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こんなにかわいい女子高生なのに、どうして魔王って呼ばれるの?  作者: 牛一/冬星明
第1章『大魔人、現る』
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5.剣士じゃないけど無敵だよ。

ガン、ガン、ガン!

長さ2mを超える二つの巨大剣がぶつかって火花を散らす。


振り降ろされるバスターソードをふっと避け、背後に回って横斬りを奮う。


ガシャン!


バスターソードが私の剣を受けた瞬間に反撃を掛かる。


刹那!


誰も私が一刀両断されたと思ったが、バスターソードが空を切った。


「あり得ない」

「どうなっている?」


ギルド練習場に冒険者が集まって来た。


「なんか、判らんが凄いぞ!」

「鬼のベントン教官が本気で戦っている」

「美人の姉ちゃん、がんばれ!」


私の相手は元領軍団長のベルントで巨大な片刃両手剣バスターソードを振りまして私に切り掛かってくる。


私は愛用の軽量金棒(100kg)ではなく、ベルント元団長と同じような2mを超える超重量の両刃両手剣ロングロングソードだ。


芯にタングステンを使用し、チタンで完全コーティングしたモデリングで自作した自慢の一品である。


大刀使用の『鬼斬り』バージョンもあるけど、西洋人には幅広く重量感のある長さ220cm、幅30cm、厚さ5cm、重量150kgの両刃両手剣ロングロングソード、自称『タイタンソード』の方が恐ろしがられたからそちらを選択した。


冒険者の装備を見ていると、西洋風の剣を装備していて刀を装備していないからだ。


さて、どうして私と元領軍団長が戦っているかと言えば、時間は少し逆上る。


町に入って冒険ギルド支部の建物に入るとギルド長室に通された。

中には丸々と太ったギルド長のハンス・フォン・ヴァイクス男爵が待っており、私はギルド長とあいさつを交わした。


例によって私のステータスを開示すると、やはり奇妙がられた。


「では、草原には大型の魔物はほとんどいなくなった訳ですか?」

「いいえ、一部がいなくなっただけです。草原は非常に広いですから周辺部には沢山生息しています」

「なるほど、なるほど。それであなたはあそこで住んでおられる?」

「いいえ、ランツらにもお伝えしましたが私は『迷い人』であり、一定時間になると元の世界に戻るのです」

「なるほど、なるほど。魔物が恐ろしくありませんか?」

「大丈夫です」

「なるほど、なるほど、で、どこにお住まいの方ですか?」

「ですから、異世界です」

「なるほど、なるほど」


しばらく、話を続けたがギルド長のハンスは「なるほど」という割には信じていない様子であった。


ランツ曰く、町娘が強いということが信じられないそうだ。


最悪、ランツらが草原まで行かずにどこかに寄って戻って来たかもしれないと疑っているらしいと耳打ちしてくれた。


「なるほど、なるほど。まぁ、いいでしょう。ところで職業を変更するつもりはありませんか?」

「はい、しようと思っています」

「それは丁度いい。戦士へのコンバージョンをお考えなら、ギルド登録料と戦士コンバージョンの費用はこちらで持たせて頂きましょう。ちょっと試験がありますが、如何ですか?」

「やります。やらせて頂きます」

「強い方なら我がギルド会員になって頂けるのはありがたいことです」


ランツらから羨ましがられた。


本当に特例らしい。


で、指導官と模擬戦を強制された。


「ギルド長から聞いた。特例の3階級特進のギルド登録試験と戦士コンバージョンを同時に行う」


えっ、何それ?


「大したことではない。実践形式で俺と戦うだけだ。但し、真剣を使うから覚悟しておけ! 好きな獲物を捕れ!」


そういうとギルド職員が様々な剣を出してきた。


「自分のでもいいですか?」

「ああ、かまん」


私がタイタンソードを取り出すと試験官が目を丸くし、次は「わははは」と笑った。


「気にいった。本気を出そう」

「この試験官は副ギルド長のベルントさんで、元領軍の団長をしていた。滅茶苦茶に強い人す」

「そんなに?」

「この町のレベルが低いのもありますが、このギルドの3本の指に入る実力者す」

「手加減はいらないってことね」

「勝てるつもりすか?」

「負ける要素なんてないでしょう」


聞いていた他のメンバーも驚いていた。

普通は相手に合わせて、元団長のベルントさんも獲物を選ぶそうだが、私のタイタンソードを見て、自慢のバスターソードを取りに行かせた。


元団長のベルントさんは領軍にいた頃、膝を痛めて退役したそうだ。

でも、現役の頃より迫力ある剣技は健在だ。

突撃力はなくなった分、巧妙になっている。


剣技オンリーならギルドで一番らしい。


当然、私の上段斬りと横一文字斬りを難なく受け流された。


「なるほど、素人という訳ではないんだな!」


そりゃ、そうだ。


私は柳生石舟斎やぎゅうせきしゅうさい前田慶次(まえだけいじ)らと一緒にやってきたんだ。


数多の強者(つわもの)とも対峙されられたよ。


嫌々だったけどさ!


