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第82話 謎のジェントルマン

他の作品考えてたらこっち忘れてました

話しや設定もついでに忘れてました

直ぐ違う話し考え出すのは悪い癖です

止血に使った白いTシャツが赤く染まって行くのを小屋のウッドデッキに座り眺める、自分が何者かと言う疑問が解決した訳では無い……もうどうでも良いと言う投げ遣りな感覚だった。



小屋の中ではガチャガチャとオーフェンが何かをする音が聞こえる……自分も同じ名の筈なのだが不思議と彼がオーフェンである事に嫌悪感は無くなっていた。



「それにしても……馬鹿したなぁ」



流れる血は止まらない、少し血が足らず貧血気味だった。



「お困りの様ですね」



不意に聞こえて来た声、ふと顔を上げるとそこには白いタキシード姿の男が立っていた。



薄暗い神秘的な森にタキシードの男……場違いな姿で怪しさ満点だが頭の回っていないレクラにとっては何の疑問も感じなかった。



「まぁこの通り困ってるよ」



「その様ですね……自分が何者か分からず困ってる様子だ」



そう言い放ち笑みを浮かべる男の一言にレクラの意識はハッキリとし、剣を握った。



「何者だ」



「物騒ですね、私はただ貴女が何者か教えに来たんですよ」



剣を構えるレクラを見てわざとらしく怯える男、自分が何者か分からない……そんな事で悩んでいるなんて見ただけでは分からない筈、そもそもこんな森に人がいる事自体おかしかった。



「暗黒神の軍勢か」



「いいえ、私の名前はシャルティン……通りすがりの紳士ですよ」



そう言い笑みを浮かべるシャルティン、何もかもが胡散臭い男だった。



「通りすがりの様には見えないけどね」



「そうですかね、それより貴女は本当の自分を知りたく無いんですか?」



知りたく無いと言ったら嘘になる……だが彼が知っているとは到底思えなかった。



「お前が私の本当の姿など知るわけが無いだろ」



「そうですかね……それでは私の独り言でも聞いてもらいましょうか」



その昔、リュスティと言う幼い少女がある村に居た。



リュスティは姉と仲良く暮らし、親が居なくとも幸せな生活を送って居た……ある日までは。



その日はとても暑く、雲ひとつ無い晴天だった。



姉は朝から水汲みに行き居らず、家にはリュスティ一人だった。



そんな時、村にとある騎士団が訪ねて来た。



辺鄙な村に騎士……物珍しさにリュスティは見物に行った、それが過ちだった。



村には若い者は居らず、居たとしても姉とリュスティくらい、騎士団は若い少女を探し村に訪れて居た。



そして騎士の一人がリュスティを見つけると優しく手を掴んだ。



『王国で裕福な生活を送ろう』


優しい笑顔と共に言い放つ言葉、だがリュスティは首を横に振った。



リュスティは何も望まない子だった、姉さえいれば良い……それだけが望み、姉が居ないのであれば裕福な生活も楽しくない筈だった。



すると次の瞬間、騎士の表情は変わった。



『黙ってついて来い!国王命令だ!』



その言葉と共にリュスティを引っ張る力は強まる、幼いリュスティは恐怖で泣き出してしまいそうだった。



だがいつの日か泣いた時、姉は凄く悲しんだ……だからリュスティは泣くのを堪え、必死に抵抗した。



やがて騎士は痺れを切らしリュスティの背中を剣で斬り裂いた。



その瞬間リュスティは痛みで倒れ込む、ふと家の方に視線を向けると近所のおばさんに口を塞がれバレない様にして居る姉の姿があった。



必死に手を退かし何かを叫ぼうとして居る……だがリュスティは幼いながらも理解して居た、バレれば姉まで連れてかれてしまうと……だから最後の力を振り絞り、震える手でピースサインをして笑ってみせた。



私は大丈夫……そう言う意味を込めて。



そして少女はセルナルド王国へと連れて行かれた、何とか一命を取り留めるも次に目を覚ました時にはもうリュスティでは無かった。



ボロボロになった施設で目を覚ました少女の記憶にはオーフェンと言う名と屈強な男の姿があった。



だが鏡で見る自分の姿は小さな少女……その時少女はある解釈をした。



「死んでこの少女の体に転生したのだと……独り言は此れくらいかな」



長い話しを終えて伸びをするシャルティン、彼の話しにレクラは剣を地面に落とし膝をついた。



自分はオーフェンでは無い……造られた存在なのだと。



リュスティ……それが本当の名前、だが以前の記憶など無い……依然として記憶はオーフェンのまま、だが彼が嘘を言って居る様には思えなかった。



確かに目を覚ました時、自分はボロボロの研究室に居た……それを知って居る彼は一体……



「お前は……何者なんだ?」



「通りすがりのジェントルマンですよ」



その言葉を残し一瞬にして消え去るシャルティン、辺りを見回しても彼の姿は無い……完全に気配も消えて居た。



「リュスティ……」



恐らくこの身体……と言うか自分はあの村に居たカレスの妹、だが記憶は依然としてオーフェン故に複雑だった。



それに気になる点はいくつかある、この身体がリュスティだとしても何故此れほどに力が強く魔法も使えるのか……念の為アルセリス様に報告をしておいた方が良いのかも知れなかった。



「おーい、飯が出来たぞ」



小屋の中からオーフェンの声が聞こえる……彼には色々と悪い事をした。



自分もオーフェンの記憶を持ち本人の気でいたとは言え酷い八つ当たりをした……少し罪悪感が湧いて来た。



「飯の前に止血して欲しいな」



そう言いレクラ改め、リュスティは呆れながら小屋の中へと入って行った。

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