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こんなにかわいい女子高生なのに、どうして魔王って呼ばれるの?  作者: 牛一/冬星明
第1章『大魔人、現る』
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6.コンバージョン<転職>。

元団長のベルントさんとの戦いが終わると、そのまま転職のコンバージョンが行われた。

私は胸に手を当ててベルントさんの前で跪き、ベルントさんが手を翳すと呪文のような、宣言のような言葉を吐いた。


『我が祈りを聞き遂げよ。この者に戦士の称号をコンバージョン』


ベルントさんの手が溢れた光が私を包む。

光が消えると体が重く感じた。


「試しに愛剣を持ってみろ!」


そう言われてタイタンソードに手を掛ける。


えっ、滅茶重い。


「ははは、自分のステータスを見て見ろ!」


滅茶苦茶下がっていた。


戦士職のステータスがオール1ですよ。


「スキルは残るが、ステータスが移譲されない。それゆえに初期職業が屑職業と呼ばれる所以だ」

「もしかして、消えたんですか?」

「大丈夫、職業選択蘭を開示してみろ!」


おぉ、あった。


「最初はファーストジョブを町娘に合わせ、セカンドジョブで戦士職など成長させるといいぞ」


ベルントさんは色々と職業について説明してくれると、練習場の端で見ていたギルド長に呼ばれた。


職業、中々に奥が深い。


 ◇◇◇


ギルド長のハンスがベルントさんに掛けた言葉は罵倒であった。


「副ギルド長、あんな小娘に手加減したのではありまいな」

「手加減どころか、手加減されていましたよ」

「そんな馬鹿な! スキルもない屑職業だぞ。レベルはともかく、ステータスのトータルは副ギルド長の方が高いだろう」

「ステータス以前に実力に劣っております。あれはAクラス、Sクラスのハンターに匹敵する化け物です」

「誠か!? 平原の魔物を退治していたという絵空事ではないのか?」

「事実でしょう」

「信じられん。あんな小娘に」

「事実です」

「防具する身に付けていない奴に!」

「当たらなければ、何の問題もありません」

「あり得ん。あり得ん。儂は信じぬぞ」


それでもギルド長はベルントさんに喰って掛かる。


ギルト長は頑なに拒絶する。


「よろしいでしょうか」

「ジルか、何だ」

「これ以上、ギルドの活動を停止しておりますと、様々な方面で支障が出てきます。そのことも踏まえて、領主様に裁定を頂いては如何ですか?」

「それしかないか」

「待て、待て、儂が無能のように報告されるではないか?」

「ギルド長、問題ありません。ギルド長の申す通り、あの娘が偽りであったなら問題はありません。領主様も彼女の能力が疑わしと同意するでしょう。すべての責任は副ギルド長となります。しかもギルドを再開しないのは領主の意思ということで様々の方面からの苦情も凌げます。まさに一手両得の策となるでしょう」


一見、正論に思えるが、領主が副ギルド長の採決を取ったならギルド長は無能と烙印を押される。それはもう立身出世を諦めろと言われるのと等しい。


ジルの笑顔が恐ろしかった。


没落貴族の娘と言っても高い礼儀作法を持っており、その美しい美貌からいつ領主の子息から婚姻を受けてもおかしくない。


「どうかされました」


その教養から領主の娘のお茶会に誘われることもある。

このことがジルの口から領主に伝わることが恐ろしい。

その笑顔が悪魔の微笑に思えてならない。


「ぐぐぐぅ、判った。現時点で特別調査を完了とする。草原は平常化したとする。しかし、周辺には強い魔物がいるので、十分に注意するように勧告を出しておけ」

「了解しました」


ジルさんがみんなに向かってVサインを送った。


うおおおおおぉぉぉ、冒険者に歓喜が沸いた。


「解禁だ」

「稼ぐぞ」

「塩スープとおさらばだ」

「すぐにクエストの発注票を張り出します」


受付嬢のジルの声が響いた。


 ◇◇◇


私はジョブの選択に付いてソフィアとロドリスから教わってから受付に向かった。


すぐに向かわなかったのはジルからのお願いだ。


1ヶ月以上も城外のクエストが止まっており、みんな生活がカツカツであり、ハイエナが群がるようにクエストを奪い合ってギルド支部から飛び出していった。


ギルドの職員も大忙しだった。


そんな中で時間の掛かる新人登録の説明を疎かにしなくなかったのだろう。


今は騒ぎが嘘のように静かになっていた。


「お待たせいたしました。お嬢さんの冒険ギルド加盟書を発行いたします」


冒険ギルドのランクはA~Jの10段階あり、私は特別枠の3階級特進でH級冒険者として登録された。


「お名前を教えて頂けますか?」

「佐々木 忍」

「貴族の方ですか?」

「いいえ」

「貴族以外は姓を持つ事が許されません。ササキ様か、シノブ様のどちらにしますか、それともササキシノブ様になされますか」

「忍のいいよ」

「では、この水晶に手を立てて下さい」


水晶から光が出てギルドカードに記述されてゆく。


「このカードは冒険ギルド加盟書となります。大切にして下さい」


カードには名前と年齢と所属ギルドしか書いていない。


ICチップのようなモノが入っており、ギルドに持ち込んだ討伐記録などが記載されてゆく。ギルドなどに持ってゆくと特殊なボードで確認できるようになっているらしい。


ギルドの規定などを丁寧に教えてくれた。


「次にランツさん、ギルドからの特別依頼達成おめでとうございます。賞金の金貨1,000枚とギルド貢献ポイント1,000が贈呈されます。5人ですから、均等に200ずつでよろしいでしょうか?」

