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消滅の魔女と四英傑 〜天才少女、異世界へ降り立つ〜  作者: ディノ
序章 エディノーツ学園入学
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特別生

キャラ紹介


ライチェス・フロス


『技の神徒』に選ばれた特別生、

魔法使いの名家の次男、他の兄弟達に比べ魔法の才能に乏しいが血の滲むような努力の結果、他の兄弟ほどではないが、極級を扱えるようになる。

威力よりは技量でカバーしており、使える魔法が他の兄弟より多く攻守・補助とバランスが良い。

歳は十五歳だが、家事全般ができるくらいはしっかりしている。

炎・風・光の極級魔法を会得しており、複合魔法も扱える。

自分では、天才だと言っているが実際はかなりの努力家である。

翌日、合格者の発表を見に来た。

合格者が書かれた掲示板には、自分の名前がなかったが、特別枠という所に自分の名前があり名前の上に二重丸がついていた。


「やはり、師匠が首席ですか。当然といえば当然ですね」


首席とは試験で最も優秀な生徒に与えられるものである。


「えぇ、面倒くさいなぁ」


クリスにとっては嬉しさより面倒臭さの方が大きかった。


「そんなこと言わないで下さい」


と言いつつも気怠げな師匠も素敵だと思うライチェスだった。


「ライチェが特別生なのは知ってるからいいとして、あと三人いるのよね」

「まぁ、他の特別生なんて師匠に比べれば所詮は・・・げっ!!アシュナ・テイゼンだと!!」


ライチェスはとある名前を見つけると顔を真っ青にする。

その様子からして嫌な予感がした。


「知ってる奴なの?」

「『力の神徒』の次期後継者にして最年少で『剣帝』の称号を得た鬼人の剣士・・・です」

「鬼人?」


聞いたことのない言葉だった。

鬼人とはつまりツノの生えた人間で、ツノが二本あるほうが強いらしい。

力の権化と呼ばれる種族である。

そのため、魔の権化と呼ばれる龍人とは犬猿の仲でもある。

他にも鳥人や獣人が存在し、ライチェスは魔人らしい。


「『剣帝』が特別枠で入学したとは聞いてはいましたが、本当だったとは・・・」

「そんなヤバイ奴なの?」

「そそそ、そんなことはないのですが・・・」


ライチェスはかなり慌てている。

この慌てようはただ事ではないと思っている。


「あっ!!ライちゃん!!」


ライチェスの存在に気づいた黒と赤を基調とした和装を着た長い髪を後ろで纏めた黒髪の幼女がライチェスに寄って来る。

その幼女はよく見ると額辺りに二本のツノがある。

その幼女はライチェスに駆け寄り抱きつくとそのまま倒れ込む。


「ぎゃあああ!!たんまたんま!!シュナ!!落ち着けぇ!!」

「ヤダヤダ、これからずっと一緒なんだからね。絶対離さない。私がライちゃんを守ってあげるからね」


なんと男らしい台詞を言うロリであろうか、しかし男が言われたらなんと情けなくなるような台詞である。

クリスは察した、なんでライチェスがこの名前を見た瞬間に取り乱したのか。

つまり、こういうことだ。

心なしかアシュナが抱き締める度にライチェスの骨がきしむような音が聞こえるきがした。

関わるのはよそう。ライチェスは犠牲になったのだとクリスは思いながらその場を退散する。


クリスは屋上のベンチで横になっていた。

昔の研究室のソファ程ではないがここまで陽気だと眠くなってしまう。

人が近付かないように結界を作ったのでいつまでも寝ていられる自信があった。


「やれやれ、まさかこんな事の為に結界を使う奴がいるとはな」


クリスが眠たげな目を擦るとそこには一昔前の学ランのような服を着た見るからに2メートルはある長身の金髪かつ短髪で少し色黒の柄の悪い強面男がいた。


「子供の面倒を見るのは面倒なのよ」


クリスはライチェス対策をしていただけだった。


「クリス・スロット、噂は知ってる。話しに聞いてた以上だ」

「あまり有名にはなりたくはないのよね。面倒が増えるから」


前の世界でも名は売れていた為かなり忙しかった。


