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二つの魔法

クリスはミュラーの言う通り、『儀式魔法』と『結界魔法』を教えてもらう事にした。


ライチェスの話では、『儀式魔法』は複数人で行う大規模魔法で一人では小さい魔力を複数で統合させて一つの巨大な魔法にするという魔法で元々は、弱者の為の魔法だが、今は宗教的に行う魔法で信者に加護を与えたり、来るべき脅威に対する決戦魔法だったりと数にものを言わせる魔法である。

しかし、メリットよりもデメリットの方が多い為、使う者も魔人ですら宗教等のごく一部である。


『結界魔法』は一応、空間制御魔法に分類され、空間に隔てる壁を生み出す単純な魔法だが、ライチェスは別の使い方で応用をしていた。


『空歩』と呼ばれる技術で、鳥人にしてみれば初歩の初歩らしく、上手く羽ばたけない幼少期には既に体得する魔法とは呼べない技術である。


足裏に『結界』を生み出し、蹴り出すことを繰り返し、空を歩行する技術だが、簡単に見えて結構難しいのである。


『結界魔法』は結界で空間を区切ることで、『迷宮結界(ラビリンス)』や『転移結界』を生み出すことができる。


『結界魔法』はただの防御魔法と思われがちだが、空間を区切る魔法だというのが鳥人の認識なのだ。


「あら?何かようかしら?」


今や生徒会室になった会議室には、スキンヘッドのオカマと金髪緑眼の垂れ目の女、そして机の書類とにらめっこしている学園長の孫がいた。


「いや、差し支えなければあんたとあんたに教えて欲しい事があるのよ」

「・・・き、聞きましたか奥さん」

「誰が奥さんよ」


スキンヘッドのオカマ、リカルドのボケに金髪緑眼の女がツッコミをする。


「それで、何を教えて欲しいの?」

「『儀式魔法』と『結界魔法』についてよ」

「それはいいけど、『儀式魔法』なんて時代遅れの魔法を使うのは今や魔人でもあんまりいないわよ」

「私もいいわよ。でも、その前に言わせて欲しい事があるの」

「何よ」

「あのミュラーとかいう特別生の格好どうにかならないかしら?一部の生徒が怖がってるのよ」


ジェニスは快く了承するが、リカルドは教える前にミュラーの普段の格好をなんとかして欲しかった。


「アレに関しては私が言ったところでやめてくれるとは思わないけどね。そもそも元が強面だからあんまり意味ないことだけど一応言っておくわ」

「お願いね。流石にあの巨体の前に行くと私でも怖いのよ」


リカルドもミュラーを怖がっているようだが、クリスはあの男のどこが怖いのか理解できなかった。


「あんた、いくらなんでも怖がり過ぎなのよ。外見は確かに怖いけど中身はあんたらと大してかわらないわ。必要以上に怖がるのは逆に失礼なことだと思わないの?」

「そうね、それは会長にも言われたわ。怖いのとは別に恐れ多いのもあるわね」

「恐れ多い?あいつが?」


クリスはあの龍人のどこに恐れ多くなる要素があるのか分からなかった。

クリスから見れば問題しか起こさない問題児とイメージしかない。


「人間のあなたは分からないかもしれないけど『覇龍種』というのは、私達にとっては尊い存在なのよ。絶大な魔力を持ち天候すらを変える力を持ってるわ彼は『嵐の覇龍』で災害級の嵐を呼べるから、私としては機嫌を損ねてこの街を灰燼にされたらたまったものじゃないのよ」

「安心しなさい。あいつはその辺は弁えているし、その程度で機嫌を損ねてるならとっくにこの街は灰燼となってるわ。むしろ、あんたらが気にし過ぎなのよ。あいつはそこまで子供じゃないと⋯⋯信じたいところね」

「今の意味深な間は何よ」

「いや、相手が鬼人じゃなければ問題ないといった話よ」


クリスは龍人と鬼人が犬猿の仲なのは当然理解している為、それ以外なら問題ないということを言いたかったのだ。


「そんなことより、早く教えてくれないかしら?『儀式魔法』と『結界魔法』を」


クリスとしてはミュラーのことなどどうでも良かった。


「少なくとも、人にものを頼む態度じゃないけど、まあいいわ。まずは『儀式魔法』だけど今じゃほとんど使われなくなった魔法ね。本来は龍人の力を再現するために生み出された魔法らしいけど、効率がとことん悪い上に、魔力が強い者の負担が一番大きいのとデメリットが多い魔法ね。どちらかと言えば攻撃向きではなくサポート向きとも言われていて様々な加護を受ける事ができるわ。例えば消費魔力を抑えたり魔法の威力を強めたりね。『儀式魔法』は主にそういう加護を与える『力場』を生み出す魔法ね。主に力の弱い者が強い者にする後方支援によく使われていたわ」

