表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/266

第84話 セルナルド王国の異変

「なによ……これ?!」



宿屋から見下ろすシャリエルの眼前に広がる光景、昨日までの賑やかな市街地は炎に染まり、市民達は悲鳴を上げ逃げ惑う……そしてセルナルド王国の兵士達が逃げ惑う市民を殺し回って居た。



夢なのかと疑うレベルの光景……この国になにが起こって居るのか分からなかった。



「シャリエル!!無事!?」



息を切らし扉を荒々しく開けるアーネストの声に少し驚くシャリエル、彼女の額からは血が流れて居た。



右手には剣が握られて居る……恐らく既に宿屋にも兵士が侵入して居る様だった。



「私は無事よ、それよりアーネストは他の皆んなと合流して!」



「シャリエルは?」



「街の人を助ける!」



そう言い白のコートを羽織ると窓ガラスを蹴り破り二階から飛び降りる、そして着地すると近くに居た兵士を蹴り飛ばそうとした。



だが兵士はビクともせず、シャリエルの足を掴むと軽々と持ち上げ民家の壁に叩きつけた。



「なによ……この力!?」



一般の兵士にはあり得ないプラチナ級冒険者レベルのパワーだった。



咄嗟に破り捨てた硬化の魔法でダメージは軽減出来たが軽く衝撃が残って居る……信じられなかった。



顔を上げると辺りには無数の兵士が市民を襲って居る、彼ら一人一人がこれ程の力を持って居るのだとすれば……街の人を救うどころでは無かった。



自分の命すら危ない……だが何故こんな事になって居るのか、理解が追い付かなかった。



少し考える時間が欲しいところだが兵士は構わずに攻撃を仕掛けてくる、一撃は壁を砕き地面を割る……早い所無力化し無いと被害は甚大だった。



シャリエルは身体能力強化の魔紙を二枚破り捨てると足を払い地面に顔面を叩きつける、すると兵士は叩きつけられた衝撃で気絶した。



「どうなってるのよこの国は……」



国王が市民を殺す様な命令を出すとも思えない……シャリエルは高い建物に飛び上がると街を見下ろした。



「これは……酷い」



街中に散らばる兵士達は国民を見境無く殺し、金品を略奪して行く……まるで盗賊の様だった。



ふと空を見上げると何か城から太陽の光に反射して無数の糸が街中に伸びて居るのが見えた。



「糸……」



シャリエルは建物から降りると気絶させた兵士の元に戻り頭付近を探る、するとつむじの辺りから糸が伸びて居た。



ナイフを取り出し切ろうと試みるが糸は切れ無い……だが大凡の自体は把握できた。



「誰の仕業かは知ら無いけど……操り人形になって居る訳ね」



糸は切れ無いが元凶を叩けばこの事態は治るはずだった。



城へ向かおうと通りに出たその時、只ならぬ殺気を背後から感じた。



他の兵士とは違う雰囲気……誰かは大凡検討はついた。



「ライノルド……あんたまで操られてるわけ?」



「逃げて……くれ」



背後を振り向くと其処には血に染まり、涙を流すライノルドが立って居た。



彼の後ろには無数の国民が死体となって倒れて居る……国の英雄が操り人形とは、流石に厄介だった。



「無視する訳にも行かないわね」



剣を構えやる気満々のライノルドを前に逃げるのは恐らく不可能……気合いを入れなければ死ぬ可能性もあった。



ライノルドはただでさえプラチナ……下手すればダイヤモンド級の強さを誇る、それが操り人形となり身体能力も向上されて居るとなれば自分よりも強い可能性があった。



「逃げてくれ……俺は、誰も殺したくない」



ライノルドの悲痛な叫び……国民を人一倍愛している彼には国民を殺すなど余りにも残酷な仕打ちだった。



彼をここで止めなければ一生立ち直れない傷を受けるかもしれない……ライノルドを止められるのは自分だけだった。



「少し荒々しいかも知れないけど……我慢しなさいよね」



魔紙を破り拳と足に雷を纏わせるとゆっくりと構える、するとライノルドはシャリエルが攻撃の意思を見せた途端に意識が無くなった。



「歯向カウモノハ殺ス」



まるで機械の様な片言でそう告げると地面が割れる程に強く踏み込み、シャリエル目掛け突っ込む、かなりのスピードで繰り出された一撃は硬化した右腕でガードするシャリエルの身体を数百メートル先の民家まで吹き飛ばしていった。



「なんてパワー、硬化したのに骨までやられた……」



折れた右腕に力が入らない……一撃でここまでダメージを受けるのは想定外だった。



だが……この国で彼に対抗できるのは自分しか居ない、彼を止めれるのは自分だけだった。



「命を削るしか無いわね」



黒く染まった魔紙を片手にシャリエルはため息を吐き笑うと、魔紙を破り捨てた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