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消滅の魔女と四英傑 〜天才少女、異世界へ降り立つ〜  作者: ディノ
序章 エディノーツ学園入学
2/45

消滅の魔法

キャラ紹介


クリス・ランスロット


敵意のない相手には友好とはいえなくとも、それに近い相手をしようとしている少女。

見た目はどう見ても目付きの悪い三白眼の青年だが、目付きが悪いことは気にしている。

男だと言われるのは納得しない場合、脱げば早いと思っているので気にしていない。

人との付き合いを拒絶していたため、そういう恥じらいには無頓着になっている。

というより、犬猫に裸を見られて恥ずかしがるかという認識なのである。

六元素の魔法の他に消滅の魔法を扱える。

手元にあった羊皮紙を見るとこの世界の言語で書かれているがどういう訳か理解できる。


『・・・へぇ、魔法ね。確かに面白そうね』


羊皮紙は三枚程しかなかったが、実際に使って理解した。


『成る程ね。魔法式は一定の法則に従って組まれていて、六元素を基礎として魔法式を組み立てていくわけね。それなら、この魔法をこう組み替えれば』


彼女は指先に光りの球体を維持する。


『辺りを照らすのにはちょうどいいわね』


彼女が辺りを見回すと目のを疑うものが広がっていた。


『なんか、臭うと思ったけどこれだったのね!!』


彼女の目の前には、ここの生物と思われる腐肉で溢れていた。

これを見て彼女はここがどういう場所なのか理解した。


『つまり、ここは私の魔法を試す為の実験場というわけね』


彼女が辺りを見回すと殺気立った獣が集まってきた。




彼女がこの谷に来て三日が経った頃だった。

彼女は六元素の基礎を極めたが、何か引っかかっていた。


『六元素は特定の適正があると書いてあったけど、私はどれも同じくらい扱えるのは、どれにも適正がないのか、これが限界なのか、私だけの主観じゃ分からないわね』


沢山の獣が一斉に襲いかかるが、周囲に展開した氷の槍が多くの獣を串刺しにする。


『まったく、これなら下にいた連中の方が強かったわね』


彼女は魔法を使って崖をよじ登っていた。


この谷に入って一週間、流石に空腹に限界を考えていたが、この谷の生き物を食べる気にはならなかった。

既に、谷を登りきるのを目前としている時だった。

目の前に硬そうな鱗に覆われた巨大な獣が現れる。

彼女は躊躇わず、氷の槍を飛ばすが鱗に弾かれる。

すかさず、炎による爆発をお見舞いするが、全くの無傷である。


『これは骨が折れそうね』


彼女はこの獣を鎧熊と呼ぶ事にした。

鎧熊は彼女に襲いかかるが地面から隆起させ杭を発生させるが、ちょっと怯んだ程度である。


『氷が効かない時点で分かりきっていたけど、頑丈すぎじゃない』


彼女は襲い来る鎧熊を魔法である程度足止めする。


『そういえば、これは試してなかったね』


彼女は赤い塊の杭を地面から発生させた。

これは複合魔法と呼ばれる魔法で複数の元素を組み合わせて生み出す魔法である。

使用するにはそもそもの元素に関する理論を完全に理解していないと扱えない。

鎧熊は雄叫びをあげそれでも突っ込んで来るが、鎧熊の鱗が溶け始めていた。


『・・・どうやら、私の考えは間違ってはないようね。六元素というのはあくまでも基礎中の基礎、複合が応用技としたところかしら、おそらく私の考えの通りなら』


次の瞬間、鎧熊の腹に大穴があいた。

溶岩ではない、その穴は不自然にも何にも貫かれていない、ただ穴があいたそれだけだ。


『!!』


彼女は想像以上の威力に驚いたが、理解した。

彼女は六元素が入る式の部分に無理矢理、別の式をぶち込んだのだ。


『六元素はあくまでも理論を構築する上で簡単だから使われてるに過ぎないということね。つまり・・・』


彼女は上の一点を見つめると一瞬でそこまで移動した。


『まったく、一々律儀に登る必要はなかったわね』

彼女は谷を登りきるとそこから山を下り林道に出た。




彼女は、川を見つけると早速魔法を駆使して魚を捕まえて、久々の食事をするのだった。


二日歩いていると目の前には、荷物を乗せた馬車と狼のような獣数匹が襲いかかろうとしていた。


