プロローグ
信長ちゃんだけでなく、忍ちゃんも魔王と呼ばれてしまうお話です。
よろしく、お付き合い下さい。
佐々木忍、18歳。
突然、学校の帰りに稲妻のようなもの撃たれて半死状態にされた。
何でも魔法使いの子供のイタズラ魔法の影響で次元を超えて被害を及ぼしたとか。
迷惑だよ。
『謝罪と賠償を求めます』
その祖父の魔法使いは私の体が再生するまで戦国時代に遊びに行かせてくれた。
何でも言ってみるもんだ。
いやぁ~、楽しかった。
転移魔法とモデリングも魔法を授けてくれたから好き放題だ。
『おぬしの冒険譚は中々楽しめたぞ』
『もしかして、見ていました』
『幼い信長を風呂場でからかうのが儂のお気に入りじゃ』
ぎゃあああぁ、覗かれていた。
このエロ爺、ワイドショーか、サスペンスドラマの代わりに視聴していたと白状させた。
乙女の柔肌を何だと思っているんだ。
『更なる賠償も求めます』
愛用した人工整列付きの人工知能『AIちゃん』をそのままくれたのよ。
やっぁり、何でも言ってみるもんだ。
よっしゃ、勝ち組決定!
私は何の外傷もなくタダ眠り続けるダミーの体と入れ替えられると私はゆっくりと眠りから目を覚ました。
夢オチとかじゃないよね!
“大丈夫です”
AIちゃんが転移で病院の屋上へ連れていってくれた。
後で先生と母さんに怒られた。
抱き付いて泣かれた後だけどね!
さて、学校に登校だ。
体の修復の為に1年が過ぎており、懐かしの教室、私の席、でも、周りは可愛い後輩達が同学年になっていた。
ただ、一年が過ぎていたのは意外ときつかった。
動物園のパンダの気分だ。
触りモノに触れる後輩達から気づかいが痛い。
う~ん、これはストレスだ。
なんと言っても去年の人気投票『学園アイドルNo.2』様のお姉様が「今日から同級生だ」と突然に紹介されれば、後輩達も戸惑うのも仕方ないだろう。
ははは、浦島太郎だ。
◇◇◇
「やっほ~忍、一緒に帰ろう!」
「みき、久しぶり」
「久しぶりって、二日前にあったでしょう」
「一時間会わなければ、久しぶりと思わない」
「思わない」
「この薄情者め!」
「3年は受験シーズンになるから補習とかで忙しいのよ」
「私と受験とどっちが大切なのよ」
「受験」
ですよね!
私とみきは受験日に知り合って、一緒に入学した同級生だ。
歴女の私にとって数少ない友達の一人だった。
帰ってきてからみきが冷たいのだ。
「冷たいって、単に忙しいだけだからね」
「友達のいない私をもっと構ってよ。慰めてよ。遊んでよ」
「後輩に友達作りなさい」
「私って、かっこいいお姉様でしょう。そんな媚びるようなことはできないのよ」
「わぁ、面倒くさい奴」
「えへへへ、褒められちゃった」
「褒めていません」
目が覚めたのは魔法使いに急いで貰って3月末にして貰ってけど病院の検査とか、学校の準備で、結局、ゴールデンウィーク明けになってしまい、5月初めに帰ってきた上級生に友達ができる要素は1つもなった。
とりあえず、帰り道でクレープを買って食べるのが最近の日課になっていた。
トリプルを全食完食だ!
「太るわよ」
「大丈夫、ジョギングしている」
「嘘ぉ、ぐうたら娘に何があった?」
「誰がぐうたらよ」
「あんたしかいないでしょう。バス停一駅でも『シンドイ』とか言って、バスを使うあなたがジョギングなんて、大地震の前触れかもしれないわ」
「ヒドぉ! 帰ってきてから早寝早起きの規則正しい生活を送っているのよ」
「夢の話は聞き飽きたからね」
「信長ちゃんの話をさせてよ。可愛かったんだからさ」
「はいはい、歴女様の妄想はもういいから」
「ぶううう」
みきは私を何だと思っているんだ?
私は長い夢を見ていたと思われていた。
でも、習慣って恐ろしいわ。
朝と寝る前のジョギングが日課になっていた。
「で、どうするつもり?」
「何が?」
「勉強はついていけているの?」
「夏の大検を受けて、来年は一般入試でみき達と同じ大学でも受けるつもりよ」
「あんた、受験を舐めているでしょう?」
「はい」
鞄から休み明けに送ってきた通知、某進学〇〇予備校の4月全国模試の試験結果を見せた。
自信はあったけど、トップ10に入るとは思わなかったよ。
小さい予備校ですからトップ10は誤差の範囲ですけど、それなりに学力があるということを確認できたのでOKね。
大検くらいは楽に通りそうだった。
もちろん、これには訳がある。
まず、1つは魔法使いの爺さんが異世界用に掛けてくれた自動翻訳の魔法だ。
書いている言語が日本語で読め、意識すると相手の言語で書くことができる。
元々、英語は得意だったけど、より完璧になってしまった。
プラス1。
古文と漢文も翻訳できた。
嬉しい誤算、マジ楽です。
漢字も勝手に頭に浮かぶし、評論と小説も作題者の意図を見逃さなければ完璧ですよ。
そして、歴史!
