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消滅の魔女と四英傑 〜天才少女、異世界へ降り立つ〜  作者: ディノ
序章 エディノーツ学園入学
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学術都市エディノーツ

馬車に半月くらい乗ってようやく、辿り着いた。

その場所は学術都市エディノーツ、一応『智の神』を信仰している国の都市だが、あくまでも国を仕切るのは『智の神』の神徒ではなく、あくまでも代理らしい。


『智の神』には未だかつて神徒がいた事がないから仕方ない事ではある。

その為、この国は他の国から干渉を受けていない。

その代わり、国の重要人物がエディノーツ学園に入学する。


その為、エディノーツは高い援助金を受けており、学生に対しての援助は手を惜しまない。

その為、ここの卒業生は他の魔法、騎士、剣士の追従を許さないほどに優秀である。

一番のこの国の目的は『智の神徒』を生み出すことである。


各国も協力し、『智の神徒』を生み出そうとしてるところを鑑みるに政治的な事が絡んでくるからだろうとクリスは思いながら、ガレスの話しを聞いていた。

この辺に盗賊が多いのは、この時期はエディノーツの入学試験があり、遠方から多くの受験生が来るからだそうだ。


他にも特別枠というのが五つあり、その三つは神徒が選んだ代表で埋まってしまうらしい。

この特別枠というのは実質、学費がかからないのと卒業後『智の神』の神徒になる挑戦権を得ることが約束されているのだ。


後半の挑戦権は興味はないが、前半の学費無料というのは唆るものがある。

しかし、その残りの枠二つは競争率が高く成績トップでなければならないのだ。

ちなみに代表は試験を免除されるらしい。


「クリス、随分と落ち着かない様子だな。そうしてれば年相応で可愛いもんなんだがな」

「悪かったわね。可愛げが無くて」


クリスは見た目的には一五歳くらいであるが中身は一九なのである。


「そもそも、私の魔法を見て怖がらないのはあなたくらいなものよ」


ここに来る時何度か盗賊に出くわしたが同じように対処したら、「お前が噂の化物か!!」とか「身包み全て奪い去る悪魔だとか」最後のは余りにもしつこいので身包み全部消滅させたから仕方ない事だがあんまりな噂である。

その噂のせいか盗賊の中で三白眼で白衣の男の悪魔には関わるなと広まってるらしく、五日前から毎日のように会っていた盗賊連中はクリスの存在を認識した瞬間逃げ出していた。


