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消滅の魔女と四英傑 〜天才少女、異世界へ降り立つ〜  作者: ディノ
一章 学園内部抗争
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ゴミ掃除

キャラ紹介


アシュナ・テイゼン


双角の鬼人の幼女で『力の神徒』によって選ばれた特別生

ライチェスが大好きな恋する幼女、猪突猛進で頭はあまり良くないが類稀なる戦闘センスがある。

ライチェスの実力を理解してる者の一人で自分にはない強さを持っていると確信している。

一三歳の少女だが、見た目が十歳に満たない幼女『剣帝』の称号を持っている程の実力がある。

『參纏剣』の使い手

特別生には、一般生徒とは違う授業がある。

その一つが、実践訓練である。


その内容はギルドが斡旋している依頼を学園側が委託し、特別生が受けるというものである。


入学式翌日、授業初日ということもあり、厳しい依頼はなかった。

確かになかったのだが、それでも楽をしたい生徒がいた。


「あの、クリスさん?どうしてそれにしたの?」


実践訓練を受け持つ教師が困っていた。


「この中から好きなのを選べと選んだから選んだだけよ」

「あのね、確かに好きなのを選べと言った私にも原因はあるわ。でも、でも・・・」


クリス以外の特別生はどんな凄い依頼を受けたんだと思っていた。


「街のゴミ掃除って!!どうしてそれ!!あなたクラスがどうしてEランクに満たない簡単な依頼を選ぶの?」

「分かってないわね。何をもって簡単だと言ってるの?依頼の内容?依頼の報酬?依頼のランク?まるで分かってないわね。仕事に簡単な仕事なんてないわ。ゴミ掃除ということは汚いものに触らないといけないし、害虫や害獣が出るかもしれない。それにゴミと言っても小さいゴミだけとは限らないわ。掃除って結構重労働なのよ。それに学生が出したゴミを学生が片付けるのは当然だと思うのだけどその辺どうなの?」


クリスの正論のラッシュに担当教諭は頷くしかなかった。

ミュラーはそれを呆れながら見ていた。

クリスの言ってる事はもっともなことだが、ただ単に楽をしたいだけである。

そして、もう一つの理由は学生が受けた依頼の報酬八割は学園側に入るシステムとなっている。

クリスはそれが面白くないので報酬が最も低い報酬を選んだのである。

報酬を見るにほとんどボランティアのようなものであった。


クリスは強引に本来なら受けなくてもいい依頼を選んだのであった。

クリスはミュラーとニーナと組んでいる。

ライチェスとアシュナが一緒である。

ライチェスが選んだ依頼は、アシッドスライムの駆除だった。

ここのスライムは酸性の強いものほど黄色く、アルカリ性が強いもの程青い。

クリスの最初の感想はBTB溶液だった。

基本的に青から緑はほとんど無害と言われており、黄色が最も好戦的だと言われている。


「知ってるとは思うけど、スライムは物理には強い魔物の一種だ。余計な事はするなよ」

「うん、分かった。斬ればいいんだね」

「話し聞いてた?」

「だから、斬ればいいんでしょ」


アシュナはライチェスの言ってることをまるで理解していない。

というより、ライチェスにいいところを見て欲しいみたいだった。

クリスはその辺が理解できない。

しかし、鬼人では割と普通の事で、驚くべきことに鬼人の世界では家庭は女が支えるものらしい。

鬼人の女性にとって強さこそが魅力の一つでもあるという話だ。

話しを聞く限り、クリスには到底理解できない世界だった。

クリスは完全に金持ちのヒモになりたいタイプの人間だからだ。

金さえあれば愛なんていらない、そういうタイプの女である。


「それで、ゴミ掃除に作戦を聞くのはナンセンスだとは思うが・・・」

「掃除道具と水魔法ね。使える?」

「使えない事はないが・・・」


ミュラーが言い淀むのには理由があった。


「災害級の嵐がやって来るぞ」


つまり、嵐を呼ぶと言っているのだ。


「却下、そんなの呼んだら更に滅茶苦茶になるじゃない!!あんた今まで聞いてなかったけどどんな魔法を使えるのよ!!」

「災害級の嵐を呼ぶことしか出来んが?」

クリスは迷惑極まりないと思った。

クリスはこの話しを聞いた瞬間、ライチェスやアシュナの方が強いんじゃないかと思ってしまった。


「水魔法は私がやるからいいわ」


ニーナとは同じ班員ではあるが何処にいるか分からない上に同じ班員になっていたことさえ忘れそうになる。

クリスにとってそっちもそっちで厄介だった。

別に無視する訳ではないが、実際いるのかいないのか分からない相手にどう接すればいいのか分からないのだ。


「ねぇ、幻獣種って分かる?」

「獣人の中でもかなり珍しい個体だな。かなり特殊な個体で十歳を過ぎると存在が希薄になっていき、早くて三年くらいで幻獣種として完全に覚醒するんじゃなかったか?幻獣種は生まれてからでは判別出来ない珍しい個体だ。それがどうした?」