もう駄目だと、顔を伏せる商人だったが目の前にいた獣は一匹残らず消えていたのだった。


商人は何が起きたのか分からなかった。

まるで、最初から獣などいなかったかのようだったからだ。

倒したなら死体が残るはずだが死体すらない。

呆気にとられていると商人の目の前に、上着に白衣を来た黒服の三白眼で目付きの悪い黒髪ショートの少女がそこにいた。


「あ、アンタは!!」

「私は、クリス・ランスロット」


どういう訳か、そんな名前が頭によぎった。

本当はそんな名前じゃなかったはずだがどうしても思い出せないのだ。


「この近くでいい、安全なところまで連れて行ってくれないかしら?」


クリスはいい加減徒歩での移動は疲れたので馬車での移動をしたかった。


馬車に乗っていると獣に何度も出くわすが、クリスが手を振りかざすとその獣が粒子状に散らばり消滅する。


商人はクリスが何をやってるのか分からなかった。

おそらくは、魔法だろうと思ったが彼の知る限りそんな魔法は聞いた事なかった。


「あんた一体何者だい?」


ふとそんな言葉が出た。


「うーん、知の探求者といったところかしら」

「凄腕の魔法使いとかそういった類ではないよな」

「凄腕かは分からないけど、魔法は使えるわ」

「少なくとも、手を振りかざすだけで相手を消していく魔法なんて見たことねぇよ」

「・・・でしょうね」


そんな事を話してるところだった。


「嘘・・・だろ」


馬車の目の前に柄の悪い男達が立ちふさがったのだ。


「どうかしたの?」

「盗賊だ。この時期になるとこの辺は多いんだ」

「へぇ」

クリスにとってはどうでもいいといった様子だった。

「おっと、止まれ」

「大人しくその積荷を降ろしな。だとしたら命だけは助けてやる」


盗賊は剣やら斧やら武器を持っている。

クリスは馬車から降り盗賊達の前に立つ。


「なんだ、小僧?」


何となくそう言われる気がした。

川の水面に写る自分の顔は、ボサボサ髪の目付きの悪い三白眼だ。

前の世界では前髪で隠すほど気にしていた。

体型も女性にしてはかなり貧相なもので、どう見ても女性には見えないのだ。

しかし、それは全く気にしてはいなかった。


「悪いけど、そこどいてくれない?」

「ああ!!」

「このガキ何言ってんだ?」


盗賊達は武器を構えてクリスに襲いかからんとしていた。


「物騒なものを持ってるわね」


クリスが手を振るうと盗賊達が持つ武器が消滅する。


「!!??」


盗賊達は手元にあった武器が消えて何が起きたのか分からなかった。


「もう一度言うけど、そこどいてくれない?」

「何しやがったんだ!!」

「魔法か!?」

「落ち着け!!武器がないからなんだ!!」

「チッ」


盗賊の一部は炎の魔法を放つ。


「なっ!!」


盗賊達は確実に終わったと思ったのだろう。

少なくともそれくらいの威力で放ったのだ。

しかし、クリスが手を前にかざすと炎の魔法が消滅し

たのだ。


「ば、馬鹿な!!」


盗賊達はもはや何が起きているのか分からなかった。


「頭の悪いアナタ達のためにもう一度言ってあげる。そこどいてくれない?」


クリスは面倒なのでかなり投げやりに言っている。


「調子に乗りやがって!!」


盗賊の一人が隠し持っていたナイフで襲いかかるが、

クリスに刺さる直前でナイフが消滅する。


「な、なんだ、なんなんだこいつは!!」


目の前に倒れ混んでる盗賊の表情は、両親やあの男と同じ顔をしている。


「クソッ、撤退だ。こんな化物相手にしてられるか!!」


盗賊達は蜘蛛の子を散らすように散っていった。


『・・・化物ね。きっと母さんや父さん、私をこんな目にやったあの男もそう思っていたのかもね。結局、何も変わらない』


クリスは諦めかけていた時に商人が声をかけた。


「おい、坊主大丈夫か?」

「私が怖くないの?」

「怖い?あんたに何があったのか俺は知らねえよ。だがな、少なくともあんたはさっきと今、俺を助けてくれた。その事実だけで充分だ。確かにあんたの力は得体がしれないが、それだけで怖がったりしない。それにあんたみたいなのに怖がっていたらこんな仕事できないからな」


