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クリス・スロットは変態を許さない

ライチェスがラチェットンの屋敷に到着した頃、クリスはライチェスが教えてくれた小屋に入る。

部屋の中はゴーレムの残骸らしきもので溢れていた。


「まさか、まだ懲りずにやっていたなんてね」


クリスは全ての部屋をくまなく探したが、ライチェスがいたという水槽らしき残骸の部屋は見つけたが、肝心の子供達を見つけられずにいた。


『隠し部屋みたいなものがあるわけではないようね』


クリスは隠し部屋の可能性を考えたが流石に同じ事はしないかと別の方法を考える。


『そもそも、さっきの襲撃は一体何が目的だったの?本当に男子を連れて行くだけなら、あんなことまでするかしら。『マギナフェスタ』の妨害をしたいなら街中でやればいい。でも、あいつにそんなメリットがあるとは思えない。衛兵を減らせれば『マギナフェスタ』中の防衛は手薄になるけど・・・なるほど、してやられたわ。アレは街の防衛を手薄にするのが目的で、私達を足止めする時間稼ぎだとすると・・・』


クリスはその警備が手薄になっているところを突いてあの女は男子を攫おうとした可能性が大きかった。


「でも、ライチェスはどうしてここにいたから・・・」


クリスはふと机の上を見ると手記らしきものを見つける。


「・・・ブッ!!」


クリスはそれを手に取り中身を見ると思わず吹き出してまった。


「あ、あ、あの女、あんな幼気な子達になんてことしてるのよ!!あっちの世界なら完全にお縄じゃない!!」


その手記にはフェラチアの男の子との行為についての記録が赤裸々に書いてあった。

クリスにしては珍しく顔を真っ赤にして動揺している。


「なんてもの読ませるのよ!!ライチェスの知りたくもない情報を知っちゃったじゃない!!」


勝手に読んだから、自業自得ではあるがクリスはライチェスの顔を見る度にこの手記のことを思い出すことを考えるとまともに見れないかもしれなかった。


「まったく、ここに来てここまで私を動揺させるなんてある意味凄い奴ね。やっぱり変態はこの世から駆逐すべきかしら?」


それにはもちろんニーナも含まれている。


「そういえば、エディノーツも子供が多かったわね。こういう変態共から子供を守ることも必要かもしれないわね。いえ、子供を様々な脅威から守ることは国民の義務にすべきよ!!とりあえず身近なところから変えて行く必要がありそうね」


クリスはこの件を事務所に持っていこうと思った。


「帰ったらやることが増えて困るわ」


まったく困った様子がないクリスはこの手記を無言で消滅させる。


「まったくこんなの見せられたら、親は泣くどころか激怒するわね」


捕まえた時の証拠にしてもよかったが、子供達を監禁し捕まり、牢から抜け出し逃げたのだ。

一つ証拠が消えたくらいどうってことなかった。

それ以前に消しておかないとこの手帳の中身が明るみになった時に親御さんがショックを受けかねないのと子供の今後の成長に支障をきたす可能性があったので消すのが正解だと思った。


「それにしても、ライチェスの心臓が再び動き出したって書いてあったけど、あいつ死んでたの?」


クリスはライチェスがアシュナを置いて死ぬはずがないと思っていたが、まさか死んでなおアシュナの為に復活までするとは思わなかったが、再開した時の言動を見てクリスは察した。

ライチェスは一度死んで、愛の戦士として復活したのだと


「彼の二つ名は『愛の(ラヴァーズ)魔闘家(ファイター)』で決まりね」


そして、ライチェスにとって最も不本意な二つ名が誕生した。


「彼にはぴったりな二つ名ね」


クリスはその二つ名でライチェスがあの数のゴーレムを皆が苦戦してる中、単身で涼しい顔でゴーレムを蹂躙し、『消滅の魔女』でも、分からなかった絡繰を看破し破ってみさたという噂をギルド経由で流そうと画策していた。

しかし、この二つ名が後に誤解を生み愛するほど戦いが大好きな危ない奴だと勘違いされ、そんな危険な奴を従えてる『消滅の魔女』が一番ヤバいのではないと思われ更に目立ってしまうことをクリスはまだ知らない。


ーーーーー


クリスが家探しをしている頃、フェラチア・アネルは急ぎ隠れ家に向かっていた。

二つの問題が同時に発生したからだ。

一つは水槽の部屋に仕掛けていた侵入者を感知し、迎撃する魔法が機能しなかったこと、そしてゴーレム生成装置の要たる魔石を破壊されたことが原因だあった。

特に後者は絶対に破られない自信があったのでショックは大きかった。


『一体何が起きてるの?どうして迎撃魔法が通用しなかったの?』


それはライチェスが水槽を破壊すると同時に破壊したからであったが、その場にいなかったフェラチアが知るはずがなかった。


『そんなことよりも、どうして私の仕掛けがこんなにも早く潰されてるのよ!!』


それも愛に目覚めたライチェスに潰されたからであった。


『こうも予定を狂わせられるなんて、『消滅の魔女』を少々あなどっていたようね。パントが倒されたのは本当みたいね』


フェラチアはゴーレムの絡繰を打ち破ったのをクリスだと勘違いしている。


『バレる可能性は低いけど、あの『消滅の魔女』が見つけないとは限らない、あそこには私の大事な子達が・・・特にあの子だけは奪われる訳にはいかない!!』


フェラチアは男子を奪われるのだけは阻止しなければならないため必死に走る。


ーーーーー


クリスは家探しをしているがやはり隠し部屋らしきものが見つけられなかった。


「はぁ、一体どうすれば見つけられるのよ」


クリスはこことは別の所に隠してある可能性も考えたが、あの女なら常に近くに置いておきたい可能性が大きかった。


「そういえば、土魔法を専攻してるって言ってたわね」


クリスはふとフェラチアの情報を思い出す。


「なるほどね。地面と一体化させてれば見つけられないわ。あの女、普通ここまでする?どんだけショタが好きなのよ。まぁ、アレを見た後じゃ今更な気がするけどね」


クリスは呆れながらも子供達を助ける方法を考える。


「下手に地面を消滅させて生き埋めにする訳にはいかないのよね。『魂魄魔法』って魂に働きかける魔法だったわね。これを使えば、魂の反応を見つけ出すことが出来そうね。そういえば、あの時の『冥王』の本体ってどうなったのかしら、魂を浄化してやったからただでは済まないと思うけど・・・」