「そういうだろうと話しは聞いている。俺は龍人のミュラー・ハウセル、『財の神徒』と龍人の長にお前のサポートを任された者だ」


クリスは意味が分からなかった。

何故なら、『財の神徒』はもちろん龍人の長すら知らないのだ。


「人違いじゃないの?その二人を私は知らないわ」

「いや、人違いではないな。名前とその目付きの悪い三白眼で分かった」

「目付きが悪くて悪かったわね。次言ったら容赦しないわ!!それに強面のあんたには言われたくないわ!!」


くどいようだが、クリスは目付きが悪いことを気にしている。


「善処しよう。それに今年は『力の神徒』の後継者がいるからな。龍人としては放っておけないんだ」

「そういえば鬼人と龍人って仲悪いんだっけ?」


クリスはそんな話を聞いたのを思い出した。


「奴らは龍人の天敵・・・いや、魔法を使う者の天敵だ」


ミュラーは若干イラついた口調で話している。


「奴らは対魔法戦闘術を身に付けている。奴らは自らの術を魔法とは言わず『神通力』と呼んでるがな。それと魔封祓神力樹という樹がある」


彼らにとってはどちらかというと後者の方が厄介のようだった。


「名前からして魔法を封じたり祓ったりする樹みたいだけど」

「その通りだ。その樹は魔法を無効化する。そして、龍人が太古の昔に編み出した。『龍鱗多重結界』を最初に打ち破ったのがこの樹だ。正確にはこの樹で作った槍だがな」


『龍鱗多重結界』とは龍鱗を模したに物理と魔法を遮断する結界を多重にかける魔法で一枚割れても押し出されるように一瞬で元に戻る当時は最強クラスの防御魔法である。

太古の昔、龍人は大魔法時代最強を欲しいままにした種族だった。

しかし、そこに待ったをかけた種族が登場した。

それが、鬼人である。


鬼人は独自の文化、独自の魔法技術により魔法は『神通力』と呼ばれ、身体強化に特化していた。

それと同時に対魔法戦闘術についても最先端だった。

そして、魔封祓神力樹を用いた武器を作り出したのだ。


その最初の武器が槍である。

この樹の特徴は、魔法を無効化するのもあるのと、熱や火に強くそれなりの硬度を持つという特徴がある。

この武器の登場により、龍人が最強であった時代は終わったのだった。


「ちょっと待った。魔法を無効化するなら自分達の身体強化も無効化されそうなものじゃない」


クリスが疑問に思うのは当然だった。

魔法を無効化するなら使ってる本人達も無効化されてるはずである。


「あの樹は魔法を無効化するのは、魔法を魔力に戻すという作用があるからだ」

「どういうこと?」


あの羊皮紙は読んだがそんな事は一つも書いてなかった。


「魔法とはつまり魔力を用いて世界の法則を歪める術のこと、あの樹にはその歪みを戻す力がある。例えば炎の魔法を使ったとする。そうすると魔力は式の法則に従った炎へと変化する。その炎を強制的に魔力に戻し無効化するのがあの樹の効果だ」


ミュラーの説明は理解できた。

しかし、重要な鬼人の『神通力』が無効化されない理由がまだ分かっていなかった。


「『神通力』が無効化されない理由は知らないの?」

「それに関しては知らない。だが、奴らが俺達が扱うような魔法を扱えないというのがその答えなんだろうな」


龍人と鬼人はそもそも仲が悪いのでそういう話しは知らないのである。


「くれぐれも、あの『剣帝』には関わるな。まだ、幼い見た目だが、油断してると痛い目にあうだけじゃ済まない。鬼人は龍人と違い喧嘩っ早い野蛮な種族なんだ!!」


クリスはそうとは思えなかった。

どう見ても恋する乙女である。

いざとなればライチェスを盾にすれば何とかなる気がした。


「警告感謝するわ。

ところで話しは戻るけどどうして私のサポートを引き受けたの?」


クリスは一番これが気になっていた。

目の前の龍人が自分にとって敵なのか味方なのかこれだけははっきりさせておきたかった。

いきなりサポートしますと言われても納得出来ないからだ。


「なんだ、そんなことか。答えは至ってシンプルだ。『智の神徒』に選ばれる可能性がある者に着くのは龍人にとって栄誉あること、そして『智の神徒』は龍人が第一に保護する対象だからだ。というのは建前で『力の神徒』が鬼人だから、それに対抗したいというだけだ。俺はそんなものよりお前に興味が湧いたそれだけだ」


