表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
消滅の魔女と四英傑 〜天才少女、異世界へ降り立つ〜  作者: ディノ
一章 学園内部抗争
13/45

ミュラー・ハウセルVSサトリ

クリスカースト底辺の男ミュラーは、街郊外に来ている。

ミュラーはクリスの通信術式で学園の一般生徒が暴徒化してる話しを聞いていた。


最近になってクリスカーストナンバーツーに登りつつあるライチェスの言っていた地下道から外に出てみたのだった。

するとそこには数人の男達が控えていた。

おそらく何かを待っているのだろう。

ミュラーは数人の男達の前に姿を現わす。


「何をしている?」

「ああん、なんだてめ!!」


ミュラーをにガンを飛ばした男の一人は突然昏倒した。


「質問をしてるのは俺だ。俺の質問だけに答えろ!!」

「てめえ!!」


男がミュラーに襲いかかろうとした瞬間に昏倒する。

男達はミュラーが何をしたのか分からなかった。


『龍圧』と呼ばれる覇龍種が持つ能力の一つで自分以下の生物全てを昏倒する力を持っているが、強い心を持つ者には通用しない。


「もう一度聞く、ここで何をしている?」


ミュラーが質問をすると沈黙がその場を支配する。

逆らったら、さっきの奴等のようになる。

あまりの空気の重さに誰一人口を開こうとしない。


「・・・こ、ここで中からの合図を待ってるんだ。俺達は雇われただけなんだ」


男達の一人が遂に口を割る。

クリスの言う通り、この件には何か裏がありそうだった。


「次の質問だ。お前達を雇ったのは何処のどいつだ?」

「・・・それは言えない」


とその男は首筋をこっそりと指指しながら言う。

その首筋には呪印のようなものがあった。

呪印にはいくつか種類があり、コレは簡易なものだった。

命令に反すると意識を昏倒させる程度しかない。

死を与える呪印はかなりリスキーなのだ。

人を呪わば穴二つ、呪術は必ず術者に呪いの対価になる何かを要求してくる。

それは呪いの内容が術者の天秤に釣り合うものでなければならない。

人を不幸にしたいなら自分も不幸にならないといけないし、呪い殺したいなら自分も死なないとならない。

この場合は互いの秘密をバラさないとかだろう。

その為、その約束を相手が破った場合相手も呪いの影響を受けてしまうのだ。

その為、誰も呪いを好き好んで使おうとはしない。

呪いを専門にしている者もいるがそれはどちらかという解く方の専門である。


「成る程・・・それは仕方ないな」


ミュラーは呪印を見て察する。


「それじゃあ質問の内容を変える。そいつは貴族か?」


ミュラーが質問するとその男達は首を横に振る。


「卒業生か?」


その質問にも男達は首を横に振る。


「在校生か?」


男達が首を振るのでコレでもない。


「まさか、教員か?」


男達は首を縦にも横にも振らない。

縦に振ると言うことは肯定したと同じ、その瞬間呪いが発動する。

つまりこの場合は首を横に振らないことが肯定を意味する。

ミュラーは大体分かって来た。

この件の裏に潜んでる者が誰なのか。


「学園長か?」


男達は首を横に振る。

ミュラーは当然コレはないだろとは思っていた。


「副校長か?」


そう言うと男達は固まる。


「分かった。ちなみに聞くがコレはいつから計画してたことだ?」

「五、六年くらい前じゃなかったか?」

「そんな頃からか?何があったんだ?」

「・・・魔法実験で暴走した生徒によって沢山の生徒や教職員が死んだ。これ以上は話せん」


魔法使いらしき男が苦々しげに話した。


「まさか、『魔力増幅剤(ブースター)』か!!」


男は黙り込んだが、それでミュラーは確信を得た。


『まさか、副校長が一枚噛んでるなんてな』

水圧抱擁(アクアハグ)