クリスはふと『冥王』ことパント・ミストガン・ジーニアスを思い出す。


「まぁ、そんな終わったことどうでもいいわ。とりあえず、子供達を助けることが最優先よ。理論は組めたけど実際に使い物になるかよね。『魂魄魔法』って感覚的なことが多過ぎて未だにまだよく分かってないから不安だわ。とりあえず『ダウジング』とでも言ったところかしら」


クリスは試してみるが何も起こらない。


「うん知ってた。『魂魄魔法』は魂に影響を及ぼす術だと思ったけど違うのかしら?ふむ、興味深いわ」


失敗しても気にしないと言った感じのクリスは別の方法を考える。


赤外線探索波(サーモソナー)


クリスは地面に向かって、遠赤外線を感じ取る波動を放つ。

これ自体に威力はないが、熱分布を感じ取る波動を放つことが出来る。

サーモグラフィーの理論を知っているクリスだから出来る芸当である。

クリスの魔法は前の世界にある既存の科学を用いて生み出される。

クリスにとって一番身近なものの方が『魂魄魔法』といった理論を完全に把握してないものを使うよりも使いやすかった。


『あった、明らかにおかしい空間が・・・結局は科学の力に頼った方が早いわね。何より理論がはっきりしてるもの。私に『魂魄魔法』なんてオカルトはまだまだ早いわね。まぁ、魔法って時点でオカルトなんだろうけど』


クリスは地面に土魔法を使い、子供達を埋めないように地面を掘り起こす。

しばらく掘るとクリスは空洞を掘り当て、そこには連れ去られた子供達が一糸纏わず座っている。


『やっぱりあったわ。あの女、服くらい着せなさいよ』


実際にそう思うクリスだが、自身が女だと証明するために服を脱ぎ捨てるクリスはどうなのかといったことは考えない。

話して分からない奴には実際に見てもらった方が早いからである。

クリス自身は、こんな男か女か分からない貧相な身体に欲情する奴はいないと思ってる。


『変態には『反物魔法』を使っても許される気がして来てるわ。特に子供を自分の快楽のために攫う奴とか学校の玄関で縛られたいと宣う奴とか、消した方が少しくらい世界は平和になるんじゃないかしら』


クリスの中でフェラチアもニーナも同じ穴の貉であった。

クリスはこれから変態に容赦はしないことにした。

しかし、クリス自身も子供ではないが襲って来た盗賊や山賊などの服を剥がしていたことがある。

クリス自身は命や財産を狙われた際の正当防衛だという認識があるため。

命を取られるよりはいいだろと思ってる。

そもそも、クリスの場合は身を守るため、フェラチアは完全に自身の欲求を満たすため、情状酌量の余地がないのだ。


『でも、子供達には何故かケガ一つないのよね。その代わり大切なものを失ってることを思うと複雑な心境なのよね』


クリスはとりあえず子供達が無事なことを安心する事にした。

クリスが子供達の洗脳を解き小屋から出ようとした時だった。

クリスに向かって岩の弾丸が飛んで来た。

クリスは当然それを『対物バリアー』と名付けた消滅の力を持つ壁で防ぐ。


「クッ・・・『消滅の魔女』、私から私の大切な天使ちゃん達を連れ去っておいて、また連れ去る気ね!!今度はそうはいかないんだから!!」

「連れ去ってるのはあんたでしょうが、子供は親元にいた方がいいとは思っちゃいないけど、少なくともあんたのようなゲロ以下の変態と一緒にいるよりはだいぶマシね。子供達は返してもらうわ」


クリスは自身の過去があるので子供は親の元に返すのが正解だとは思っていない。

前の世界には子供に暴力を振るう親がいた事を考えると必ず正解とは言えない。

それは言葉によるものや精神的な嫌がらせもそれに含まれる。

クリス自身は才能を両親に恐れられ、施設に預けられたが、それはただ単に両親に褒められたくて努力して努力した結果そうなってしまったのだ。

アレは一体どうなのかとふと考えてしまったが答えが出ない。

施設に預けられたといえ環境は以前よりも良くなったという理由がある。

欲しい資材や資料などすぐに手に入ったし、食事も三食当然のように出た。

その当時は両親の愛情を受けていると感じていた。

公園で実の母親に会った時までは、そう感じてる自覚があった事をクリスは覚えている。

だからこそ、あの時の母親から突き放されたことにより、他人の愛情を信じられなくなった。

その為、彼女は人に関心を失ったのと同時に損得感情でしか動かない人間となった。

ここに来て少しはマシになったとはいえ、あの時の母親の反応は未だにトラウマなのだ。

アレが虐待かはクリス自身よく分かってないが、クリスはこれ以上自分と似た境遇の子供は作りたくなかった。

自分の立場はどうあれ、未来を担う子供達を自分の快楽のために利用した変態をクリスは許さなかったのだ。


「あんたのような子供を狙う変態には、呼吸する権利すらないことを教えてやるわ」


クリスはこの変態が子供達が吸ってる同じ空気を吸うことすら許さなかった。

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