「私の班にその幻獣種のニーナって子がいるんだけど、いるかいないか分からないからどうしたものかと」


クリスはニーナを見る方法を知りたがっていた。


「問題ない、魔の権化たる龍人にはその魔力は見えてるからな。お前の右隣にいる」

「なんであんたには見えてるの?」

「そもそも幻獣種の魔力はそういう性質だ。その為、幻系統の魔法が得意だ。そして、光か闇のどちらかが使えるが幻系統に比べたら微々たるものだ。固有魔法と言われてるんだがな。これを扱える奴は一般的な魔法が使えない。だが、固有魔法は鬼人を除いては特異個体でしか見られない」

「前々から思っていたけど物知りね」

「これでも二百年近くは生きてるからな」

「思った以上にお爺さんなのね」

「これでも龍人にしてみれば若い方だ。年寄り扱いはやめろ!!」


ミュラーが物知りなのは所謂年の功という奴だった。


「ニーナ、本当にこの班で良かったのか?」


ミュラーがニーナに話しかけるが、側から見たら何もないところに話しかけてるようで居た堪れない気持ちになっているだろう。


「あっちはあっちで雰囲気についていけないからこっちで構わないか。」

「まぁ、あんなに見せつけてくれちゃうとね」


アシュナはライチェスに抱きついている。

節度を守れと言ったが、今回は屋外なので楽しんで欲しいというクリスの粋な計らいである。


「イチャつくのはいいけどしっかりやって来なさいよ」

「うん、分かったよ。お姉ちゃん!!スライムなんてこの刀で切り刻んでやるもん」


アシュナは身長よりもちょっと長い刀を掲げる。

アシュナの使う刀は超重刀『黒曜』、超重鉄と呼ばれるこの世界で最も重く硬い金属で作られている刀で超重鉄はそれ自体に重力を持つ性質があるため、その性質が刀身自体にある。