ミュラーにとっては『智の神徒』よりもクリスに興味を持ったようだった。

まるで愛の告白であるが、ミュラーもライチェス同様、クリスを男だと思っている。


「それなら、よろしく頼むわ」


クリスは何となく建前とは分かって聞いていたが本音までバラすミュラーの返答があまりにもリアルなので信じざる得なかった。

まさか、そこまで龍人が鬼人に対抗心を燃やすとは思わなかった。

ついでにとミュラーは続ける。

今代の『力の神徒』は『智の神徒』の誕生には力を入れていないらしい。


腕の立つ剣士を選出してるという話しもあるが、一番有名なのは、孫に物凄く甘いということだ。

今代の『力の神徒』は孫が修行の為、エディノーツ学園に入学したいと頼んだら二つ返事で了承し、特別枠まで使い入学させたという。

そういう情報をどこで仕入れてくるのかとクリスはツッコミたくなったがそれはそれで面倒なのでやめた。




明日の入学式を前に校舎案内やその他注意事項、寮の案内が終了するとクリスは案内があった寮に向かう。

しかし、目の前に立ちはだかるのは女子寮の寮長だった。

なんで呼び止められたのかは、クリスは理解していた。

自分が男であると誤解しているのだ。

クリスは仕方ない、目にものを見せてやるかと服を脱ぎ捨てる。


「何か文句ある?」


かなりのドヤ顔で寮長を見据えるが、寮長は「分かったからサッサと服を着ろ!!」と慌てて脱ぎ捨てた服を拾いクリスに渡す。


ただ、自分が女だと証明しただけなのにどこに怒る必要があったと思った。

部屋は相部屋で、二人一部屋である。


「悪くないわね」


相部屋というのはともかく、部屋に風呂があるのが一番良かった。

宿はシャワーしかないので物足りない感じがしたのだった。

服は支給された学生服の上に白衣でいいので服に関しては困らなかった。

支給された学生服も入学式などの重要な行事でない限りは自由である。

クリスはただ面倒くさいので、学生服の上に白衣である。

そして、スカートではなくズボンなのでどう見ても女扱いはされないのだ。

クリス自身、スカートよりズボンに慣れてるのでズボンにしたのだった。

その理由はただ単に前の世界では薬品等を使う際、肌が多いと危険なことが多かったからである。

相部屋のもう一人はまだ来ていないが、せっかくルームメイトになるのだから仲良くはしたいとクリスは思っていた。


「うぅ、規則規則ってどうして男の子だからってライちゃんと一緒は駄目なの!!」


クリスのルームメイトは、ライチェスの自称恋人であり、ミュラーから警告されたアシュナ・テイゼンだった。


『嘘・・・でしょ・・・』


クリスは今すぐチェンジと言いたい気分だった。

ライチェスがいるなら交換して欲しかった。

彼ならきっと泣いて喜んだだろうとクリスは勝手に考えていた。


「・・・」

「・・・」


クリスはアシュナと視線があってしまった。

目と目があってもトキメキなど感じない。

感じるのは得体の知れない気まずさだけだった。

沈黙が数秒続くと先に口を開いたのは、アシュナだった。


「・・・どうして、男の子がここにいるの?ライちゃんはダメなのにどうして?」


クリスはそこから説明しなきゃならないのかと思わず溜息をつく。

クリスはいつも通り脱いだが、アシュナは納得しない。

どうやら、かなりの箱入りで男の裸体と女の裸体は同じものだと思っているのだ。

クリスはまさか、ここまで面倒な相手だとは思っていなかったので何とか寮長に説得してもらったが、アシュナがあまりにも食いつくので寮長は若干押され気味だった。

それでも、何とかアシュナの説得に成功したがアシュナは納得していない感じだった。

しかし、あの寮長ですら押されるとは恋する乙女のパワーは凄いなとクリスは思った。

正直、クリスにはライチェスのどこがいいのか分からなかった。

