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第83話 味方の強化

『アルセリス様、俺……と言うか私は大丈夫です、連絡を怠りすみませんでした……』



『あ、あぁ、なるべく無茶はするなよ』



『はい……』



少し覇気のないリュスティの声が途切れるとアルセリスは一人、自室の椅子にもたれ掛かる、リュスティから報告があった真っ白なタキシードを着た金髪の男……似たような男はこの世界にごまんと居るが……少し心当たりがあるかも知れなかった。



名をシャルティンと名乗って居るが偽名の可能性もある……昔、ゲームの時代にアクレスタと言うアルセリスに負けず劣らずのプレイヤーが居た……PK行為を繰り返しアイテムを略奪するあまり関わりたくないプレイヤー、まさかこの世界に彼も来ている……なんて事は考えたくなかった。



万が一来て居たのならば戦争になるのは必至、そうなればこちらの軍勢も無事とは行かない……今の戦力じゃ少し不安が残るレベルだった。



「だが……頭の端っこに置いておく必要はあるな」



回転式の椅子でグルグルと周り顎に手を当てる、正直暗黒神はどうにでもなる……問題はシャルティンと名乗る男がプレイヤーだった場合、戦力の強化が必要だった。



それにリュスティがオーフェンの記憶を植え付けられた人工的な存在だった事も気になる……一度招集する必要がありそうだった。



通信魔法を発動しようと右耳に手を当てる、だが魔法を発動する直前、アルセリスの手が止まった。



「いや、待てよ……確か召喚士は召喚したキャラのステータスを得る事が出来る……何も部下を強化しなくても俺が強くなれば良いんじゃ……」



ガチャを回し人材補強兼自身の強化を……そう考えたがアルセリスは通信魔法を発動した。



『全守護者、その補佐に告ぐ、今すぐ帰還し、王座に集まれ』



その言葉だけを残し通信を切る、人材だけ補強しても忠誠度を上げるのは一苦労、それにそれをしてしまえば守護者達を裏切る事になる様な気がした。



新しい仲間を迎えると言う事は確かにいい事……だがそれと同時に不満も生み出す、リカの様に強い物が出て来るのは大歓迎……だが今回の様に直ぐ守護者の座に置けば当然周りの不満を生む、とは言え強いのに自身より弱い者の下に着けば召喚された新人が不満を持つ……人の上に立つと言うのはこれ程に難しいとは思わなかった。



無闇にガチャは回せない……先ずは仲間の強化が先決だった。



「さてと……そろそろ集まった頃か」



アルセリスは椅子から立ち上がると転移の杖を使い玉座の前に転移する、部屋にはオーフェンもとい、リュスティとリリィ以外が集まって居た。



「アルセリス様、オーフェン……じゃなくてリュスティはセルナルド王国の研究所跡地を探索に、リリィは少し休養してから戻るとの事です」



玉座にアルセリスが現れたのを確認するとアルラは素早く二人の状況を伝える、アルセリスはジェスチャーで理解した事を伝えると玉座に座った。



「守護者、そしてその補佐達よ、今回招集したのは暗黒神の事ではない、リュスティの報告で新たなる脅威が存在し得るかも知れないと言う事を伝える為だ」



「新たなる脅威……アルセリス様が危惧するとなると相当な者ですか」



「そうだ、名はシャルティンと言うらしい……もしかすると俺と同等の実力者かも知れん」



「アルセリス様と……同等」



その場にいた者全てが息を呑んだ、最強と信じてやまないアルセリス様と同じ強さの者がこの世界にいると言う驚きを隠せずにいた。



「そう驚くな、これは飽く迄も推測……だが用心に越した事は無い、お前らに集まって貰った理由は今以上に強く、レベルアップしてもらう為だ」



「言わば……修行ですか?」



「まぁそうだな……少し待て」



アルラの質問に曖昧な答えで返すとアルセリスは一度その場から立ち去り、再度王座に現れた時には映像水晶を手に持っていた。



そして映像水晶を設置して起動すると映像は王国の各地に流れ始めた。



『これからお前達に3ヶ月の猶予をやる、3ヶ月後役職の総入れ替えを行う、方法は一つ、闘技大会を行い好成績を収めた者はいい役職を、それ以外は雑兵だ』



「な、何だこれ?」



「チャンスじゃねーか?」



各地から戸惑いやチャンスに憂いている声が聞こえる……3ヶ月はいささか短いかも知れないが守護者達もその位置付けに胡座をかいている部分がある……ここは一から見直す必要があった。



それに……



「よ、弱い俺らでも強くなれば守護者になれるのか?」



「あ、あぁ!これはチャンスだ!!」



「流石はアルセリス様!やはり俺達を見捨てて無かった!」



各階層から聞こえて来る賛辞の声……やはりこの作戦は成功だった。



リカの一件以降、少し不満が溜まっているのは知っていた……これで少しはマシになれば良いのだが。



「成る程……私達もうかうかしていたらこの座、危ないかも知れませんね」



「見たいだな……」



ウルスとフェンディルは冷静にこの事態をを見ている様子だがキョウシロウの一件で腕を失ったマールやユーリ達姉妹は少し不安そうな表情をしていた。



「安心しろ、役職がどうであれ俺の部下は家族同然だ」



その言葉を残しアルセリスは姿を消す、残された守護者達の中にはまだ騒めきが残っていた。



「アルセリス様も大胆な事するっすね」



少し苦笑いしつつポリポリと頬を掻くユーリ、彼女の視線の先にはマールが居た。



「なに、私を心配してるの?」



「まぁ……腕を失っちゃってますし……」



「こんなの大丈夫よ、それよりアンタも自分の心配をする事ね……部下の様子、腕を失った機会に観察してたけどうかうかしてられないわよ」



「へーそうっすか……それなら早速特訓っすね、シェリル行くっすよ」



「あ、待ってよお姉ちゃん」



慌ただしく部屋を出て行くアストロフ姉妹、それに続き他の守護者達も部屋を後にして行った。



「アルセリス様のお考えは相変わらず分からないですね」



「ハハッ、それがアルセリス様の魅力ですよ、それよりアルラは修行しないんですか?」



「しますよ……貴方の本気を引き出すにはまだまだ弱すぎますからね」



「楽しみにしてますよ」



互いに言葉を交わし部屋を後にする二人、部屋にはまだ殺気が漂って居た。



「え……物騒すぎない?」



部屋には遅れて状況の呑み込めないリリィの言葉だけが響いて居た。

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