宴の終わり
『マギナフェスタ』二日目、クリス達一行はギルドに報告とゴーレムの大軍を倒したということでギルド内は大盛り上がりだった。
そのため、二日目は参加できなかったのである。
「師匠、僕だけに話があるってなんですか?」
ライチェスはクリスに呼び出されていた。
「そうね、まず私はあんたの師匠ではないわ。そこまで強くなって師匠も弟子もないわ。だから、代わりにあんたを私の助手にするわ」
「あの、話が見えないんですが」
ライチェスはクリスの話してる意味が理解できなかった。
「つまりあんたは私の弟子としてではなく助手として私の下で働いてもらうわ。当然、その報酬も与えるわ」
「言いたいことは分かりました。しかし、僕はアシュナと共にいると決めたのです!!例え、師匠の頼みでもそれだけは聞けません!!」
ライチェスは当然、クリスの申し出を断る。
「そういうのは当然分かっていたわ。でも、本当にそれでいいの?それであんたは満足なの?」
「何が言いたいんですか?」
ライチェスはクリスが何を言い出すか不安で仕方なかった。
「あの子とのデート代足りてる?」
「!!」
ライチェスはクリスが何を言うか理解した。
「別に何をするにしても私からは何も言えないけど、これだけは分かってるつもりよ。あの子、かなりの量食べるのよね。あの小さい体のどこにあの量の食べ物が入ってるか疑問だわ。つまり、何が言いたいかと言うと私の下で働けば、いくらでもアシュナとデートできるということよ」
「なっ!?」
その魅力的な提案にライチェスの心は揺らぐ。
「あんた、私が気付かないと思った?」
「な、何がです?」
「あんた、自分の食事を済ませた後にアシュナをよく見てるでしょ。かなりいやらしい目つきで」
「な、ななな、なんでそうなるんですか?僕はそんな邪な目でシュナを見たことはありませんよ。ただ食事をしてる彼女がとても魅力的なのでつい・・・」
ライチェスはクリスの言ったことに凄く同様している。
「あれのどこが?言っちゃ悪いけど、食べ散らかしが酷くて獣みたいにかっ喰らってるようにしか見えないんだけど、あれがいいの!?」
「あれが可愛いんですよ。あれを見る度に保護欲に駆り立てられるというか・・・分かりませんか?」
「分からないし、分かりたくないわ」
クリスはライチェスに呆れつつ察した。
こいつは所謂駄目亭主に惚れる嫁のようなものなんだと理解した。
「アシュナには聞いたからいいけど、結局のところあんたってアシュナのどこが好きなの?」
クリスはアシュナにした質問と同じ質問をライチェスにする。
「そうですね。シュナの好きなところをあげたらきりがないのですが、やっぱり一番は強いところですね」
まさか、アシュナと同じ答えが返って来るとはクリスも思わなかった。
「それ、アシュナにもあんたのどこがいいか聞いたら同じ答えが返って来たわ」
「それは嬉しいことですが、僕はシュナが思うほど強くはありません。また何処かでシュナを不安にさせてしまうかもしれない、だからこそシュナを不安にさせない強さがあればいいんですけどね。その為にも日々精進ということです」
その言葉を聞き、あれだけ強くなっておきながらまだ強くなる気かこの男はとクリスは呆れてしまった。
ライチェス自身は気付いてないが、クリスは代表生の中で最強はこの男だと理解している。
だからこそ、クリスも負けていられないと思った。
こんな気持ちは向こうにいた頃はなかったので、新鮮だった。
「それで、私の助手の話しに戻るけど」
クリスは話しを本題にもどる。
「まぁ、今回の事で師匠にも迷惑をかけてしまいましたしね。その借りを返すというのはおかしな言い方ですが、快く引き受けましょう」
ライチェスはクリスの助手になることを了承する。
「そう、悪いようにはしないから安心なさい。それとこれからは師匠じゃなく、先生と呼ぶこと」
「分かりました先生」