まぁ、幼い頃はよくあることなのでクリスは深く考えないことにした。

翌朝、ルームメイトのアシュナはまだ寝ている。

起こすべきか考えるが、まだ時間がある為シャワーを浴びてからにしようと考えだ。

やはり、朝の風呂はいいとクリスは思う。

宿はシャワーしかない上に朝は使えなかったのだ。

クリスは寝る前と起床後の風呂は前の世界では日常茶飯事だった。


『何というか、ミュラーが心配性というか鬼人に対して神経質な気がするわね』


クリスはミュラーが言うほどアシュナは危ない奴では無かった。

確かにライチェスの事になると熱くなるが、それは悪いことではないとクリスは思っていた。

シャワーから出てもアシュナはまだ寝ている。


「起きなさい、入学早々遅刻したいの?」

「う〜ん、ライちゃ〜ん♡」


呼びかけてもアシュナはまだ夢の中である。

クリスは思った。

完全に子守を任せられてる。

そういう気持ちにさせられたのだ。


「さあ、起きなさい寝坊助」

「きゃんっ!!」


クリスはアシュナの布団を引っぺがした。


「何するの!!今いいとこ・・・!!」

「いいから、顔洗って来なさい」


クリスの顔は目付きの悪さも相まってかなりの凄味を増していた。


「分かった。分かったから、その顔で近づかないで・・・」


アシュナは半ば泣きそうになっていた。


「はぁ・・・」


ふとため息が溢れる。

先が思いやられるからだ。

アシュナの準備を済ませ、クリスは先に出た。

まだ、登校時間には早いがサッサとあの部屋から出たかったのである。


『まさか、一から十までやってあげないと準備も出来ないなんて箱入りもいいところね』


クリスはアシュナが準備をするのに泣きそうになっていたので仕方なく手伝った。

年長者が歳下の面倒を見るのは当たり前だという考えはないが、流石に泣かれるのは面倒なので手伝ったのである。


『まるで、妹ね』


クリスは妹か弟がいた記憶はないが、施設に預けられた後に母親は子供が出来ていたからアレがどちらかだろうと思ったが、クリスにとって今はどうでもいいことだった。




教室に入ると既に座っている生徒がいた。

その生徒は白と青を基調としたセーラー服を身にまとい、セミロングの藍色の頭髪ここまでは人間と変わらない。

しかし、犬耳と尻尾があるのだ。

見るからに獣人であった。

クリスはふとこんな奴いたっけという感覚だった。

とにかく影が薄いのだ。

一人でいたから気付いたが人が多くなると気付かないそんな影の薄さがある。

クリスはふと幽霊なんじゃないかと思ってしまった。

幽霊は信じていないがこの世界は、いるかもしれないと思ったのだ。


「随分と早いわね」

「・・・えっ?もしかして見えてます?」

「しっかりと見えてるわ」


その少女はニーナ・アインズ、獣人と魔人のハーフである。

ニーナは獣人の中でも幻獣種と呼ばれる希少種で、そのせいで影が薄いと語る。

幻魔法に特化しており、闇魔法を得意としている。

影があまりにも薄いため、常に意識していても見失うらしいが本人はあまり気にしてないらしい。


「そういえば、入学式の挨拶は何を喋るか決めましたか」

「ああ、あれね。まったく、どうして私が首席なのよ」


新入生の首席には、代表としての挨拶がある。


「成績トップが、首席になるのは通例ですからね」

「それは分かるけど、どうしてそんな理由で面倒ごとを押し付けられないとならないの」


ニーナの言うことは分かるが、それでもクリスは愚痴を言わなければ気が済まなかった。


「大体の生徒は喜び勇んで受けるんですけどね」

「悪いけど、面倒なのはごめんだし、目立つのもごめんなの」


ニーナは何を今更という視線を向けている。

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