「!!」


ミュラーが気付くと男達が水球に包まれそのまま潰される。

ミュラーが声の方を向くとそこにはパジャマのような服を来た青い髪の少女がいた。


「その目は・・・まさかサトリか!!」


その少女は額にもう一つの目を持っていた。

サトリは魔人の中で第三の眼を持ち、その第三の眼は相手の心を読むといわれ、忌み嫌われていた。

しかし、それが出来るのは極一部であり、ほとんどが使えない者ばかりだった。

その為、サトリは誰もよらないような辺境の地まで追いやられ隠れ里に住むと言われ、里の外に出る事はまずないのである。

そもそも掟で里の出入りはおろか、余所者の出入りすら禁止しているのだ。

迷った旅の者を里に入れずに野垂れ死させたというのは有名な話しで、今も隠れ里付近では行倒れの死体がよく発見されている。

サトリはその死体すら片付けようとしないのだ。

サトリ側の言い分としては、お前達が自分達をこの里に追いやった癖に都合のいいことを言ってるんじゃないという事だ。

サトリは他種族への恨みを先祖代々忘れない。

魂に他種族への恨みを書き込んでいるようでコレはもはや呪いであり、実際に呪いだったという話がある。

その呪いはかなり強力で、解こうとすると解こうとした者を永久に悪夢を見せる呪いが発動し、死ぬまで悪夢にうなされるという。

ちなみにサトリの里近辺は禁足地の一つとして誰も近付けさせないようになっている。


「まさか、神の犬が嗅ぎ回っているなんてね。あなた達の信仰する神なんてどうでもいい。私達はただ単に『魔力増幅剤(ブースター)』を提供したに過ぎないの」

「お前達が作ったというのか!!」

「ええ、今やコレのおかげで里は壊滅の危機を脱して生活が豊かになったところなの」


少女はそれを悪びれもなく話す。


「あなた達はいいわよね。衣食住全て与えられるのだもの。飢餓や貧困、流行り病、常に死と隣り合わせの私達とは違うんだもの!!『魔力増幅剤(ブースター)』は私達に希望をもたらしてくれたわ」

「お前達がやってる事はただの一時凌ぎだ。それはお前達に破滅しか持たらさん!!今はいいかもしれないだがな。いずれ、後悔することになる。それが何で作られてるか知らないで作っている訳ではあるまい?」

「ええ、知ってるわ。精霊でしょ。だから、どうしたというの?」


少女は開き直っており、何が悪いかも分かっていない。


「大地の生命の象徴たる精霊がなくなればその土地は枯れ死に絶える」

「なくなれば別の場所で集めればいいじゃない」

「お前達は分かっていない。それは未だにこの大地に爪痕を残している。神に見放された地、禁足地の一部としてな!!その土地は教訓なんだ。もう二度と同じ過ちを犯さないという。大地を守護する我等がそれを無視すると思うか?」

「まったく、これだから龍人は嫌いよ。人の意見を聞こうとしないんだもの」

「御託はいい、どうやら黒幕も分かったからな。お前はここで始末する。『魔力増幅剤(ブースター)』の製造法を知る者を生かしてはおけん」


ミュラーは目の前の少女を睨みつける。


「逃げるつもりなんて毛頭ない。むしろ、あなたの首を持ち帰ってやるわ。私はクラリス・メリッサ、貴方に死を与える者の名よ!!」


サトリは一つの属性に適性がない代わりに必ず超級もしくは極級までの術が扱えるのと、サトリが持つ第三の眼は魔力の流れを見ることができる。


「これ、『魔力増幅剤(ブースター)』の原液よ。普通は百倍以上薄めて使わないと一発で廃人コースなんだけど・・・」


クラリスは自身に『魔力増幅剤(ブースター)』の原液を投与すると魔力が一気に膨れ上がった。


「サトリが投与した場合はまったく精神的影響を受けないの。というより、受けない方法を知ってると言った方がいいわね」

「!!」


永い時を生きて来たミュラーもこれは知らなかったことである。


氷塊槍刺(アイスピック)


クラリスは氷の槍を発射する。


「・・・こんなものか?」


ミュラーは拳で氷の槍を破壊する。

その拳は龍鱗を纏っており傷一つない。


「へぇ、それが『多重龍鱗結界』かつて大魔法時代の最強を欲しいままにした魔法ね」

「昔の話さ」


クラリスは、収納魔法で閉まっていた両手に爪を装着する。


「『氷結凍爪(アイシクルクロー)』」


クラリスが装着した爪に氷を纏う。


「まさか、『付与魔法』か。どうしてそいつをお前が使える。それは人間の専売特許だぞ」


人間は武器を魔法により様々な効果を付与することを得意としており、熟練ほど効果を多重に乗せることが出来る。

そもそもは魔法能力に乏しい人間が得た知恵で生まれた技術なのだ。


「そんなにこれが使えるのが不思議?これだけじゃないわ。鳥人が得意とする結界魔法も使えるし、魔人が得意とする儀式魔法、獣人が得意とする遁甲式もお手の物よ。使えないのは龍人と鬼人くらいね」