事故を起こす前に、伊達に歴史検定で日本代表に選ばれた。
元々、全国トップクラスだ。
入院して世界大会は出場できなかったのが心残りか!
数学と物理と化学は戦国時代に散々覚えさせられた。
戦国時代の知識欲を舐めるなよ!
最初は先生のつもりが、追い付かれて必死に見栄を張って覚えたよ。
でも、勝てない。
アインシュタイン並の渋川春海や関孝和のご先祖様のような天才たちに囲まれて、『忍様、ここの部分ですが…………』と私を解放してくれないよ。
もう、私よりあんた達が上だと言っても信じてくれない。
何が凄いかって!
人工衛星の宇宙軌道をそろばんで計算できるのよ。
頭の中でパソコン並って!
もう、人間じゃないよ。
私は人工頭脳『AIちゃん』にフォローして貰っているけど、生身がマジでやってしまうんですよ
超人ぶりに脱帽です。
そんな超人が私を取り囲んで、様々な研究と実験に付き合わせた。
マジ勘弁して。<涙>
数学と物理と化学は見たくないわ!
公民を除いて、ほぼ100点満点だからね!
模試の結果を見て、みきが目を丸くしていた。
「どんな不正をしたの?」
「不正っていうの?」
「歴史以外は私の方が成績は上だったでしょう」
「……………」
あはははっ、そうでしたね!
面倒くさがりの私と違って、みきは真面目だった。
試験前はみきに教わっていました。
あぁ~懐かしい思い出だ。
『睡眠学習』
「そんな訳あるか!」
「ですよね!」
「さぁ、言え! 今、吐け!」
「魔法と努力の結果」
「………………………」
みきが無言で歩いてゆく。
みき、みき、みき、私は何度も叫んだ。
「本当のことを言うまで絶交だから」
そう言うと振り返って去っていった。
ホントなんですけど!
みきを怒らせると1ヶ月間は口を聞いてくれない。
私はさらに暇になった。
◇◇◇
1ヶ月間、家でごろごろして幸せだった。
1年間の録画を見ながら、信長ちゃんらのことを思い出す。
楽しかったな!
でも、退屈になった。
もうチェックする録画は残っていない。
友達がいない。
追っかけする気も起こらない。
ゲーム?
したことないよ。
オンライン?
顔も見えない人と話す気にならない。
“忍様”
おぉ、AIちゃん久しぶりだね!
“病院で話し掛けることを禁止と言われましたので守っておりました”
おぉ、そうっだった。
独り言をしゃべる姿を看護婦さんに見られて、意識が錯乱しているかもって脳波チェックされて面倒なことになったので話しかけるのを禁止していたのだ。
“お忘れになっていたようで”
ははは、悪い悪い!
“こちらも情報収集に時間が掛かっておりましたので問題ありません”
何か不穏なことを言ったような気もするけど、敢えて確認しない。
“必要ならば、ICBMの暗証番号を…………”
わぁぁぁ、それ以上言うな!
“了解しました”
で、何か用なの?
“いいえ、忍様がお暇そうなのでお声を掛けさせて頂きました”
ありがとう。
“魔法使いが言っていた異世界に行かれてどうでしょうか?”
そう言えば、そんなことも言っていたね!
“情報収集の結果、忍様がこの世界で魔法の力を発現すると、非常に拙い状況になると判明しました”
情報を収集する以前に拙いでしょう。
そう言えば、『転移』と『モデリング』の力はまで使えたな!
“はい、使用可能です。但し、緊急時以外は使用を制限しております”
異世界か?
“異世界は魔法の世界ですから、忍様の力を使っても問題ないと思われます”
どんな場所か、判る?
“いいえ、異世界の座標が3つほど用意されているのみで情報はありません”
暇だしいいか!
“では、行かれますか?”
ちょっと待って、服を着替えてくる。
“制服で行かれるのが一番と思われます”
どうして?
“再生して頂いた制服は魔法世界の繊維で作られておりますので、通常の服より遥かに高い強度を持っております”
私の体は?
“忍様の細胞を増殖させただけので、強度は一般人と変わりません”
ですよね!
“忍様は一般人と同じに戻りました”
でも、いいわ!
無敵の防御があるから問題なし、AIちゃん、期待していわよ。
“期待にそえるようにがんばらせて頂きます”
じゃぁ、行ってみようか!
異世界へ!
『転移』
2回目の高校2年生、憂さ晴らしでちょっと異世界のハンターもやっています。