「成程、外的要因によって戦う魔法使いを強化する。鬼人とは違った強化方法を用いてる訳ね」

「彼等みたいに身体強化をする訳ではないんだけどね。あくまでも戦う魔法使いの負担を減らす程度しかないわ。そもそも、どちらにしても効率の悪さから使う者がほとんどいない魔法よ。第一、一人でできる魔法じゃないから、教えたところで意味などないのだけどね」


ジェニスは別に隠すような魔法ではないので大っぴらに話す。

むしろ、魔人にとってはなかったことにしたい魔法であった。


『ライチェスもかなり渋い表情で、説明してたけど魔人にとっては無かったことにしたいという意味で話したく無いのかもしれないわね。これは参考にならないけど、一応覚えておいておいた方がよさそうね』


クリスは一応、『儀式魔法』を頭の隅に憶えておくことにした。


「さて、次は『結界魔法』ね」

「一応言っておくけど、私にも話せる事と話せないことがあるのを肝に命じておいてくれないかしら」

「まったく、ミュラーといい、あんたといい魔の民はどうしてそこまで隠したがるのかしら?まぁ、いいわ。私はそこまで深いところまで知る必要はないからね」

「隠し事が多いことは否定しないけどね。『結界魔法』には大きく分けて二つあるのよ。一つは単純に防御の為に使うもの、私達はこれ全般を『守備結界』と呼んでいるわ。そして、もう一つが結界で空間を区切る『空間結界』あなたも知ってると思うけど『迷宮結界(ラビリンス)』もその一つね。空間自体を区切る事に用いる結界よ。ただ『空間結界』は鳥人でも極一部でしか扱えない高等魔法だから私は扱えないけどね」


リカルドの話からクリスにとっては『結界魔法』の方が憶える価値がありそうだった。


「成る程ね。参考になったわ」

「これくらいならお安い御用よ。ところで既に知ってるとは思うけど」

「騎士士官学校の代表が来る事かしら?」


リカルドはあえて何かを言わずにクリスに尋ねるとクリスは察しが良く答えた。


「流石に学園間交流でいつものような事なんてしないわよ。だから、大人しく見物人をしてるわ」

「意外ね。ミュラーやジンクとかはいい金づるがやってくるとしか考えてないだろうって言っていたのに」

「まぁ、そう思われても仕方ない対応をして来たからね。でも、流石に学園間交流で学園間の関係を悪くするような事は流石に私も控えるわよ。私個人の印象が悪くなる事は知った事じゃないけど、学園全体の印象が悪くなる事に関しては考えてるつもりだからね」


ジェニスとリカルドはクリスの答えは、ミュラー達の杞憂に終わった事に安心した。


「ただ、どんな奴らが来るか知りたいところね」


クリスがそう言うとジェニスが名簿をクリスに手渡す。


「まだ、確定事項ではないけど、それで間違いないわね」


ジェニスはクリスに変わる可能性もある事を話す。


「分かったわ。……えっ!?」


クリスは名簿の名前を見てとある名前に気付く。

それは自分の右腕の以前と同じ姓だったからだ。


「どうしたの?」

「いや、見たことある姓があったから、そういえば、アイツには獣人の女性と籍を入れた兄と失踪した弟がいたと言っていたわね」

「有名な剣士なら、名前が通っているんだけど彼に関してはそんな話しがまったくないのよ。だから、彼なら知ってると思って聞こうとしても・・・聞き出せる雰囲気じゃないのよ」


ジェニスは、ライチェスとアシュナの雰囲気を見て聞き出すべきか悩んでいた。


「それに関してはそれとなく私が聞いてみるわ」

「お金は出さないわよ」

「私も個人的に気になるだけよ。それにライチェスとしてみれば無視はできない存在だろうしね。そのついでに教えるってだけよ」


クリスはこの名前は自分達以上にライチェスが知るべき情報だと考えている。


「そういえば、あの口が悪い男二人は今日はいないのかしら?」

「ジンクさんとゲイズさんならミュラーさんと特訓しに行きましたが」


それに関しては書類とにらめっこしながら会長のエリックが答える。


その答えにクリスは嫌な予感しかしなかった。

何故なら、クリスにとってミュラーは問題を起こす代表みたいなものだからである。

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