「忍の協力があって達成できたので6で割って欲しい」

「つまり、シノブ様もパーティ『鮮血の誓い』の一員ということでよろしいでしょうか?」

「あぁ、そうしてくれ」

「悪いわよ」

「俺達の気持ちだ。受け取って欲しい」

「私は」

「頼むす。助けられたお礼もあるす」

「判った。ありがたく頂くわ」


私達はギルドカードの提示を求められた。

賞金はギルドカードの預金に充填され、必要な分だけギルドから換金できる。

収入の少ない冒険者は全額換金するのが常らしい。


「シノブ様、ギルドの貢献ポイントが100に達しましたので、H級からG級に変更してあります。あと1つで見習い冒険者から冒険者に登録チェンジされます」

「どう違いの?」

「見習い冒険者カードはこのギルドでしか使えませんが、冒険者カードに変わると全国の冒険者ギルドで使えるようになります」

「で、具体的にはどうすれば、貢献ポイントが貰えるの!」

「先ほども話ましたが単純にクエストを熟すか、薬草や魔物素材を納品するとポイントが加算されます」

「以前に討伐した奴でも?」

「問題ありません」

「あります。魔物の死骸なら一杯あります」


あとで魔物の素材を使って、武器や鎧や服で器具でも作ってみるつもりだった。

でも、ちょっと多すぎた。


「沢山ですか」

「はい」


AIちゃん、何体ある?


“1761体です”


その数を聞いて、ジルさんと『鮮血の誓い』も驚いた。


でも、本当に驚いたのは解体倉庫に行ってからだ。


「なんじゃこりゃ!」


ホーンラビットから災害級の魔物まで、出るわ、出るわ!


「魔法鞄をありったけ持ってこい」


解体工場長が叫んだ。


収納魔法以外にも、収納鞄もあるらしい。


ホント、異世界だ。


「嘘ぉ、超災害級よ」

「ディーンドラゴンまでいやがるす」


ティラノサウルス(ディーンドラゴン)の魔物は恐竜種であって龍種じゃない。

龍種を倒すと、龍討伐ドラゴンバスターの称号が貰えるらしい。


でも、恐竜種では貰えない。


どう違うんだろう?


受付に戻るとジルさんが私からカードを受け取ると冷静に言った。


「シノブ様にはキルド貢献ポイントが176加算されます」

「ちょっと待ってす。ディーンドラゴンを納品しても、貢献ポイントは0.1すか?」

「通常依頼でも30ポイント、特別依頼なら100ポイント以上が加算されますが、通常の持ち込みの場合は、どれも0.1になります」

「でも、それっておかしくない」

「これは色々な理由がありますが、討伐に比べて、町の清掃や薬草取りでも0.1は非常に高い貢献度になります。しかし、生活クエストの対象を低くすると、誰も生活クエストを引き受けて、冒険者を目指すモノはいなくなります。冒険者を育成する為の処置です」

「でも、低すぎない?」

「私もそう思いますが、そもそも通常持ち込みで、災害クラスの魔物を持ち込む人がいるなんて考えません」


ごもっとです。


というか、別にどうでもよかった。


換金してくれるというんだから、それで十分だ。


査定が済むまで何とも言えないそうだが、数十万金貨は固いそうだ。


「ここだけの話ですよ」

「はい」

「大陸のオークションに持っていけば、もっと高値で売れます」


ジルさんは元々大陸の貴族出身だったらしく、その辺のことに詳しい。

ジルさんの見立てで引取り売値は100万金貨を超えると言う。

その内の半分が領税に取られる。


滅茶苦茶暴利だ!


魔法鞄など高価な道具を使っているので輸送費に1~2割が掛かり、残りの利益の半分が冒険者育成費の名目で冒険ギルドが搾取する。


結局、冒険者には20~50万金貨程度に落ち着くとジルさんは予想する。


幅が酷い!


私のカードに送金されるのは早くても3ヶ月くらい先だそうだ。


「四分の一ですか」

「暴利っす」

「普通のモノはこの町で消費しますから、そんな暴利を取っていません」

「要するに、この町で捌けないものが対象ってことね!」

「はい、大陸のオークションに持っていけば、10倍の値が付くこともあります。ギルド職員の私が言うことではありませんが、超災害級以上はご自分で大陸都市に持ち込まれる方が得となります。もちろん、無限収納庫をお持ちのあなたなら、という条件が付きますが」


普通の人は1つ1万金貨もする大型の魔法鞄を用意しなければ、大型の魔物を輸送することはできない。自分で大陸に運んだ方が得と判っていても、冒険ギルドを頼らずに輸送も困難であった。


でも、私は無限収納庫を持っているので、着の身着のままで大陸までいける。


途中の関所で関税や監査などの煩わしい手続きも躱してゆける。


要するに、アイテムボックスに入る程度のモノは見逃してくれる訳だ。


そもそも確かめる術がない。


ジルさん、中々に親切な受付嬢だった。


「別にいいよ。金が欲しい訳じゃないし」


なんですか、その意外そうな顔は?


私は176ポイントが加算されて、2階級上のE級になった。


「以前の白いカードは回収させて頂き、今後、こちらの赤いカードをご使用下さい」


短い付き合いだったな、白いカード!


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