「いくら、慣れてるといってもあそこまで怖がられるのはある意味ショックね」


いつの間にかクリスは、怖がられるのに慣れていた。

クリスの力を前にして怖がらない者もいる事を知ったからだ。


「そう思うなら自重しろよな」

気さくに笑いながら馬車を引く。

「街に着いたらお別れだ。だからここで報酬を渡しておく」


ガレスは金貨を五枚出した。

この世界の通貨はゴルド、シルバ、ブロズという単位がある。

シルバは一枚でブロズ百枚の価値があり、ゴルド一枚はシルバ百枚の価値がある。

だからこそ、クリスはその価値を知っていた。

しかし、クリスは思った。

これを受け取っていいのかと。

ガレスは自分をここまで送るだけの人間だった。

今までのクリスならお金を受け取りサヨナラだっただろう。

しかし、これを受け取ってしまったらガレスとの関係がなくなると思ったのだった。

だからこそ、クリスは答えた。


「悪いけどそれは受け取れないわ」

「しかし、あれだけ助けられておいて何もしないのは」


半月という短い間だが、クリスはこのガレスという男がどういう男か知っている。

とにかく義理堅いのだ。

本人はクレスト商会の教えというがここまでくると天性のものだろうと思ったりもした。

だからこそ、余計に受け取る訳にはいかないのだ。


「だから、次は私が困った時に力を貸してくれない?」


それがガレスが一番譲歩できる条件だろうとクリスは考えた。


「!!」


思いもよらない答えにガレスはあまりにも意外なクリスの答えに驚いた。

商人である彼は、今までも助けてくれた傭兵や冒険者にはお金を手渡して来た。

彼らはそれ以外の事を要求してこなかったのだ。

彼らは商人に出来ることなどたかが知れてるからそれ以上の事を要求しないのだ。


「悪いが、これに見合う助けなんてできないぞ」

「それでも構わないわ。その気持ちがあれば充分よ」


一度だけ聞いた事がある。

クレスト商会初代はとある旅の剣士に助けられたという。

その剣士にお礼に金貨を与えるとその剣士は断ったのだ。

その剣士は傲慢にも「俺はお前の事を気に入った。だから、俺が困った時に助けろ」と言った。

しかし、この価値に見合うほどの助けは出来ないと商人が言うと「価値なんてどうでもいい。その気持ちがあるかないか、それだけだ」と返された。

それ以来クレスト商会はそれを教訓として代々引き継がれた。

それを知ってるガレスは断れなかった。


「その言い方は卑怯というものだぜ。そう言われると断れないじゃねえか」


初代もきっとこんな気持ちだったのだろうかとガレスは思った。

その剣士も目の前の少女も商人としてじゃなく人として見たのだと。


「だが、何もしないのは気が引けるな。これくらいはさせてくれ」


ガレスがクリスに手渡したのはただの封筒だった。


「もし、学園の試験を受けるならそれを見せな」


クリスは学園の試験に受けたいとは一言も言わなかったが、自分が『智の神』に関わっている可能性があるなら受けるしかないと思ったのだ。


「どうして分かったの?」

「客の欲しいものを察するのも商人には必要な技術なんでな。俺にはそんな紙切れしか渡せないが」

「ありがたく使わせてもらうわ」


クリスは何となく察してはいたが、この商人なかなか有名なようだった。

そうでなければ、あそこまで盗賊に人気な訳ないのだ。

あえて護衛を付けずに質素な荷車を使って盗賊の目を欺こうとしたのだ。

それに、あえて気付かないフリをしていたが、荷車の裏に三叉の槍が隠されてあったのだ。

しかし、何故あんな槍があったのに使わなかった事に疑問が残る。


「そういえば、この荷車の裏に槍があったけどアレ使おうとか思わなかったの?」

「気付いてたか」


ガレスは悪戯がバレてしまったかのようにバツの悪い顔をする。


「話したくないなら話さなくていいわよ」

「いや、クリスみたいな魔法使いにはいつかはバレるからな。問題ない。これは偽装の槍『アマニス』触れてるものを偽装させる槍で、荷車をあえてボロく見すぼらしく見せているんだ」


ガレスは企業秘密だからなと後付けする。

欠点としては槍の方は偽装できないところらしい。


「帰りはどうするの?」

「流石に傭兵を雇うな。この時期は確かに盗賊が多いが今年は異常だ」

「仕方ないわね。これくらいの紙ある?」


それはA4サイズほどのサイズの紙である。

ガレスは紙を手渡すとクリスはその紙に術式を書き込む。


「コレを使えば盗賊が勝手に何処かに行ってくれるわ」


この魔法は近付く盗賊に自分が乗ってる幻覚を見せるものである。

あそこまでの怖がっているなら効果は充分ありそうなものだった。

保険に雷撃の魔法式を書いた付箋サイズの紙を渡す。


「おいおい、いいのか?即席とはいえこんな貴重な魔法道具もらって」

「助けてもらう前に死なれては困るもの」


ガレスは悪態をつきながらもクリスが心配してる事が分かった。


「いい性格してるな。これじゃあいつになれば恩を返し切れるか分からないぜ」

「そんなこと気にしなくていいんだけどね」

「俺が気にするんだ。これは今回一番の目玉商品だがお前に譲ろう!!」


ガレスが取り出したのは銀色に輝く三叉の槍だった。

天穿槍『ロンド・グラン』投げると手元に戻る槍で、未だかつてその力を振るった者は存在しない。

その為、天に投げると天が割れるという伝説がある。

伝説の武具の一つである。

ガレスに試しに投げていいか聞くとアッサリと了承した。

手元には戻るが、天が割れるほどではない。

試しに伝承通り天に投げたが天は割れなかった。


「誰も扱えなかったからそんな変な噂が一人歩きしたようね」

「いやいや、噂じゃねえよ。それは本当の話だ。俺は自分の目には自信があるんでね」


クリスはガレスの自信は実際に見たことがあるから言える自信だと思ったが未だかつてその力を振るった者がいないのにそれを知ってるのに疑問を感じたが、ガレスの話は信じる事にした。