ライチェスはクリスの助手となったことでクリスのライチェスを有名にするという計画が着々と進むのだった。
今回の功績もあり『愛の魔闘家』ことライチェスが有名になるのにさほど時間はかからないのであった。
「ところで、先生の背後にいるその方はどなたですか?」
「・・・まさかとは思ったけど見えてるの?」
ライチェスは魔力を認識できるようになっている為、しっかりとニーナの魔力を認識している。
クリスは二人の前には出て来るなと普段から言っていたので、今回は宿で留守番をしていた。
「見えちゃまずかったですか?」
「まずいというかなんというか」
クリスが答えに悩んでる時だった。
「やっと気付いてくれましたね。私こそが正体不明の特別生こと、ニーナ・アインズです。ゴミを見るような視線を向けられると興奮してしまいます」
「あんた、何勝手に出て来てんのよ!!」
ニーナが幻の身体で現れるとクリスが怒声を放つ。
「いいじゃないですか、どっちみち遅かれ早かれ私の存在はバレます。それなら、早い方がいいじゃないですか」
「あんたの場合、それを考えるより先にこれは好都合としか思ってないでしょ」
ニーナの考えはクリスに詠まれていた。
「そんなことありませんよ。ほらほら、ライチェスさんもこの仏頂面に何か言ってやって下さい」
「ちゃっかり、ライチェスまで巻き込もうとしてんじゃないわよ」
「あの、僕はどうすれば」
ライチェスはニーナに突然話しを振られて困っている。
「相手にしなくていいわ。アレには関わらないこと分かった?」
「は、はい」
ライチェスは困ったような返事をする。
「そこまで、私を無視するというのなら私を無視できない存在にしてあげましょう」
そこでニーナは何をトチ狂ったらのか、全裸となった。
「ブッ!!」
「ら、ライチェス!!あ、あ、あ、あんたなんてことしてくれるのよ」
ライチェスは鼻血を噴水のように吹き出しその場で倒れてしまった。
「んー、どうやらこの反応を見るにまだまだお子様なんだなと思います」
「それをわざわざ確認する為にやったのね。タチが悪いという意味ではあんたがナンバーワンよ」
「ありがとうございます」
クリスは褒めてないからと思いつつやっぱりライチェスはライチェスなんだなと思っていた。
ーーーーー
『マギナフェスタ』三日目、ライチェスはアシュナに連れられ本日はデートである。
「うーん、あれどう見ても普段と変わらない気がするのよね」
クリスはライチェスとアシュナが普段通り過ぎて進展してるとは思えなかった。
「それを俺に相談したところでどうなるというのだ?」
それに返事するのは、クリスカースト底辺の男ことミュラー・ハウセルだった。
「そうよね。あんたに話したところでなのよね」
「それで、俺になんのようだ?」
「いや、気になったことがあったから聞きたいだけよ」
クリスはミュラーにライチェスのこととフェラチアのことを話した。
「ほぅ、あの男が『神通力』を扱えるようになった上に魔力まで認識できるようになっていたか」
「あれって鬼の持つ力じゃなかった?」
「あの力に関しては龍人の理解の及ばないところがある。おそらくそれに関してはあの男の方が詳しいのではないか?」
ミュラーはライチェスに聞いた方が早いと話す。
「あんたってとことん使えないわね。もう全てにおいてあんたはライチェス以下よ」
クリスは自分の思ってることをミュラーに話す。
「ちょっと待て!!お前が一体どういう風に俺を見てるか分からんが凄く失礼なことを考えてるのは分かるぞ!!」
ミュラーはかなり慌てた様子で弁明しようとしている。
「あんたは結局口だけなのよ。あの男は口ではなく行動で示してくれるわ。だから、あんたはライチェス以下なのよ」
「・・・分かった。それなら、行動で示そうではないか!!今からお前達を迎えに行ってやる」
ミュラーは何をトチ狂ったのかそういう事を言い出す。