幼女が持つにしてはかなり武骨な刀だが、本人はかなり気に入っている。

鞘は魔封祓神力樹を使ったものを使用している。

彼女の剣術は鞘で魔法を祓い刀で追撃する変わった剣術を扱う。


ミュラー曰く、『遊剣』でも『舞剣』でもないらしい。

しかし、技の一部に『遊剣』と『舞剣』を取り入れてる技があると言っていた。

そもそも、そんな鞘がなくとも刀が反則級だとミュラーは語る。

あの刀と打ち合ったら大抵の武器はへし折れるとも言っていた。

重さと刀を振る速度によって刀ごと斬られる。

あまりにも重いため、鬼人の中でも力が特に強い者にしか扱えない刀であるが、反則級の強さを誇る名刀らしい。


「さて、各自担当の持ち場が終わったらここに来るように」


クリスはマップをミュラーに手渡すとミュラーはニーナに配る。


「やれやれ、他の奴なら我先と手柄を欲しがるものなのにお前と来たら・・・」

「手柄なんて欲しい奴にやればいいのよ。私にとっては邪魔でしかないわ」


クリスにとって名声や表彰など邪魔でしかない。

最初のうちはいいが何度もやると妬んだり、恨んだりする者が現れる。

昔から天才と呼ばれるのに嫌気が指していた。

昔から勉強はできたし嫌いじゃなかった。

そして、理解力は人並み以上にあった。

特に理数系は大好きだった。

科学者になるために必死に努力をした。

ある時、彼女の論文が賞を取るそこから彼女は天才と呼ばれ始める。

彼女は最初からその言葉は好きではなかった。

彼女の中では天才とは天が与えた才能ではなく、才能ある者がその才能を天まで伸ばす努力をした結果だと思っている。

しかし、世間は天才という言葉を軽く使う。

天才という一言で自分の努力をなかった事にされた気がした。

だから彼女はこの言葉が一番嫌いな言葉である。


ゴミ掃除をしているとゴミ箱の裏に黒く光る例のアレのような虫が潜んでいた。

クリスはそれを表情一つ変えずに消滅させる。

研究室によく出たので慣れたものであった。

そもそも彼女はその虫を見て泣き叫ぶような可愛い性格はしていない。


『やっぱり、飲食店のゴミ捨て場付近はこの手の虫が多いわね』


クリスは何度か害獣や害虫を見つけ『消滅弾』で消滅させていた。

我ながら、とんでもない魔法を生み出してしまったと思っていた。

消したいものを消せるのだ。

しかし、質量があったり持つ力が強いと全て消し去るのに時間がかかる欠点がある。

そして、最大の欠点が燃費の悪さである。

初級の強度で放っても消費する魔力は中級の強度より多いのだ。

しかし、それでも燃費切れを起こさないのはクリスの無尽蔵な魔力量である。

ミュラーをもってしても底が見えないらしく、とにかく所有する魔力量が多いとのことだ。


『うん、こういう自分のペースで出来る作業はやっぱりいいわ』


クリスは粗方終わったのでこの場所から離れようとした時だった。

どう見ても柄の悪い男達に囲まれている。

よく見ると半数以上が人間だ。


「その服はもしかすっとエディノーツ学園の学生か?いいのかい?こんな時間にこんなところにいて?」

「ええ、汚い街の掃除をしてるといったところね」

「そんなこと聞いてねぇ。俺達の縄張りに勝手に入ってただで済むと思っているのか?」

「だから何?ここが本当にあんたらの縄張りだと言うなら土地の権利書でも持って来なさい!!」


当然そんなものは持っているはずはない。

所詮はこの辺を勝手に根城にしているゴロツキなのだ。


「う、うるせえ!!」

「あら、図星なのね」


ゴロツキの一人はナイフを持ち襲いかかる。


「そんな熱くなった状態の攻撃が当たると思う?」


クリスはナイフを箒の柄で受け止め、喉を一突きするとゴロツキの一人は倒れる。


「腕は立つようだが、この数をどうにか出来ると思うなよ」


ゴロツキが集団でクリスに襲いかかる。

槍ではないが、槍の攻撃方法は横に払うか突くか振り下ろすか振り上げるか、攻撃を受け流し返す。避ける時に避ける。クリスは頭の中で相手の動きをシミュレートする。

自分がどう動くと相手はどう動くか、それを考える。

自分の動きで相手の動きを誘導していく。

多数の場合は相手の位置取りや間合いを把握して動く、同士討ちになるように移動したり、あえてそれを避けて誘ってみたり。

受け攻めの駆け引きを楽しむかのようにクリスは、戦う。

ゴロツキ達はクリスに攻撃を受けたり同士討ちをしたりで残り数名を残す程度だった。

たった一人の学生に十数人の大人が押されているのだ。


「ハァハァ、なんだ・・・なんなんだお前は!!」


ゴロツキの一人は思わず声を張り上げる。


「ただの街の掃除をしてる学生よ」

「ふざけるな!!話が違う!!学生がここまで強いとは聞いていない!!何かの間違いだ!!」

「金持ちの子供を攫って身代金を要求する俺達の計画を邪魔しやがって!!」


残ったゴロツキは残った力で魔法を発動する。

闇魔法である。

闇喰(ダークイーター)』触れたものを破壊し吸収する魔法であるがこれでも初級魔法である。

闇魔法は強力な反面かなり癖が強い魔法が多い。

この魔法の癖は前進するスピードが遅い事だ。

クリスは何食わぬ顔で『消滅弾』を使用して『闇喰(ダークイーター)』を消滅させる。


「ナニッ!!」

「コイツまさか!!」


この消滅の魔法によりゴロツキ達の一部は察した。


「嘘だろ!!こんなところにいるわけが!!」


どうやら、盗賊達の情報網ではクリスはガレスと共に街を出たという情報だった。


「悪いわね。まさか、そこまで上手くいくなんて思っていなかったわ。試作にしては良く出来たみたいね。残念ながらアレは幻影よ。本物はここにいるわ」


クリスはしてやったりとドヤ顔をしている。

ゴロツキ達にしてみては洒落になっていなかった。

目の前に盗賊達の身包みを剥がす悪魔がいるのだ。


「なんだと!?」

「さて、あなた達をギルドに引き渡したらいくらになるかしら?悪く思わないでね。これも立派な街のゴミ掃除よ」


ゴロツキ達の目の前が真っ白になるとゴロツキ達は気を失った。

クリスは電撃を放ったのだった。

そのゴロツキは最近、別の街を騒がせていた人攫い集団だった。

金持ちの子供を誘拐して身代金を要求したり、奴隷商に売ったりする連中がいるらしい。

それだけじゃなく、最近は『魔力増幅剤(ブースター)』なるものが出回っているらしい。

しかし、クリスにとってはそんなことよりも追加報酬が入ったことが嬉しかったのである。

これは依頼とは別枠なので全てクリスの懐に収まるというわけである。

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