そこまでの力はなくともこの槍は、便利そうだったからだ。

それにあの羊皮紙に書いてあったが魔法は触媒を用いることで更なる力を発揮すると書いてあった。

この槍はその辺も申し分ないのだ。

剣術というか剣道は前の世界でやっていたが、誰とやっても勝ってしまう為いつの間にかやめていた。

剣道にはルールがある以上、相手の手の読み合いだ。

決められたカードをどう使うか、それがあるから勝てていただけの話だとクリスは思っていた。

しかし、ここはそういうルールがあるのかすら分からない。

無数ある手札の中から選択を迫られるのだ。

ましてや槍術などやったことがなかった。

しかし、どう使えばいいか何となく分かってはいた。


「いいの?こんな貴重なのもらっちゃって」

「コイツに比べれば些細なものだ。お前さんに恩を返す前に野垂れ死なれたら寝覚めが悪いからな」


ガレスは気さくに笑いながらさっきの仕返しだと言うように話す。




そんなこんな話しているとエディノーツに到着する。


「ありがとう、私だけだったらこんな有意義にここまで来れなかったわ」

「やめてくれ、礼を言うのは俺の方だ。この恩は決して忘れない。先祖代々・・・」

「いや、そこまでの恩は返さなくていいから」


呆れながらもクリスのその顔は笑っていた。


クリスはガレスと別れを済ませると早速学園の試験手続きをしに行く。

場所はガレスに教えてもらったのでまっすぐ行けた。


エディノーツ学園は見るからにしろとしか思えない見た目で、都市の半分以上の敷地を使っているようだった。

クリスは、確かに金をかけてるだけはあると思ってしまったくらいである。

校舎に入ると右手側に受付窓口があった。


「どうしました?」


学園の受付の人に試験を受けたい旨を話すと紹介状はないかと聞かれるとクリスはガレスに渡された封筒を受付に手渡す。


「!?!?」


その受付は何か驚いた様子だった。


「なっ・・・えっ!?」

受付は何か取り乱した様子だった。


「どうしたの?」

「えっ!?いや!?えっと・・・紹介状の方は確認しました。こちらの書類を記入して下さい」


受付はかなり取り乱しているが、その理由がクリスには分からなかった。

あの男は紙切れと言って、そこまでの価値はないと言っていたのだ。

どうせ、大した事は書いてないだろうとクリスは思っていた。

クリスは記入した書類を受付に渡す。


「は、はい、確かに確認しました」

「試験は明後日という事でいいのね」

「そ、その通りです」


その時の受付の顔は何言ってんだコイツと言いたげな顔をしていたが、クリスは気づかなかった。


「うん、試験まで槍の特訓でもしてるわ」

クリスは街の外で獣を狩る事にした。




エディノーツ学園の学園長室、八畳よりちょっと大きめの部屋は沢山の書物で溢れていた。

学園長であるグラゾ・エディノーツは三人の教諭を呼んだ。

魔法理論顧問のシンスと戦闘顧問のガイアス、副校長のエリンである。


「突然の招集を心よりお詫びしよう」


グラゾ学園長は急遽三人を呼び出した事をお詫びする。


「前置きはいい。何があった?」


戦闘顧問のガイアスは詳細だけ知りたかった。


「今代の『財の神徒』が代表を決めた」

「!?」

「嘘だろ!!」


学園長以外は同じように驚く。


「ど、どうして今になって!?」


魔法理論顧問のシンスはそんな疑問を投げかける。


「それは、『財の神徒』にワシが一番問い詰めたいところなんじゃがな」


グラゾは溜息混じりに話す。


「待った。そもそも、それ本物かどうか確認したの

か?試験希望者が持ち込んだものだろ。偽物じゃないのか?」


ガイアスは紹介状が『財の神徒』が本当に書いたものか怪しんでいた。


「偽物なら、そもそも呼び出しなどせん。この紹介状にあった調印は確かに『財の神徒』ガレス・クレスト様のものだ」


グラゾもガイアス同様に偽物かと疑ったが、調印は確かに『財の神徒』のものだった。


「マジかよ。今まで特別枠を決めることを辞退してきた『神徒』が一体何が・・・」

「特別枠でその者を入学させようと?」


ガイアスと副校長のエリンが戸惑いを隠せなかった。


「どうやら、特別枠での入学ではない。その枠を取るのは自分が進言しなくてもその者は取ってしまうから必要ないことだと書いてあった」


グラゾはその自信たっぷりな台詞を恥ずかしながら話す。


「大した自信だが、今代の『財の神徒』が言うからには相当な奴なんだろうな」

「ええ、あの方は商談以外ではこういった悪ふざけはしない方だったわね」

「今まで辞退してた理由が、自分の国には資格があるほど気概がある奴がいないからという理由でしたからね」


三人は呆れ半分、納得半分というところだった。


「それで、結局『財の神徒』は何の為にわざわざ紹介状を寄越したんですか?」


エリンは特別枠が狙いじゃなかったら、何が目的なのか分からなかった。


「うむ、それに関して相談があるから呼んだのじゃ。まずはここを読んで欲しい」


グラゾが指を指すところには、『戦闘技術試験の相手をソウルナイトにして欲しい』と書いてあった。


「あの『神徒』は何を考えてんだ!!」


という言葉が学園長室から廊下まで響いたという。

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