クラリスはその爪でミュラーに襲いかかる。


「里から出れないお前達がそれを知ってるのが不思議でたまらなくてな」


ミュラーはその攻撃を肩から腕に纏った『龍鱗多重結界』で応戦する。

サトリは里からの出入りを禁止している為、どこで外の魔法を知ったのかミュラーは気になっていた。


「サトリの呪いの話しって知ってる?」

「先祖代々他種族を憎むという奴か?」

「実はあれ、真っ赤な嘘よ。私達を恐れる連中がでっち上げた真っ赤な嘘、でも先祖代々はともかく憎んでるのは嘘ではないわ。しかし、見境なく憎んでる訳じゃない。世界には私達の代わりに目となり手足となってくれる者が現れた。『魔力増幅剤(ブースター)』もその一つよ。私達を理解してくれようとしたのはあの人達だけ、あの人達も言っていたわ。世界を壊すのではない、作り変えるのだと。神によって作られた世界は終わり新たなる世界を我々が作るのだと、そこには差別も迫害も存在しない。一つの種族の世界が作られるだろうと神々の傀儡から抜け出そうと」


「・・・まさか、『神滅教会』か!!」


クラリスはその言葉を聞くと攻撃の手を止める。

『神滅教会』とは、一切の神を信じず、自分達が神すらも超越した存在なのだという集団で、クラリスが言ったことをそのまま実行しようとした連中なのである。

過去に何度か滅ぼされており、その度に復活を繰り返す謎の集団でリーダー格はいないという。

それは『神滅教会』が自らを超越者というからには全て平等であるという考えがあるからである。

しかし、それは建前で序列は確かに存在する。

それは布教活動を率先している者ほど、その貢献度は高く指揮系統が高い。

昔からその頭角を現して来た者から始末し、その周囲を洗って潰して来たのだ。

それでも潰れないのは、未だ影に隠れ信者が潜んでいるからだと言われている。


「違うわ。そいつは自分を『冥王』の遣いと言っていた」

「『冥王』だと」


ミュラーはその存在は聞いたことがなかった。


「ええ、『冥王』は過去も未来あらゆることを知っている全知者のことよ」

「神以外にそのような者が存在すると?」


神を最も信仰する龍人にとってその存在は無視できない存在だった。


「ええ、だから今回の騒動を決行した。今年の特別生の中に『智の神徒』が現れ、その者は必ず我等に牙を剥くと」

「成る程、だとしたらその『冥王』という奴もたかが知れてるな」

「何ですって!!」

「俺も含めお前達は『智の神』の前ではただの盤上の駒でしかない。何故なら、『冥王』は既に見落としているからだ『智の神徒』が既に存在していることに、それを見落とすような者が全知者だとは笑わせてくれる」

「そんなはずはない!!『智の神徒』は未だかつて現れたことがないからだ」

「でも、現れるんだろ。『冥王』の話し通りなら」

「くっ」


クラリスが初めて悔しそうな表情をする。


「誰がとは言わんがな。いずれ分かる事だ。さて、再開といこうか。次は俺の番だな。お見せしよう。これが龍人が持つ魔法『召還魔法』お前程度の器では到底扱うことが出来ない魔法だ。来い、ガルファルグ!!」


ミュラーの真上に銀色の巨大な三つ首の飛竜が召還される。


「嘘・・・でしょ!!」

「露と消えよ」

「くっ!!『大氷河(グレイシア)』」


クラリスは超級魔法の氷と水の激流がガルファルグに向けて放たれる。

ガルファルグの三つ首から嵐のブレスが放たれる。


「そん・・・な」


しかし、クラリスの抵抗虚しく『大氷河(グレイシア)』は一瞬で消し飛ばされてしまう。

ガルファルグの放つ強い水圧と風圧がクラリスの肉体を引き裂き、強い雷は引き裂かれた肉体を残らず焼き尽くす。

クラリスは肉片一つ残らず消滅した。

これがクリスカースト底辺の男の力である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