商人は気さくに笑いながら答える。


「・・・ありがとう」


クリスは今までそんな事を言われた事がなかった。

それが、その何気無い言葉が嬉しくて礼をした。


「気にすんな。少なくともあんたには恩がある。恩には義を持って返すべし、クレスト商会にはそういう教えがある」

「そういえば、名前を聞いてなかったわね」


クリスは前の世界では人の顔や名前を憶えることに興味がなかった。

しかし、この世界に来て思った。

少なくとも自分を信じてくれた人の顔と名前くらいは憶えておこうと。

そう思った時、そんな言葉が出ていた。


「ガレス・クレスト、クレスト商会の五代目だ。五代目と言っても婿養子だから嫁に比べれば権力はないんだけどな」


ガレスは手を差し出すとクリスも握手に応じる。


「よろしくね。それと、小僧小僧って言うけど、私は女よ」

「そいつはすまなかったな。クリス・ランスロット」

ガレスはクリスの手を強く握り返す。


ガレスの話しでは、ランスロットという名は伏せた方がいいと言われる。

その理由は、この世界の『智の神』の名がランスロットだからだ。

これを名前に使って許されるのは、『智の神』もしくは『智の神』が許した者のみと言われており、『智の神』が許した者は未だかつていないという話しである。

他には『力の神』、『技の神』、『財の神』がおり、『智の神』を含め四神と呼ばれ崇められている。

『智の神』以外はその名を使うことを許される者がいるらしい。

その名を持つ者は強大な国を持つ所謂、王という存在だ。

『智の神』がなぜ許さないかというと、『智の神』は物凄く偏屈で頑固な神らしく、真に智を求める者にしかその名を与えないらしく、数多の魔法を極めた賢者たちも挑んだがことごとく潰されたのだった。

それで『智の神の名を頂くこと』という不可能の代名詞までつけられてる始末なのだという。

結局のところ賢者たちは何がいけないのか分かっていないのだ。

かなり理不尽な話しだと思うが、そうではないとクリスは思った。

その原因は魔法のみという偏った知識だろうと結論付けた。

この世界には魔法がありながらそれに該当する神がいない。

力は力、技は技量、財は金を指しているなら、智というのは智慧とか知識を意味している。

あの羊皮紙の序文に魔法とは智慧と知識の永きに渡る研鑽と努力の結晶であると書いてあった。

つまり『智の神』を魔法の神と勘違いしてもおかしくないのだ。

『智の神』はそれを分かっていて、ああいう言い回しで魔法を人に伝えるようにしたとしか思えなかった。

つまり『智の神』は試しているのだ。

あの序文に惑わされることなく見聞を広げられるか、貪欲に魔法以外の知識を求められるか。

あの序文は、それに気付くか人を試しているのだ。

話しを聞く限り他の神の中で最も性格が悪いとしか思えない。


だが、それとは別の疑問が湧いてくる。

頭の中にあるこの名前は、一体何なのかということだ。

以前の名前はどうやっても思い出せない。

分からない以前にないものはないのだ。

しかし、自分のこの名前には違和感はないのだ。

まるで今までそう名乗っていたかのような自然な感じがある。

なので、今更名前を変えるのは面倒なのでそのまま名乗ることにした。

きっとどこかで許可を得ていた。

そういうことにした。

そう答えるとガレスは呆れた顔で「好きにするといい」と答えると同時に「本当に『智の神』の神徒だったら大騒ぎどころの話しじゃないがな」と言われた。

流石に来て早々、面倒なのは御免だったので、クリス・スロットと名乗ることにした。

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