「あんた、本気で言ってるの?ここまでどれくらいかかるか知らないわけないでしょ」
実際にクリス達はここまで着くのに二ヶ月近くかかっている。
「フッ、その程度の距離一日とかからんさ」
『駄目だこいつ、既に手遅れね』
もはや、クリスは突っ込む気すら失せていた。
ーーーーー
ライチェスとアシュナはデートを楽しんでいた。
「ライちゃん、早く来て!!」
「そんな急ぐと危ないよ」
アシュナはライチェスを急かすがライチェスはアシュナの後ろを見守りながらついて行く。
「ほら、あそこ」
アシュナが指を差したのは空飛ぶ乗り物の残骸だった。
「そういえば、あの時の返事聞いてないよね」
アシュナは悪戯っぽくライチェスに尋ねる。
「まったく、それを聞くためだけにここに来たのかい?」
「うん」
アシュナはライチェスの返事を待っている。
「僕は君がいてくれれば何処であろうと一緒だよ」
「ライちゃん♡」
ライチェスはアシュナを抱きしめる。
アシュナが喜んでくれたようでライチェスは満足したように微笑む。
「さて、そろそろ帰る時間だけど・・・んっ?」
ライチェスは遥か彼方から何かが接近していることに気付く。
それは三つ首の銀色に輝く飛竜だった。
それは正にミュラーの召魔である『ガルファルグ』であった。
「龍!!」
それにいち早く気付いたアシュナは刀を構える。
「お、落ち着きなよ」
ライチェスはアシュナを落ち着かせる。
「大丈夫、今度は勝ってみせるから。あの龍に」
ライチェスは話しについていけなかったが、その龍に乗る人影に気付くとそれはミュラーだった。
「ど、どうしてあの人が!?」
当然、その龍が接近したことにより街はパニックになった。
「シュナ、君は大人しくしていて。僕が何とかするから」
「ううん、こればっかりはライちゃんでも譲れないの」
シュナは譲る気は無いようだがそう言うことはライチェスは分かっている。
「シュナ、また先生に怒られたいのかい?」
「!!」
そのライチェスの言葉でアシュナは止まった。
アシュナにとってクリスは優しい反面怒ると怖いことを理解している。
アシュナとしても姉のように慕っているクリスに迷惑をかけるのは本意ではないのだ。
そして、その龍が街の上空に到着するとその男が飛び降り着地する。
「・・・久しぶりと言えばいいのか?一瞬、誰か分からなかったぞ」
ミュラーはライチェスを見据える。
「その圧倒的な魔力量、成る程『神徒』になったのか?」
「!!」
ミュラーは普通に話してるだけだが、ライチェスとしては『神徒』については触れて欲しくない話題だった。
「そ、その話は後でするから今は黙っててくれないかな?」
「お、おう」
ミュラーはライチェスの鬼気迫るプレッシャーにより、追求できなくなってしまった。
「あんた!!一体何考えてるのよ!!衛兵に龍が接近してると聞いてみたらあんたの仕業だったのね!!もう、信じられない!!あんたはどうして大人しくできないわけ!!」
当然、その龍の出現はクリスの耳にいち早く入り、もしやと思い行ってみたらやっぱりミュラーだったのだ。
そして、クリスの中でこの男は問題しか起こさないという印象がついてしまい、クリスカースト最下位となってしまった。
「い、いや、これはだな・・・」
「だいたいあんたはね!!」
そして、ミュラーの説教が終わるとクリスは各所に謝罪に周りエディノーツに戻ることにした。
アシュナは『ガルファルグ』に乗ることをかなり嫌がっていたが、クリスとライチェスの説得、そしてミュラーの「怖いなら一人で帰って来るといい」という発言で対抗心を燃やした事により『ガルファルグ』での帰還がかなったのだった。
そして、こんな事なら最初から『ガルファルグ』を使って来てれば良かったとクリスは思ったりしていた。
クリスは街を出る前に子供の誘拐事件が再び起きたら報告して欲しいとギルドに依頼し、街を去った。
そして、あっという間にエディノーツへ到着するのだった。




