

何度も言わせるな。


 負の想いが凝縮し、今日もまた世界の淀みが積み重なる。


 度重なる期待と、親切と、そんな表面上の好意にまみれた仮初めの言葉が私を貫いてくる。


 希望だとか、将来だとか、未来だとか。

そんな薄っぺらい言葉ばっかり振りかざして、私に何が言いたいの?

その言葉の刃だけで、私は十分に傷だらけなんだよ。

 漠然とした不安なんかじゃない、それこそ確固たる不安と暗雲が私の先には拡がっている。

唯でさえ不安定な世の中だ、明日全てがひっくり返っても何もおかしくないし、例え私がいなくなったって、誰もおかしいとは思わないだろう。


 人間なんていう究極的にはエゴの塊みたいな存在は、いつもいつもいつもっ、自分のことしか考えないっ!

 綺麗な言葉というのは概して、他人からよくみられるための仮面以上の意味なく、その全てが最終的には自分という世界の中心に戻ってくるようにしている。

 どこまでも狡猾で、悪辣で、不平等で。

そんないつまでも醒めない夢を見ている奴らが本当に嫌いだ。

なんでそんな奴らに私が合わせなきゃいけない?


 あ?お前こそ自己中心的だろって?

んなことはわかってるんだよ、別に自己中心的な奴が自己中心的さを指摘しちゃいけない決まりがあるわけでもない。

それが罷り通るなら、間違いを指摘出来る存在は実在すら不確かな神だけになるが?


 はっ、その程度で言い負かせられる「うわべ」ならいつか破綻すんだ、今この場で壊れといたほうがお前のためになるんじゃない?


 じゃあな、慈愛の化けの皮を被ったエゴイストさん。


……ったく、いつまでも人類はクソだな。


あ?で、てめぇは誰だ?

口調が変わってる?

んなことはどうでもいいだろうが、自己紹介が大事だろ?

それが初対面の礼儀ってやつだ。


はん、なるほど。

よろしくな、エゴイストのエゴイストさんよ。



「つまんないですね……」


 そうは呟いて見るものの、実際とは僅かにズレがあります。

その感情を正確に評価するならば、「不愉快」と評するこになると思います。


 楽しめるコンテンツというのは人生において当然必要なものであり、そのために尽力するのは何ら悪いことではありません……ありません、が。


それにしても「不愉快」です。

やはり、この情報奴隷型世界では人の欠点を、揚げ足を取るのが平常化し過ぎています。


確かにそれは重要なことであり、間違えられない問題なのかもしれません。

しかし、それを指摘するという名目でその人を……ましてやその人の人格を否定する、ということはあってはならないと思います。

そっと教えてあげる…そんな簡単で当たり前で、誰も傷付かない方法がどうして取れないのでしょうか?


そういえば、昔「当たり前のことを出来る人は少ない」とよく言われていましたね……

そういうことなのでしょうか?


……その原因は何処にあるのでしょう。

「当たり前」というものの定義に問題があるのでしょうか?

それとも、それを実行するはずの人間側に問題があるのでしょうか?


 「当たり前」の定義が前と変わった……ということはありません。

前とその内容自体は変わったとしても、その根本は一切変化していません。


「違います、違います」


そうやって私は他者に押し付けてばかりです。

ここで思考の海から汲み上げたその空論を、身勝手に適応しようとしているだけです。

 そしてこうやって「そんな高度なこと」に気付いた私に酔っているだけです。

今こうして脳内で綴られている思考の断片……その「気付きに酔っている事」に気付く事すらも自分が他の人とは違う「優秀」な人だということを示したいだけです。


 まあ、簡単に言えば私は救いようのない愚か者だということですね。



「つまんないですね……」


 私は今、情報媒体を通じて様々な観点からの毒を仕入れています。

勿論ここでの毒、というのは本物の毒……ヒ素やリンではありません。

暗喩としての毒……即ち世間を壊し得る情報の「毒」です。

 集めている理由ですが……まあそんな深い意味はありませんよ。

社会に出てからこういうデマに踊らされないように今の内に慣れておくためです。


 ほら、とても合理的だとは思いませんか?

こうした趣味や嗜好と捉えられるこの時間を私自身の将来のために使っているのです。

流石にこの年代から趣味もなく一目散に将来のことだけを考えていたらそれはそれで疑われますからね。

下手をするとその行動が何か面倒事を引き起こしてしまうかもしれません。

それを避けるためにも、そして私自身の未来のためにもなる最適な行動です。


……何で誰かに話しかけているような口調になっているか、ですか?

気付かない内に私も情報に呑まれて……大衆に呑まれてしまったのかもしれませんね。


流石にそれは困るので元に戻しますか。



戻るってったって、そのキモチわりぃ一人芝居は変わらねぇんだろ?

なら別にヘドロがヘドロになろうとしてるだけだから変わらねぇよ。


ほら、酔ってないでどっか行きな。


 はぁ……なんでここには私みたいなゴミしか来ねぇんだよ。

少しはまともな奴が来たっていいじゃねぇか。


……ん?でてめぇはどっちだ?


私みたいなゴミか、それとも────






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