剣の才能はないから力の限りぶん回すしかできない。


だから、あとはAIちゃんにおまかせなんだ。


AIちゃんは人工知能と人工精霊の複合体で転移魔法が使える。


近づいてきた敵や弾を180度反転させるAパターンと近づいた分だけ私が後ろに転移するBパターンが基本的な回避方法になっている。


対人戦はBパターンで対応する。


私はただ単に縦に袈裟掛け斬りを振り降ろし、反動で真横一文字に切り裂く。そして、片手で剣を返して敵を威嚇して、上段の構えに戻る。

縦・横・横・縦・横・横・縦・横・横…………エンドレスだ。


そう、単発攻撃か、縦・横・横の連続攻撃だけしかできない。


ちょっと腕のある剣士ならすぐに慣れて反撃が飛んでくる。


元団長のベルントさんも反撃してきた。


「中々にいい筋だが甘い!」


私が剣を振り降ろした瞬間、元団長のベルントさんが半身で躱して反撃の一撃が私に入ったと誰もが思った。


否、元団長のベルントさんのバスターソードも空を斬った。


あり得ん?


信じられないという顔をしている。


剣の速度に合わせて、連続転移で後退しただけだからね!


体位を崩さずに後方に下がる私に違和感を覚えただろう。


AIちゃん、レベルⅡ。


“了解”


対人戦のレベルⅡは、瞬時に背後に転移で回って攻撃をする。


私の横一文字斬りを間一髪で躱された。


「なんすか? 今の?」

「おそらく、瞬動じゃないか?」

「違います」


ランツらの近くの冒険者が否定した。


「俺はハイ・シーフで『瞬動』スキルを持っていますが、『瞬動』は直線的な移動しかできません。背後に一瞬で回るなって無理ですよ」

「じゃあ、あれは何すか?」

「おそらく、伝説の仙術『縮地』ですね。『瞬動』を上回るスキルです」

「仙術すか?」

「ええ、おそらく」


残念、単なる転移魔法です。


転移で突然に背後攻撃が加わると、元団長のベルントさんの反撃の数がいきなり減った。


随分と警戒されたようだ。


でも、これで互角のようで、剣がぶつかって火花を散らしている。


動きが小さくなった分、剣撃の速度が増している。


厄介だ。


どこから攻撃されてもいいように大振りを禁じたようだ。


一時的な膠着状態が起こった。


元団長のベルントさんが嬉しそうに笑みを浮かべる。


うん、こういうタイプの人もいたね!


パターンを読み切って、一瞬の反撃に賭けてくるんだ。


でも、それはさせない。


AIちゃん、レベルⅢ。


“了解です”


打ち出す瞬間に転移を加える残像攻撃だ。


背後に回って反撃を加える瞬間に、再び、転移を加える。


AIちゃんの判断で背後、側面、背後、側面と四連続転移を繰り返してゆく。


実力者ほど、虚実の殺気に翻弄される。


だって、殺気は全部本物ですからね!


一度の攻撃で4つの反撃に備える。


反撃の隙なんて、もうなかった。


「教官が押されているぞ?」

「おい、一方的じゃないか」

「彼女は一体、何者だ」

「分身の術か?」

「よく判らんが、目に見えない速さで鬼教官の周りを走り回っているってことは確かだが異常だ?」

「どれが本物だ」


カン、カン、カン、私の攻撃を何とか剣で耐えていた。


困った。


レベルⅣの上にレベルⅤがある。


避けた。受けた。そう思った瞬間に斬りつけられる技だ。


そう、当たる瞬間に転移をするという究極のズルだ。


しかし、達人になるとそれすら避ける。


皮一枚だけを斬らせて逃れるとか、人間技じゃないよね!


ホント、達人ってチートだよ。


元団長のベルントさんにそれをすると致命傷になりかねない。


私の腕で手加減なんてできないよ。


困った。


どうしようか?


ガィキン!


鈍い音が走った。


元団長のベルントさんのバスターソードが衝撃に耐えかねて折れたのだ。


「待った! 待った! 俺の負けだ」


元団長のベルントさんが負けを認めてくれた。


助かった。


ステータス補正のお蔭でいくぶんは体力が持っているけど、そろそろ限界に近かったんだよ。


こうして、私は3階級特進の特例登録と戦士コンバージョンの権利を手に入れた。


よかった。よかった。


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