転生女神候補の凡人
私は死んだ。
私は何の罪もない平凡な一般市民だった筈なんだけど不慮の事故で死んだ。
えっ?その不慮の事故って何って?
それはとある5000年前の夏と冬の境目の時、私は佳境に立たされていた。
そう、食費が足りない。
佳境って呼ぶほどのことじゃない?何を言う!
人間の三大欲求といえば食欲、睡眠欲、そして睡眠欲だ。その内の一つでもある食欲を満たせなくなる可能性が存在するなんてまさに佳境ではないか。
話を戻して当時の私は困窮して、飢餓に苦しみ本当に辛かった。
1日に3食しか食べれず、その食事もカップ麺とお菓子、そして飲み物しかなかったのだ。
そんなことはさておき私はしんでしまった。
まあ直接の死因はイヤホンなのだが。
「おお、しんでしまうとは、なさけない」
どこからか声が聞こえるので私も答える。
「なんと、しんでしまうとは、チートをふよしててんせいさせなければ」
「あ、ここで言うチートはよく小説で話題になるような鑑定や無限インベントリ、それに取得経験値増加に不老不死。但し自分の意志で死ねるやつ。それで後は初期レベルの増加と簡単に元の世界に帰れる門的な物の作成技能、それと世話してくれる…」
「おお、しんでしまうとは、なさけない」
「…それと世話してくれるメイドさん的なポジションの人を…」
「おお、しんでしまうとは、なさけない」
やばい。このNPC、話が全く通じない。
世界には転生させようとしてくれる神様の話を聞かずに喚き散らす人もいるっていうのに…私は真面目に考えて自分の利益が最大限になるようにしているだけ。
「おお、しんでしまうとは、なさけない」
さて、何をしても返答が来ないならしょうがない。
目の前にいる暫定神が持ってる杖を拝借、それと羽織ってる上着らしき物も少し拝借。
だいじょーふ、だいじょーふ。ここに戻ってきたら返すから。
そういいながら私は神の服を剥ぎ取る。
うん、これで準備万端。
「転生用意はよ」
「おお、しんでしまうとは、なさけない」
…もしかして転生じゃない?
まあいっか。
うん?
神様の服に着替えると何やら目の前に表示が浮かびあがる。
《☆あなたは転生担当の女神に選ばれました!☆》
え?これ転生させられるんじゃなくて転生させる側?
とりあえずそこに全裸で転がってるNPCを神の力でインベントリに収納する。
すっきりした。
さてどうしたものか。転生担当の神?そもそも私は人間だし、人間(笑)みたいに実はつよつよだったり人間(擬態)みたいなこともない一般雑踏汎用的人類。
そんな一般雑踏汎用的量産型人類に何を望むのか。
そんな事を悩みながら神の力でカップ麺をつくる。
なんと!神の力を使うことでカップ麺を瞬間的に作成できるのだ!
あぁ~おいしい。やっぱりカップ麺こそ至高の食品だわ。
そうして壮大かつ偉大なるカップ麺様の事を熟考していると目の前に人が現れる。
「こ、ここは!?…も、もしかして転せ──」
手元に出した表示から蛆虫への転生を選択。
ついでに神の力でこの謎空間ごとリフレッシュ。
さて──
《☆転生者に適切な転生先を選択出来なかったため神格ダウン!☆》
まじ?
そういうわけで私の転生女神生活は始まった。
目指すは至高の中でも至高とされる至高のカップ麺を無限に創造すること!
そのためには後神格が11足りないらしい。
一人で11人転生させれば行けるか?
あ、次の生け贄…じゃなかった。犠牲者が来た。
「こ、ここは──」
「ここは現世と幽世の境目、訶都封空間」
「貴方の未来を提示しましょう」
そう言って私は目の前の一般人に表示を出す。
◇◇◇◇◇
高魔法才能所持の農家
類い稀なる剣の才能を持つ銀行員
◇◇◇◇◇
さてとっちを選ぶ?
ちなみにどっちを選んでもその転生先の世界には魔法もなければ戦争もない。
「の、農家でお願いします!」
頼まれちゃあ仕方ない。
というわけで農家を選択する。
魔法陣に包まれ名前もしらない男が消え…
《☆転生者に適切な転生先を選択したため神格がアップ!☆》
ちょっろ。
《☆不敬罪で神格がダウン!☆》
あ。
◇
それから私は創造神(仮称)の敬虔な信者になり平和に転生させていた。
「こ、」
「どうぞ」
◇◇◇◇◇
カップ麺を神レベルに上手く作れる麺職人
ヤドカリとヒグマを家に飼うピエロ
◇◇◇◇◇
「カッ…」
ポチっと。
魔法陣が──以下略。
それにしても最近は神格とやらが上がらない。
後1だというのにその1が上がらない。
どうしようか、今のままでも数日かければ1ぐらいはあがると思う。
でも私は今すぐトリプル至高カップ麺を無限生産したい。
そうだ。人を持ってこよう。
神格が5上がった時点で現世を見てある程度干渉できる様になった。
ちょっとトラックを操作して…ドン!!
よっしゃあ!人材確保!
神力を引き出してそれっぽいオーラを出す。
「貴方は私達、神の手違いで死んでしまいました」




